[2021年11月6日]
港区内の、御三家ではない、ある私立完全中高一貫の進学校では、中学3年間の数学を、中2の10月で学び終える。中2の10月下旬からは高校数学へ進む。中学数学の3年分を、約1年半で終えるということだ。
しかも、傍用問題集は「サクシード」だから、日比谷高校などと同じだ。日比谷高校なら高1で学ぶ高難易度高校数学を、中2の秋には学び始めるということだ。
地元公立中学では、まだまったりと中2数学を進めている頃だ。しかも、この中高一貫校も、中学数学をかの有名な「体系数学」で学ぶから、すでに高校数学の一部を学び終えている。
私立中高一貫の進学校では、この速度で数学を進めても、何ら問題なく全生徒がついていける。中には、この速度でも遅いからと、さらに先取りしている生徒すらいる。
高校受験で進学校を目指すなら、遅くとも中2末までに、中学3年間の数学を学び終えるよう指導しているが、これでも甘いことがわかるであろう。地元公立中学の学校授業進度よりもかなり早いから、ムリだと感じてしまうかもしれないが、それは錯覚に過ぎない。
中学3年間の数学を1年半や2年で学び終えることができないのなら、高校受験で進学校へ合格するのは難しいし、進学校を目指さない方が賢明だ。高校入学後の数学の速度についていけないだろうし、あげくの果てに、大学受験でも成功できないだろう。
ある都立中では、高2の春で「共通テスト」範囲の数学、つまり数学1Aと2Bの範囲を終える。高2秋頃までに数学3の範囲まで終える。
高2の春に「共通テスト」の範囲を終えているのは、かなりのアドバンテージになる。高3の1月に受験する「共通テスト」の数1Aと数2B対策を、1年半以上かけてできる。文系志望であれば、「国公立二次試験」や私立大学の数学選択受験対策も、1年半以上かけてできる。
これは、高校受験を経由する大学受験生にはできない。公立高校なら進学校であっても、数2Bはかなりはしょりながらでも、高2の秋頃までかかるであろう。数3は早くて高3の春、遅いと高3の秋までかかる学校もあるかもしれない。
理系志望でも、「国公立二次」の数2B対策を、1年半以上かけてでき、約1年かけて「国公立二次」の数3対策ができる。
中高一貫校の強みは、この高校数学を、高校から高校内容を始める大学受験生より、大幅に早く終えられることにある。
当然に、その速度についていける資質がある人でなければ、中高一貫の進学校で学ぶことは厳しくなる。
速度が速いのは数学だけではない。英語も早い。概ね高1で、大学入試レベルの範囲を終える中高一貫校がほとんどである。高2と高3は、ほぼ大学入試対策に専念できる。
3年制進学校では、完全に大学入試対策に入れるのは、高3の夏であろう。高3の夏休み前ならまだいいいが、高3の夏休み明けになると、「共通テスト」まで約4ヶ月、「私立大学入試」まで約5ヶ月、「国公立二次」まで6ヶ月しかない。過去問も満足な量を解ききれないまま、本番を迎えなければならなくなる。
その結果、浪人率が高くなる。
あるいは、中高一貫校に進んでいたなら目指せたであろう超難関や難関の大学から、1つか2つ、レベルを下げなけれな合格できなくなる。
中高一貫校の進学校や3年制高校の進学校へ入学するということがどういうことなのか、よく考えてから目指すべきだろう。
世間の評判がよいから進学校を目指す
大学合格実績がよいから進学校を目指す
高校受験がないから中高一貫進学校を目指す
それぞれの勝手ではあるが、
進学校は入学者を厳しく選抜することも、忘れてはいけない。
覚悟がないのなら、正真正銘の進学校を目指さない方がよい。
自称進学校なら、ちまたには、はいて捨てるほど、ある。
高校受験のない、自称中高一貫進学校も、たくさんある。
多くは、そちらを選んだ方が幸せなのではないだろうか。