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三田学院

[2022年1月12日]

【都立中】併願私立の選び方

都立中が第一志望の受検生親子にとって、併願私立中をどう選ぶかは悩ましいところであろう。

まず、私立中を併願受験する目的別に整理してみよう。

1.練習校

予行練習として併願受験する私立中を指す。おもに適性検査型入試を行う私立中となる。

適性検査型入試を行う私立中は、東京都内だけでなく、埼玉や千葉などでも数多い。しかし注意しなければならないのは、都立中の適性検査なみの作問ができているかである。適性検査と謳っておきながら、中身は都立中の適性検査のレベルに達していない私立校がほとんどである。こうした私立中で練習を積んでも、予行練習としては不十分である。過去問演習を適切に行うよりも、はるかに効果が低い。

都立中の適性検査の予行練習にふさわしい適性検査問題を出題する私立中の数は限られる。多くは「なんちゃって適性検査問題」である。

都立中そっくりの適性検査問題を出題している私立中は、埼玉には数校ほど、千葉にはほぼなく、東京都内には5校ほどしかない。それ以外は、場慣れや合格慣れの併願受検となる。もちろん、それはそれで意味も価値もある。

2.特待校
都立中が残念になった場合に、入学金と授業料免除なら入学したいと思える私立中を指す。おもに適性検査型入試を行う私立中となる。

しかし、受検生によっては、算数国語の2科入試や、算数国語理科社会の4科入試や、算数単科入試や、英語入試の方が、特待が取りやすい場合が多く、かつ、適性検査型を選ばない方が、選択肢が格段に多くなる。よって、適性検査型で併願することが適切かどうかの判断は分かれる。適性検査型入試対策しかしておらず、学力試験は歯が立たないような受検生なら、適性検査型で受検するしかないだろう。

3.進学校
都立中が残念になった場合に、入学金と授業料を払って入学したいと思える私立中を指す。おもに学力試験型入試を行う私立中となる。

そもそも都立中が実質単願の受検生にとっては対象外の私立中かもしれない。ここを本気で受検するのは、都立中と私立中がダブル第一志望の受検生か、私立中第一志望で都立中を併願する受験生が多いであろう。

ほぼ唯一、都立中そっくりの適性検査型入試問題の作問ができていて、そもそも私立中として十分な魅力があると世間に評価されている私立中が1校だけある。かつて都立中で校長を務められ、その時に、都立中の共同作成問題の作問責任者だった方が、つい最近まで校長を務められていた私立中だ。ただこの1校のみに限られる。

ほとんどの場合、4教科型か算数単科型で闘わないと合格は取れないから、都立中が第一志望の受検生にはかなりハードルが高い。深追いすると実力がありながら都立中の合格を逃してしまうリスクが高まるので、注意が必要だ。

4.まとめ

都立中が第一志望の受検生親子にとって、併願私立中を選ぶ場合の第一ステップは、都立中そっくり問題を出題する私立中がどこかをしっかり見極めることだろう。大手塾でもかなりいい加減な併願指導を行っているようだから、自分の目で確かめるか、信頼できる筋からアドバイスをもらう方が、賢明である。

次に、特待なら入学してもよいと思える私立中があるかどうか探してみることだろう。小6になると親子ともに忙しくなるから、小3あたりから探し始め、小5の夏までには探し終えているのがお勧めだ。どのあたりまでなら上が狙えるのかも、どのあたりまで下を確保しておくべきかも、小5の夏にはほぼ見えているだろうから。

その際に、保護者だけで下見してから、2〜3回目以降に親子で見学するのがよい。小学校低中学年の子には、学校の良し悪しなど全く判別できない。ふさわしくない学校を気に入ってしまうリスクがある。よって、保護者の適切な誘導が必要である。

もちろん、保護者が不適切な誘導をすることは論外である。今回は詳しく書かないが、その時点で、中学受検も中学受験も失敗している。

最後に私立進学校である。何らかの理由で都立中を第一志望にする受検生親子には、最も選ぶのが難しいカテゴリーだろう。そもそも、そうした私立中を第一志望としたくないために、都立中を第一志望とした経緯があるからだ。

ところが、都立中なみに魅力のある私立中となると、ほぼことごとく、この私立進学校となる。ほとんどが特待合格など出さない。そんなことをしなくても、入学して欲しい生徒を獲得できるからだ。

経済的な理由とか、通学上の理由とか、共学校ではないという理由などを取り除くと、こうした私立進学校が、実は夢に見た理想の学校であったりする。

こうした学校も、受検生がまだ低中学年のうちから、保護者のみで見学会や説明会に参加しておくとよい。都立中の魅力を再発見することができるかもしれないし、都立中の魅力を相対化できるかもしれないし、根本的に誤った志望校選択をしていたことに気がつくかもしれない。

都立中を第一志望にしながら私立進学校に併願合格することは、難しくはない。ただ、そうした指導ができる塾に通わないと、どちらにも合格できなかった、となりかねない。大手私立中受験指導塾は都立中には弱いようだし、大手都立中受験指導塾は私立進学校には弱いらしい。

最後に、誤解のないように申し添える。

どの私立中を併願受験するかは、受験生親子が最終的に決定すればよい。