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三田学院

[2022年1月15日]

【都立中】出願予想2022

都内公立中高一貫校の入試倍率を占う上で、参考になるのは、首都圏の公立中高一貫校の出願状況と、首都圏の私立中学の出願状況だろう。

まず、私立中学の出願状況から概観する。

埼玉と千葉ともに、出願状況は前年同月比でかなり堅調である。学校ごとにばらつきはあるものの、全体として増加傾向にある。特に、中堅校や中位校で出願者を大幅に増やす傾向にある。総人数として増えた受験生が中堅校や中位校に群がっている様子が鮮明である。

適性検査入試を実施する中堅や中位校の適性検査型入試への出願数も増加が見られる。これは後に述べるが、埼玉県内の公立中高一貫校の出願者数が増えていることとも関係していると思われる。

次に、都内の私立中学の出願数だが、こちらも前年同日比でみると、中堅校や中位校で出願者を増やしている学校が多い。これも埼玉で説明したこととおなじ要因によるものと思われる。

適性検査型入試を行う中堅校や中位校も総じて増加傾向が見られる。しかし学校ごとにばらつきも大きく、適性検査型入試回では、安田学園や佼成学園などが大きく増やしている一方で、宝仙理数インターなどがやや減らしている。

学力試験型では難関校はほぼ前年並み、上位校はやや減らしている。このため、学力上位層においては戦線に大きな異常はないが、学力中位層と下位層は厳しい闘いとなる学校が多そうだ。

さて、首都圏の公立中高一貫校だが、埼玉と千葉ともに、総じて10%増えていて、堅調な出願状況だと言えそうだ。特に市立稲毛の増加が目立つ。

これも総じて首都圏の中学受験生増加の影響を受けていると考えるのがよさそうだ。

では、都内の公立中高一貫校はどうなるであろうか。

首都圏の中学受験生増加の影響は受けると思われるが、今年もいくつかの学校で高校募集停止と中学定員の拡大が行われるので、中学受験生の増加分はここで相殺されると思われる。

また、増えた中学受験生の多くは学力中位層と学力下位層であることをふまえると、都立中に出願するような上位層の大幅な増加はなさそうだと考えるのが妥当かもしれない。

しかし、新型感染症による家計への影響は、実は実額でみると、所得上位層ほど減らしているという見解もあるから、もともと難関私立中を目指していたであろう中高所得の家庭の受験生の一部が、公立中高一貫校の併願に動いたかもしれなことを考慮すると、倍率に大きな影響がなかったとしても、難易度上昇要因にはなるので、警戒が必要であろう。

都内の公立高一貫校の中でも、私立中学にみられた動きがある可能性がある。ここのところ入学難易度が上昇して入りにくくなったと思われている学校は敬遠気味になるかもしれない。一方で相対的に難易度が高くないと思われた学校の一部で出願が増えるかもしれない。

小石川や都立武蔵や桜修館や九段Bは、学力試験型の難関や上位の私立中との併願が多いから、倍率よりもボーダーの変化の方に、より注意すべきであろう。

もうこの時期になると、まだ合格の可能性が残っている受検生と、もう合格の可能性が失くなった受検生に、大きく分かれてしまう。直前期になって、まだ実際に合格を競い合っているのは、多く見積もっても定員の2倍もいないであろう。だから、すでに合格圏に到達している受検生と、まだ合格圏に届きそうな受検生は、もう倍率を気にする必要はない。

本番までの残り少ない期間、粛々と総仕上げに専念すればよい。

合格の可能性がなくなった受検生は、それを自覚しているのか、自覚していないのかは知らないが、今更あがいても合格はない。つまり、入試の当日に試験会場に行っても行かなくても合格はない。しかし、次のような決定的な違いがある。

当日に試験を受ければ「不合格」になるが、
欠席なら「棄権」なので「不合格ではない」

という違いだ。言い換えれば、

前者は「落ちた」ことになるが
後者は「落ちた」にはならない。

受けなかったのだから。

東大を受けてないのに、東大に落ちたとは言われはしないが、
東大を受けて落ちたら、東大に落ちたと言われることになる。

もっとわかりやすく言えば、

運動会の50m走でも同じだ。棄権したら、ビリもない。

いろいろな考え方があるだろうから、それぞれの考え方に沿って、どうされるか選ばれればよいだろう。

ただ、ビリの記憶と記録が消えないように、
不合格の記憶と記録は、一生涯、消えない。

誰かに聞かれた時に、「不合格だった」と応えるのはつらいが、「受けなかった」と応えるのは、つらくはないだろう。

この「不合格」の記憶と記録が生涯続いても平気なのであれば、これ以上言うことはない。

合格に絡みながらも残念になった受検生は、都立中合格相当の実力があったことを、自他ともに認めることができるような私立中に合格しておくことで、自分自身を守るだけでなく、進路の選択肢を増やすことができる。

すべてが終わった後で、つらい思いをしないように、万全を期しておくべきだろう。