[2022年1月18日]
高校入試をよく知らずに中学受験を選択する親子がいる一方で、大学入試をよく知らずに中学受験や高校受験を選択する親子も多い。
今回は大学入試についてフォーカスする。
今や、国民の約半数が大学以上に進学する。もはや大卒であることは高い能力などを示すものではなくなった。実質無試験合格または全員合格で入学できる大学もあまたあり、大卒か高卒かに分ける学歴は意味をもたなくなった。一方で、どの大学を卒業したのかという「学校歴」が重要な判断材料とされることが多くなった。
では、大学入試はどのように行われているのか、確認しておこう。
大学入試の選抜方法には、大きく分けて3種類ある。
1.一般選抜
2.総合型選抜(旧AO)
3.学校推薦型選抜(旧推薦)
1.一般選抜は、一般によく知られた選抜方法だと言えよう。先日、大学入学共通テストが実施されたが、ほぼ必須となる国公立大学だけでなく、私立大学でも、この共通テストを利用した選抜が行われている。
国公立大学入学者の約85%、私立大学入学者の約45%が、この方式により入学している。
私立大学の場合、共通テストの利用の仕方は複数ある。
共通テスト併用型:一部を共通テストで、残りを大学独自試験で行う方式だ。私立大学に入学した人の約10%はこの方式だ。
共通テスト利用型:共通テストのみで選抜し、独自試験を実施しない方式だ。私立大学に入学した人の約35%はこの方式だ。
2.総合型選抜(旧AO)は、おもに私立大学で実施されてきたが、今は国公立大学でも実施されるようになった。
多くの場合、志望理由書などの書類審査と面接や小論文などで選抜される。これに、学校成績報告書や外国語外部試験成績証明書などが追加されることが多い。
国公立大学入学者の約5%、私立大学入学者の約15%が、この方式により入学している。
3.学校推薦型選抜(旧推薦)は、大きく分けて、公募型、附属・系列校型、指定校型に分けられる。
国公立大学入学者の約10%、私立大学入学者の約40%が、この方式による。
推薦入試全体を100%とした場合、私立大学では、公募型が約25%、附属・系列校型が約15%、指定校型が約55%である。国立大学では、ほぼ100%が公募型である。
公募型の多くは、志望理由書などの書類審査と面接や小論文などで選抜される。これに、学校成績報告書や外国語外部試験成績証明書などが追加されることが多い。総合型に近い選抜方法とも言えそうだ。
一方で、最大比率の指定校型と附属系列校は、原則として高校の学校長の推薦が得られさえすれば入学できる。試験らしき試験は行われないことがほとんどだ。もちろん、推薦を受けられるためには、学業成績などの基準を満たしていることが条件となる。
さて、本題に入る。
私立大学に合格し入学する上で、最も広き門は推薦入試であり、しかも指定校型である。附属校・系列校型ではない。
このことから言えるのは、総じて、私立大学の附属校や系列校に、中学や高校から入学しなくても、当該私立大学に実質的に無試験で合格できる道があり、しかも、そちらの方が間口が広い。これは、私立最難関の早稲田大学や慶應義塾大学などでもおなじだ。
例として、近隣の高輪中高からは、昨年度も、選抜クラスでない一般クラスから、指定校推薦で早稲田大学や慶應義塾大学に進学した人がいる。選抜クラスは難関国公立大学や医学部医学科などを目指す人など学内成績上位者から選抜されて編成されるが、一般クラスは選抜クラスに入れなかった人で編成される。
このことから、早稲田や慶應の附属校に中学入試などで進学するよりも、もしかしたら平易な選択肢かもしれない。中学受験や高校受験で志望校を検討する際に、視野を広く持ち、学校説明会や個別相談会などで詳しく情報を得ることも重要であろう。
高校受験案内や高校パンフレットなどを見れば、どの大学のどの学部に何人の指定校推薦枠を持っているかを確認できる。
私立大学の附属校や系列校が人気化し、入学難易度も上昇してきているが、指定校推薦を利用する道も選択肢に入れると、必ずしも附属校や系列校がお得とはならないのかもしれない。
附属校や系列校に進学した場合は、将来の進路が明確になった際に、希望する学部や学科や専攻がなく、外部の大学へ進学しなければならなくなるというリスクもある。そのリスクまで加味すると、中学受験や高校受験で志望校を附属校や系列校とする場合、事前に十分な情報収集を行うことはもちろんだが、将来の進路選択におけるリスクも慎重に評価しておくべきであろう。
もちろん、系列大学への進学を保険にして、他大学に挑戦する道も開けるので、ポジティブな側面もある。ただし、多くの場合は、それにも制約があるので、その制約も詳しく確認しておくべきだろう。もちろん、その制約は、高校卒業時に変更になってしまうリスクがあることも、忘れてはならないだろう。