[2022年1月20日]
都立中の入試本番が近づき、都内私立中の入試が近づき、併願私立中をどの学校にするか、都立中に残念になった場合に、どこに進学するか、決めあぐねている受検生親子も少なくないことだろう。
いろいろな考え方があってもいいと思う。
しかし、熟慮された上での結論であることが望ましい。
都立中に残念になった場合の選択肢は多く分けて3つあると思われる。
1.地元公立中学に進学する。
2.特待合格した私立中学に進学する。
3.一般合格した私立中学に進学する。
地元公立中学を選択した場合は、高校受験からは逃げられない。都立中入試以上に、報告書(内申)が重要になる。そのためには、中学入学前から始めて、高校入試直前まで、内申点向上と維持に努力し続けなければならない。
特待合格をした私立中を選択した場合、一般合格できる私立中よりも、概ね大きく難易度の低い私立中学に進学することになる。入学後は好ポジションからのスタートが切れて心地よいかもしれないが、特待維持のために相応の猛勉が待っている。また、傍目には特待かどうかは分からないので、思っていたよりも平易な私立中に進学したと周りから見られるかもしれない。さらに、高校受験では相応の進学校に合格できたかもしれない可能性を捨てることになる覚悟も必要かもしれない。
一般合格した私立中を選択した場合、概ね実力相応だろうから、そうした仲間に囲まれて、充実した学校生活を送れる可能性は高い。しかし、都立中に比べて相当に高額になる学費負担が保護者にかかることは覚悟しなければならないし、それが難しければ選択しない方がよい。
これらを踏まえると、それぞれの選択にふさわしい受検生親子像というのが、浮かび上がってきそうだ。
地元公立中学から高校受験を選択して大成功しそうなのは、高校受験で進学校に進めることがほぼ確実な受検生であろう。そうでなければ、中学受験では平易な難易度だった私立高には進めない可能性があるのと、都立高も進学校には進めない可能性があるので、高校受験でも満足できない結果になるリスクが高い。
次に、特待私立に進学して大成功しそうなのは、高校受験を選択すると進学校に進めるかどうかは不確実だが、余裕で特待合格し、入学後も校内成績順位で上位に居続けることが確実な受検生であろう。特待条件を解除されることはほぼないだろうし、なにより学校側の期待を懸かけられて個別に手厚い指導を受けられる可能性が高いからだ。ただ、都立中のような優秀な生徒ばかりと学校生活を送ることはできない。それでも、それなりに優秀な生徒はいるだろうから、そうした人たちと切磋琢磨することはできる。
最後に、一般合格した私立中に進んで大成功しそうなのは、都立中に合格できても不思議ではないほど学力優秀で、かつ難易度の高い学習指導を望んでいて、かつそれに十分対応できる受検生であろう。適性検査対策にも相応の時間数を注ぎながらも合格できているので、入学後に余力があるはずだから、深海魚になるリスクは小さい。猛勉までしなくても、粛々と勉学に励めば、都立中に入学した場合よりもさらに難易度が高い大学へ進める可能性がある。
逆に、選択しない方がよい受検生親子像もありそうだ。
公立中学を選択しない方がよいのは、公立中学で中途半端な成績しか上げられない可能性が高い受検生だ。併願合格した特待私立か一般私立に進んでおいた方が満足度が高くなる可能性が高いからだ。中学募集も高校募集も行っている私立校の多くは、中学からよりも高校からの方が合格が難しくなることがほとんどだ。多くは中学受験でなら合格できた私立校に、高校受験では合格できなくなる。そうした人は、公立高校であっても、評判の悪くない高校の普通科に進学することさえ難しい。高校受験では中学受験のように自由に受験校を選べない。地元公立中学に入学した後の進路面談で、想定を大幅に下回る受験可能高校一覧を提示されて、ショックを受けるリスクが高い。ムチャをしても高校受験では逆転はない。むしろ、ここでムチャをすると転落人生となる。
特待私立を選択しない方がよいのは、高校受験で確実に進学校に進める受検生だ。高校受験で格下の同級生が名門高校に進学すると、心穏やかではいられない可能性があることに加え、高いモチベーションが維持できずに実力を開花させられず、大学受験でも逆転されてしまうリスクがあるからだ。
一般私立を選択しない方がよいのは、家庭の経済事情が芳しくない受検生だ。私立中の費用は負担が小さくない。そうした事情の場合は、高校生になったら行政の授業料無償化の恩恵が受けられるが、中学3年間の費用は全額を覚悟しなければならない。教育費を早期に使い果たしてしまうと、大学受験で選択肢が狭まるリスクが高くなり、大学卒業や大学院修了までを考慮すると、希望通りの進路に進めなくリスクがあるからだ。
それぞれに、メリットとデメリットがあるから、それぞれの受検生親子の事情に合わせ、十分に検討されて、より満足度が高くなる選択肢を選ばれるのがよいだろう。
情報収集を怠ったり、判断を先送りしたりして、後で後悔されることがないよう、お勧めする。
この選択における責任はほぼ保護者にある。その意味では、中学受験は親が100%、親が10割、と言えるかもしれない。