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三田学院

[2022年2月5日]

【都立中】適性検査問題分析速報

2月3日が終わり、2月4日が過ぎ、今日は放心状態の親子が多いかもしれない。

今年度出題された適性検査問題を解いていて、改めて感じたことがある。それは多くの受検生親子が薄々感じとっっていたことかもしれない。

・小学校の学習内容をしっかり習得していても解けない。
・適性検査対策専用教材に取り組んだだけでは解けない。
・解法パターンの理解と暗記だけでは全く歯が立たない。
・高い本物の教科力と実社会で応用できる力が試される。

文部科学省の新しい学力観に沿った出題になっているが、残念ながら、小学校現場ではここまでの指導はできないであろう。学習塾に通っも、机について講義を受けたり、お仕着せの実験観察を経験したり、定型の体験型学習に参加しただけでは、身につけられるものではない。

小5までは私立型の教科別入試対策をして、小6から適性検査対策で総まとめをすれば、合格できるものではない。伝統的な私立中の学力試験型教科対策では適切かつ柔軟に対応できないし、適性検査型対策ではすべて網羅することは難しい。

つまり、教われば解けるような入試問題ではない、ということだ。

思考力、つまり、考える力というものは、教わって身につくものではない。問題演習を積めば、誰でも伸びるというものではない。

判断力、つまり、本質を見抜く力というものも、教わって身につくものではない。学習すれば、誰でも伸びるというものではない。

表現力、つまり、相手を納得させる力というものは、教わって身につくものではない。ただ書いたり話したりしただけで伸びない。

適性検査?の共通問題は、昨年までの出題の、裏の裏をかくような問題だったが、問3の問題文を見て衝撃を受けた。楠隼の志望理由書のお題とまったく同じだったからだ。もちろん、課題文1と2があり、それをふまえて書かなければならないという制約条件はあるが、楠隼を併願していた受検生は、いただき問題となったであろう。もうちろん、志望理由書もしっかり書けていることが前提となる。

共通問題の社会と理科は、オーソドックスな適性検査問題だったので、多くの受検生にとって、それほど難しくはなかっただろうと思われる。かつ、幼いころから適切な経験や体験を積んできた子にとっては、いただき問題であったかもしれない。

豪華な海外旅行や楽しいレジャーもよいが、国内の北から南まで、国内旅行を地味に何度も繰り返し、その際に気候の違いを肌で感じたり、郷土料理の違いを楽しんだりしておけば、大問2の社会は、楽勝だったのではないだろうか。

授業中に、祖父母や親戚などの家の「もち」の形状をみんなに聞くと、東日本が切り餅で、西日本が丸餅であることを知らない小学生は実に多い。関東以北の醤油の味は濃く、関西地方の醤油は味が薄く、九州に至っては甘みが強いことも、知らない小学生は多い。中学受験のテキストには書かれていないので、しょうがないと言えばしょうがないかもしれないが、経験や体験から学び、そして理由や原因まで考えるということが、新たな学力観で求められる本物の学力だとも言える。

大自然がなくても自然の仕組みを肌で感じることはできる。今年度の理科共通問題は、食器の汚れと家庭用洗剤についての出題だった。女子に限らず、家事のお手伝いをして、その一環で、実験とまではいかなくても、興味が湧いたことについては、どんなことでも、家庭にある家事用品などを使って確認しておくようにしていたら、何も難しくはなかったであろう。

適性検査問題は、特に都立中の適性検査問題は、小学校で教わることだけで答えられるものでもないし、大手中学受験塾のテキストやカリキュラムで学んだからと言って答えられるものでもない。

対策を間違ってはいけない。それ以前に、心構えを間違ってはいけない。

相手を正しく理解できなければ、相手を攻略できない。

適性検査を正しく知ることが、合格への第一歩なのである。