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三田学院

[2022年2月17日]

【都立中】6年後の世界

大学入試改革では、英語4技能とか、数学や国語の記述とか、私立大学の定員厳格化とかが話題になることが多いが、2025年度から本格化する、つまり今年高校に入学する現中3生から本格化する、大学入試改革(特に国公立大学の入試改革)の神髄は、そこにはない。

最も大きく変わるのは「数学」である。

これを象徴する事変が今回の共通テストで起きた。数学1Aの低平均点現象である。

国公立大学の二次試験数学のようになったと言っている予備校講師がいたり、太郎と花子が登場するので適性検査数学のようになったという教育評論家もいたりするが、どちらも正しくない。

しっかり入試問題を見ていただきたい。

その証拠に、ハイエンドの受験生は、例年並みに得点できている。もちろん、出題パターンが大きく変更になったので、慣れが足らずに失点したハイエンドな受験生もいたかもしれない。

事実、センター試験よりも、全問を解き終わるために、より時間がかかるようになった。制限時間内で全ての問題にあたれなかった受験生も多かったのではないかと思う。

しかし、大きく失点を積み重ねた受験生の多くは、解法パターン暗記のみにたよっていた受験生だったのではないかと見ている。正解にたどりつく道筋が見いだせず、右往左往したと思われる。本当の意味で、使える数学を習得していなかったからだ。今後も、ここはしっかりと見極めてくるような出題が、続くだろうと予想する。

これに加え、これまで「数学1A」と「数学2B」だった「共通テスト(一次試験)」の数学は、2025年度から「数学1A」と「数学2BC」となる。大学1年生で学んでいた数学Cが、高校数学と大学入試の範囲に降りてくる。

「共通一次」から「センター試験」に移行した際に、私立大学入試での利用推進を目指したが、平均点は選抜機能が最も働きやすい60%得点率を維持したため、問題がやややさしくなっていたとも分析できる。

これを国公立大学への合格を現実的に目指している受験生だけで平均点が60%になるような難易度に調整しようとしているかもしれない。そうだとすると、今年度の数学1Aのように、数学以外の教科や科目も、今後は平均点は60%前後から大幅にで低下する可能性がありえることも視野に入れておく必要があるだろう。

新設される「論理国語」や「歴史総合」や「地理総合」や「情報」などが怪しい。新設なので連続性の維持は必要ない。初年度は混乱回避のためやさしくても、2年目以降にグッと難しくなるという、いつものパターンになるかもしれない。

さらに、国公立大学は今後、「総合型選抜」や「学校推薦型選抜」が、大学入試の本流となって行くという大改革が進行中である。文部科学省は、当面の目標を入学定員の30%以上としているが、地方の国公立大学の中には、これを上回るスピードで、総合型や学校推薦型の比率をあげつつある大学もある。

私立大学では、早稲田も慶應も、すでに総合型と学校推薦型による入学者が50%を超えてきている。

今後、大学入試の主流は、一般選抜ではなく、総合型選抜と学校推薦型選抜になると予想される。

当面は、一般と総合型や学校推薦型の、ハイブリッドというか、ニ正面作戦が、トレンドとなるだろう。

反面、最も割りが合わないというか、戦略として不利なのが、私立大学における「共通テスト利用型」選抜であろう。受験料だけ損をすると考えた方がよさそうだ。「共テ利用」で合格できるなら、「一般」で合格できるはずだからだ。逆に「一般」で合格できないなら「共テ利用」は使うべきではない。

また、「共通テスト併用型」も注意が必要である。「共テ併用」は、共テ科目と独自試験科目が複雑に組み合わさるので、大学や学部が違うと組合せが変わってしまい、汎用性が乏しい。このため適切に利用することに留めないと、対策負担ばかりが増大し、戦力を分散することになり、結果として受験料だけ損をすることになりかねない。

これらを踏まえ、新しい大学入試制度に備えて「総合型選抜」対策をより強化していきたいと思う。

「学校推薦型」対策は、これまでの指導の延長線上で十分に対応できると考えている。

すでに、多くの塾生が、この総合型選抜で、大学合格を果たしている。この背景には、中学受験や高校受験の指導から、継続して指導できたことも大きかったと分析している。

そこから得たノウハウに磨きをかけつつ、さらなる拡充に努めたい。

大学受験指導は、原則として、中学入試や高校入試からの継続生のみを受入対象としてきたが、今後は、大学受験生の外部受入、つまり高校生の外部受入も、検討していきたいと思う。

その場合でも、新高1と高1のみ、にするつもりだ。

学年相応の基礎学力がなければ、「総合型選抜」でも通用しないからだ。

ご期待あれ。