[2022年4月7日]
親ガチャが昨年度の流行り言葉になったそうだ。
親ガチャとは、どんな親の子として生まれたかで人生が左右されることを意味する言葉である。
裕福な家庭に生まれたのか、貧しい家庭に生まれたかの、親の経済力の違いが注目され、教育問題においても、そうした視点で語られることが多い。
しかし、直感的に違和感を感じる人がいるように、子の学力や学歴は、親の経済力が決定因子ではない。
裕福な家庭の子にも学力不振児はいるし、貧しい家庭の子にも学力優秀な子はいる。
親の経済力、具体的には家庭年収が学力の決定因子であれば、突出して親の平均年収の高い東京都港区などは、子の学力が突出して高くなければ説明がつかない。
しかし、文部科学省が実施している学力調査で、最近でこそ23区内で上位になんとか喰い込めるようになった港区の小学生の学力は、つい最近まで平均的なポジションであった。
経済的に極端に困窮しているケースを除き、親の収入と子の学力の間には強い相関関係は見られない。よって因果関係などは認められない。
子の学力を左右しているのは何だろうか。
以前、文部科学省主導のお茶の水大学の研究結果をご紹介したが、今回は現場の経験からの私見を述べておきたい。
親の教育観が子の学力に大きく影響していると常々感じる。
教育観は数値化するのが難しいために実証しにくいが、もし多くの方の協力が得られるなら、統計解析で検証することは可能だろうと思う。
そこまでしなくても、直観力が鋭い人なら気がついているだろうとは思うが、学力が向上を妨げるようなことをしがちな親と、学力が向上しそうなことをしがちな親というのは、少しお話しすれば、だいたい大別できる。
もう少し具体的に書けば、どうすれば学力が向上するかを知っている親と、どうすれば学力が向上するか知らない親は、小一時間もお話しすればだいたい大別できる。
もっと分かりやすく言えば、学力向上の向上を妨げることを避けようとする親と、学力向上を妨げることを平気で行う親は、容易に判別できる。
親の経済力の違いに関する「親ガチャ」は容易には改善できない一方で、親の教育観の違いに関する「親ガチャ」は、親の意識や親の行動さえ変えることができれば、抜本的に改善できる。
しかし、多くの場合、親の教育観の違いに関する「親ガチャ」は改善しない。その原因として考えられるのは、親の教育歴の違いである。
良い教育を受けたことがない親は、良い教育の存在を知らない。
良い教育を受けたことがない親は、良い教育を理解できない。
高偏差値校の深海魚問題は深刻だし、大規模塾の不合格実態も深刻だ。
偏差値がより高い学校に通えば、良い教育を受けられるとは限らない。
それ以上に、
規模の大きい塾や予備校などに通えば、学力が向上するとは限らない。
結果として、良くない教育を子に与え、それが世代を超えて繰り返され、学力格差や経済格差となって行く。
そう考えれば、学力も「親ガチャ」なのかもしれない。
しかし、繰り返すが、親が変われるのであれば、「親ガチャ」ではなくなる。
子を変えたければ、その前に、親が変わるべきなのである。