[2022年4月23日]
高校受験では「報告書点」が合否に大きな影響を与えることは広く知られている。
都立高校では約30%を、ほとんどの私立高校ではほぼ100%を、「報告書点」が握っている。
しかし、大学入試でも「報告書点」が合否を握っているということは、広く認知されているとは言い難い。
大学受験は、国公立大学なら「共通テスト」(一次)と「個別学力試験」(二次)で合否が決まり、私立大学なら「個別学力試験」で合否が決まると思っているのなら、その認識はすでに古い。
私立大学は、すべてを平均すると、総合型入試(旧AO)と学校推薦型入試(旧指定校推薦)で約55%の入学者を選抜している。多くがイメージしているような学力試験で大学合格を獲得する受験生は、少数派になってきている。
文部科学省は、国公立大学に対しても、総合型や学校推薦型による入学者の決定を、定員の30%まで高めるよう指導している。
これを受け、多くの国立大学では、後期日程の定員を減らすか、後期日程を廃止して、総合型選抜や学校推薦型選抜の定員を増やしつつある。
では、「評定平均」はどのように必要になるのか概要をお伝えする。
まず「学校推薦型選抜」では「評定平均」は必須である。おもに「評定平均」によって入学者が選抜される。ただ、私立大学と大きく違う点は、難関大学ほど「共通テスト」の点数も合否において必要になる点だ。
次に「総合型選抜」では必ずしも「評定平均」は必要ない。しかし報告書の提出を義務づける大学が多く、その場合は、合否判定において考慮されることになる。よって、出願大学や学部によっては、「総合型」であっても「評定平均」は必要だと覚悟しておく方が安全だろう。
国公立大学の場合、「評定平均」は、多くの大学で「4.0」以上が出願条件となる。中堅や上位以上の国公立大学では「4.0〜4.3」以上が条件になる。ちなみに、筑波大学は「4.3〜5.0(満点)」を出願条件としている。つまり出願には最低でも「4.3以上」が必要ということになる。
ここで勘違いしてはいけないのは、「4.3以上」なら合格ではないことである。「4.3以上」の受験生の中から合格者を選抜するということである。合格ラインは「4.3」よりも高くなり、合格には「4.5」とか「4.6」くらいが必要と思っておいた方がよい。
「評定平均」は、高校1年生の1学期から、高校3年生の1学期までの、全教科の評定が平均される。
よって、高2から頑張るとか、高3から頑張るとかでは、間に合わない。高校1年生から全力で取り組まなければならない。その前に、中学でも通知表が高くないと、高校からも難しい。
つまり、「学校推薦型」で大学合格を目指すなら、遅くても高1から、全力で取り組まなければならないということである。
では、「総合型」なら、遅く始めても、なんとかならないかということだが、「総合型」は多くが高3の夏頃に出願締切になるので、それまでに出願書類をそろえないといけなくなる。出願大学の数や出願学部の数にもよるが、多くは3大学以上の5学部以上に出願するから、出願書類の準備に8ヶ月ほどかかる。逆算すると、高2の冬には本格的に準備を始めた方がよい。
しかも、「総合型」は学力以外のアピール・ポイントが重要になるから、「海外交換留学」経験などアピールできる項目を、高2の冬までに用意できていないと難しい。「海外交換留学」は、高1出国の高2帰国なら、中3の春に交換留学生の選考が始まるので、早い人は中学生のうちから、「総合型」選抜の準備が始まるとも言える。むしろ「学校推薦型」よりも早くから周到に準備が必要になる。
最後に、ここは詳しくは書けないのだが、「評定平均」の「評定」の厳しさが、高校によりかなりバラツキがあることに注意が必要だ。
このため、将来に「学校推薦型」で大学合格を目指すかもしれない受験生や、「総合型」で大学合格に挑戦するかもしれない受験生は、高校入学前、あるいは、中高一貫校入学前に、その学校の「評定」がどの程度の厳しさなのか、可能な限り情報を入手しておくべきであろう。
実は、この「評定平均」の観点からは、難易度の高い中高一貫校や高校に合格することがお得ではないことが起こり得る。こうした点をどこまで考慮して、中学入試や高校入試で志望校を選択するかは、各自のご判断によるだろう。
まあ「深海魚」になれば、「総合型」や「学校推薦型」だけでなく「一般型」も厳しくなるだろうから、その逆、中高一貫校や高校は、入学後に学内成績で上位をキープできそうで、かつ進学実績が良い学校に入学しておく方がよいと考えられる。
別の見方をすれば、ムリに入学難易度がより高い学校を目指すことが、必ずしもお得にはならない可能性があるということだ。誤解しないで欲しいのは、低偏差値の底辺校なら「総合型」や「学校推薦型」に合格しやすいかと言えば、そうはならない。他の出願書類も含めて合否が決まるからだ。
まとめる。
「学校推薦型選抜」で大学合格を目指すなら、遅くとも高1の1学期から、全力で「評定」を取りに行く必要がある。
「総合型選抜」で大学合格を目指すなら、遅くとも高2の冬までに、アピール・ポイントを完成しておく必要がある。
「一般型」で大学合格を目指すなら、実は一般型の定員が少なくなっていることを熟慮して、対策する必要がある。
総合すると、「一般型」と、「総合型」や「学校推薦型」を、ともに闘えるように準備するのが得策である。どのみち、遅くても高1から全力で取り組まないと、大学受験では成功できない。
もうおわかりだろう。
大学受験は高3になってからという作戦は、今や通用しなくなったのである。
もちろん、合格できた大学や学部に進学すればよいだけと、しっかり腹がくくれるのなら、中学高校生活を謳歌したり、受験よりも部活動や娯楽を優先してもいいだろう。
しかし、高い目標を持って、憧れの大学への合格を目指すなら、高校3年間は、ひたすらに、合格を目指して邁進するしかない。
それは、「一般型」も「総合型」も「学校視線型」もおなじである。それぞれの受験生にとって、どの闘い方が「得意」か「有利」かの違いでしかない。しかも「得意」だったか「有利」だったかは、合否の結果が出てみないと、最終的には分からない。