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三田学院

[2022年5月2日]

【都立中】最新の要注意点

難易度の上昇で相当に優秀な受検生でも合格を逃すケースが多くなった都立中だが、その影響もあってか、私立中学を併願受験する受検生の比率が上昇してきている。

ここで注意すべき点を整理しておこう。

大学進学実績が良好な適性検査型私立中の大学合格実績だが、高校からの募集もある場合は、その点も適切に考慮すべきである。国公立大学や難関私立大学への合格実績が、高校からの入学者で実現されている場合があるからだ。

適性検査型入試を行う私立中学には、特待生制度のある私立中学が多いが、近年、上位層の併願率の上昇や、私立中学全体の受験率の上昇で、特待合格者数は大幅に変更がなくても、特待合格が非常に厳しくなっている適性検査型私立中が増加している。過去の実績が参考にならない程度に難易度が上がっていることもあるので、特待合格に過度に期待するのは危険になってきている。

概ね、特待合格の目安は、一般合格の偏差値+10ポイントだが、この程度では「入学金免除」程度しか取れないことが多い。「1年特待」とか「3年特待」とかになると、一般合格よりも+15ポイント程度を見込んでおいた方がよいかもしれない。

近年、都立中に合格できながら、併願私立中の特待が取れないケースが増加している。都立中に残念なら、特待合格できた私立中に進学するという戦略は、実現しない可能性が高いと見込んでおいた方が安全だ。

受検勉強に邁進させ、多額の費用をつぎ込んでしまった保護者は、元を取ろうと考えて、当初の目標を見失いがちになりやすい。

何を目指して、都立中や公立中高一貫校の受検対策を始めるのか、冷静に考えて、親子で共有しておくことをお勧めする。

合わせて、都立中や公立中高一貫校の進学校が、6年間、どんな教育を施すのか、キャッチコピーなどに惑わされずに、その実態を正確に把握してから臨むべきであるし、合わせて、わが子がその教育方針や教育内容にフィットしているかについても、客観的に評価してから取りかかるべきであろう。

おなじ内容を何度も繰り返して書くのは本意ではないので、学校紹介は必要最低限に留めているが、自己の都合を優先したような紹介記事や、自己の収益を優先したような紹介記事が、いまだに多いので、情報は自らの目と耳で獲得すべきだということを忘れないでいただきたい。

よく聞く、「都立中に残念になったら、地元公立中学に進学する」という判断も、十分に吟味しておいたほうが良いと思う。

ダメなら地元中学というのであれば、最初から地元中でよいケースも多いのではないかと思われるからだ。これは、さまざまな事例があるが、ここではご紹介しない。それぞれの受検生親子が、それぞれの事情に合わせて適切に判断されればよいと思う。

最後に、中学受験や高校受験において、志望校選択する際に大学の合格実績の数値を重要視する親子が多いようだが、わが子が進むことになる大学は一つであるということを、しっかりと認識しておくべきだろう。

定員160人で、東大合格者数が現役と浪人合わせて5人なら、入学者の約96%は東大には合格できないといことである。数理統計学的には、テールに属する人しか合格できないことになる。国公立大学の医学部医学科へ進む人もいるだろうから、6年間を通して、安定して上位10%くらいをキープしなければ実現しないことになる。

上位国公立大学や難関私立大学への進学が目標なら、都立中よりもやや平易な中学や高校に進んだ方が、より充実して満足度の高い6年間や3年間を送れる可能性が高い。

逆に、将来に、上位国公立大学や難関私立大学を目指せそうにない受検生が、都立中を目指しても合格できる可能性は高くないし、仮に合格できたとしても苦しい6年間になるリスクが高い。

学校説明会に足繫く通うのは良い。文化祭などの学校行事を見学するのも良い。しかし、それ以上に有益なのは、授業を見学することだ。都立中は正真正銘の進学校である。なんちゃって進学校や自称進学校とは授業の難易度が違う。小学生の時の自称優等生程度では窮地に陥るリスクがある。しかも、都立中は都立学校だから、個別の生徒の面倒見はけっして良くない。むしろ「ほったらかし」にこそ、都立中の魅力がある。「ほったらかし」でもついていけそうなら、都立中を選ぶ意義がある。

大手塾などにそそのかされて、都立中を目指し始めるのは、個々人の自由である。

しかし、それが本当に、個々の親子にとって幸せになるのかどうか、熟慮することをお勧めする。

その上で、高い志をもって、目標達成を目指すなら、きっと夢が実現できるであろう。