[2022年5月4日]
都立中(公立中高一貫校)を目指す理由は、地域によってかなり違うようだ。
都内の中流家庭以上が多い地域では、高校受験ではなく、中学受験が主流となってきている。
何度により多少の違いはあるが、教室のある港区だけでなく、文京区や千代田区や中央区などでは、地元公立中学以外に進学する割合は、ほぼ50%前後である。渋谷区や目黒区なども40%前後になる。都下でも、武蔵野市などはこれらと大差がない。
これは進学率であって、受験率とは違う。
港区の湾岸地域では、それぞれに特段の事情がない限り、ほぼ全員が中学受験をする。つまり、「なぜ中学受験をするのか」ではなく「なぜ中学受験をしないのか」が判断基準になっている。
中学受験率の高い地域と、中学受験率が高くない地域では、地元公立中学の様相も大きく違ってくる。
中学受験率の高い地域では、地元公立中学は、それなりの私立中学などに進めなかった子と、そもそも何らかの理由で中学受験をしなかった子で構成されることになる。
それは、保護者も重々承知している。
中学受験をしても地元公立中学に進むケースと言うのは、全落ちしたか、滑り止めの滑り止め校にしか合格できなかったケースに限られる実態がある。つまり、残念ながら地元公立中学に進むしかなかったというケースだ。
そうした状況が長年続くと、特段の事情がない限り、最初から地元公立中学を選択するというのは稀なケースとなる。
極論すれば、地元公立中学の教育内容は、生活指導が中心となり、教育指導に過度な期待は持てないという判断が一般的になる。
これとは逆に、中学受験が盛んでないで地域では、地元公立中学は、大都市圏ではない地方都市などとおなじように、地元公立中を忌避すべき顕著な理由が見つからないというケースもあり得る。
こうした地域では、「なぜ中学受験をするのか」や「なぜ公立中高一貫校を目指すのか」が、検討課題となる。つまり、こうした地域では、地元公立中学を洗濯しても、公立中高一貫校を洗濯しても、大きな違いを見出しにくい。
そもそも、地元や通学圏に、魅力的な私立中学が存在しないということも拍車をかける。その場合、地元中か公立中高一貫校かの2択しかなくなるからだ。しかも、どちらを選んでも、致命的な差がないことが多い。
よって、住んでいる地域が違うと、公立中高一貫校を目指す意味や意義が全く違ってくることになる。このため、住んでいる地域が違う人どうしでは、この問題を議論し合っても意味はない。
中学受験が一般的な地域では、公立中高一貫校に残念になったら進学校である私立中学に進ませるのが一般的なので、それまでの努力が可哀そうだなどという考えに至ることはまずない。むしろ、地元公立中学に進ませるのは、本人の将来にとってどうなのだろうかという判断が優勢となる。生活指導や生徒指導で教育指導に手が回らなくなるような中学校に進ませてよいのかという判断が働くからだ。
地域によって、併願する私立中学の選び方も自ずと違ってくる。
もちろん、公立中高一貫校に合格できそうな子であれば、それなりの私立中学に合格できるということもある。
そもそも、それなりの私立中学に合格できないなら公立中高一貫校に合格できる可能性は高くないから、進学校ではない私立中にしか合格できなかった場合は、仕方なく地元公立中学から仕切り直すしかないであろう。
これが、私立中などへの進学率が、80%とか90%とか100%にはならない原因でもある。
ただ、それなりの私立中にも合格できず、仕切り直しをする場合は、高校受験で逆転できる子は、ごく少数となるので、高校受験でもまた同じ過ちを犯さないように、今度こそ適切な準備をすべきであろう。
授業料が安いのは誰にとってもありがたく、所得に余裕がない人だけの特権ではない。むしろ、国や自治体の就学支援や所得税制からは、高額所得者ほど公立中高一貫校の授業料の安さは有利となる。
授業料が安いだけなら地元公立中学も同じだから、授業料を基準に進路を決定するのなら、公立中高一貫校か地元公立中かフル特待の私立中学かということになる。
しかし、教育内容や教育環境を基準に進路を決定するなら、中学受験が主流の地域では、名門私立中か公立中高一貫校かの2択となる。
フル特待の合格がいただける私立中は、偏差値で10から15ポイント平易な私立中になるから、経済的な理由を優先せざるを得ない限り、フル特待私立中は、選択肢としては第三順位かそれ以下になるはずだ。
そもそも、フル特待や部分特待を狙って私立中を受験するくらいなら、少ない受験機会を有効に使いきることを優先して、挑戦校や最適校に厚く日程配分する方が有益だろう。
中学受験が盛んな地域であっても、公立中高一貫校を第一志望とするのは、個々人の判断の自由に任される。
しかし、中学受験で満足度が高い受験結果を目指すのであれば、公立中高一貫校とおなじようなレベルの学友が集う私立中を滑り止めに持ってくるのが最適になるだろうから、特待私立中の優先度は低くならざるを得ない。
難関私立中が第一志望なのか、公立中高一貫校が第一志望なのかで、戦略の最適解は違ってくる。
それは、公立中高一貫校が第一志望で、地元公立中が実質第二志望という受検生親子とも、当然に戦略は違ってくる。
これらをごちゃ混ぜにした議論に大きな意味はない。
何が最適解かは、制約条件によって違うからだ。
それぞれの親子の立ち位置を、しっかりと見極めた上で、過酷な中学受検に臨むべきである。