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三田学院

[2022年5月31日]

【大学受験】AO推薦特化予備校の闇

正真正銘の進学校に通う中高生にとって、大学入試における「総合型選抜」(旧AO)や「学校推薦型選抜」は、必ずしも馴染みが深くはないだろう。

要因はいくつか考えられる。

1.一般で合格できるであろうから総合型や推薦型を選ばない。
2.専願が多いので、学校が進学実績(合格者数)を稼げない。
3.専願が多いので、一般より上位大学や学部を目指しにくい。
4.一般より指導に手間がかかるので教員が積極的に勧めない。

しかし、メリットも多い。

1.一般と総合と推薦を組合わせられれば、チャンスが広がる。
2.なぜ、その大学の、その学部を目指すのかが、明確になる。
3.早期に大学受験を具体的に意識でき、意欲的に取り組める。

そもそも、私立大学の場合、概ね50%以上の入学定員が、推薦や総合だから、一般枠だけで勝負すると、ほぼ半分か半部以上の入学機会を自ら捨てることになる。

大学側は、少子化で受験生が減少しても、一般選抜が機能するように(入学難易度が維持できるように)、積極的に推薦や総合で学生を集めようとしている。しかも、推薦や総合の多くは専願になるから、繰上合格を乱発しなくて済む。そもそも第一志望の学生を多く入学させることになるので、大学側としても望むところであろう。

この一般選抜の実態は、まだ広く認識されていないようだが、ある難易度以下の大学では、まったく選抜機能が働かなくなってきている。

どういくことかと言うと、

総定員500人の学部で、一般で500人の合格者を出しても、入学手続してくれるのは極めてわずかで、次々に追加合格を出しても、定員がまったく埋まらないというのが、ほとんどの私立大学の実態だからである。

その対策として、

1.指定校推薦を乱発する
2.総合や公募推薦や自己推薦で合格を乱発する
3.一般で追加合格を乱発する
4.総合や公募推薦や自己推薦を複数回実施する

難関私立大学でなければ、一般20%以下、一般以外が80%以上などというのは、ごく当たり前になってきている。

早稲田大学でさえ、一般以外が60%に迫ろうとしている。

一言で言えば、

「私立大学は、推薦か総合で受験するのが、主流になりつつある」

となる。

国公立大学も例外ではない。

文部科学省は全国の国公立大学に、総合や推薦による入学者を30%以上に引き上げるよう指導している。

そこで商魂たくましい塾や予備校は、総合特化や推薦特化に舵を切っている。一般専門だったマンモス予備校の代々木ゼミナールが、突如事業を停止した事件は、もう遥か昔の出来事になってしまった。

この総合特化や推薦特化の塾や予備校の「不明朗会計」と「不明朗合格実績」に、受験業界の闇が見える。

総合や推薦なら、誰でも難関大学に合格できるというものではない。

ところが、総合特化や推薦特化の塾や予備校の合格実績は、難関大学の分しか公表していないことが多い。

早稲田、慶應、上智などだけだ。

実態は、これより下の大学に進む人がほとんどだろう。

総合や推薦に特化すると一般での合格がほぼ絶望的となる。
総合や推薦入試だけで勝負するのもまた狭き門となる。

必然的に、合格が取れるまで、どんどん志望校を落とさなければならなくなる。

挙句の果てに、最初から一般を目指していたら合格できたであろう大学にまで、総合や推薦で不合格になる。

結果として、大学受験に失敗する。

そうした塾生や予備校生の存在は、決して公表されない。

早稲田や慶應などにAOや推薦で合格した先輩塾生や先輩予備校生を、宣伝広報アルバイトとして多数雇って、説明会や個別相談会に配置し、何も知らない受験生や保護者を魅了する商法で、業績は「うなぎ登り」である。

まあ、一般型の予備校や、高校受験の大手塾や、中学受験の大手塾でも行っていることなので、珍しくはない。

しかし、学力試験を行わないことが多い私立大学の総合や推薦は、一発逆転や大逆転を目指す受験生や保護者を獲得するには、最も適した狩場や漁場であることも事実であろう。

くれぐれも、数ヶ月で100万円とか120万円とかの授業料を一括払いしたからといって、あたかも合格したかのような気分になって、意識を弛緩させてはいけない。

合格をいただくまでは、総合や推薦だけでなく、一般も含めて、闘い続けられる状態を維持できなければ、春は来ないのである。