[2022年6月2日]
私立大学の一般入試が崩壊している。
Fランク大学のことではない。
どのように崩壊しているかを説明する。
MARCHのある私立大学を例にとると、一般合格定員の、約3倍以上の追加合格者を出して、やっと定員が埋まっている状況にあるのだ。
どの大学か分からないように、かつ、わかりやすいように、概数で説明する。
一般入試の定員が1,000人のところ、追加カ合格者(繰上げ合格者)を3,000人以上も出したのである。これは今春に起きたことだ。合格者は定員の4倍にあたる4,000人である。
簡潔に言えば、定員厳格化もあって水増し合格は出しにくいから、当初はほぼ定員通りに1,000人の合格者が発表される(少しは水増しされてはいる)。
しかし、正規合格者のほぼ全員が入学しない。
大学側は、ほぼ初回の合格者数と同じ人数となる1,000人の追加合格を出す。
しかし、一次追加合格者のほとんどが入学しない。
大学側は、二次追加合格者として、また1,000人の追加合格を出す。
しかし、二次追加合格者のほとんども入学しない。
大学側は、三次追加合格者として、また1,000人の追加合格を出す。
ここでやっと入学者が定員を充足する。
つまり、定員の4倍の合格者を出しているのである。
これはSMARTと呼ばれる私立大学でも起きている。
なぜ、このようなことが起こるのか。
1.より上位の私立大学に合格したことが判明すると、下位の私立大学の合格者は入学を辞退する。
2.国公立大学に合格したことが判明すると、私立大学の合格者は入学を辞退する。
3.これが国公立大学や上位私立大学から順に、五月雨式かつ玉突き式に起こる。
国公立大学に合格すると上位私立大学の辞退者が出る。
上位私立大学に合格すると中位私立大学の辞退者が出る。
中位私立大学に合格すると下位私立大学の辞退者が出る。
国公立大学の入学辞退者は少ないが、難関私立大学は難関国公立大学に合格すると辞退されてしまうので、私立大学の一般入試は、程度の差こそあれ、どの私立大学でも崩壊している。
これは、SMARTやMARCHあたりから顕著になる。
それ未満の私立大学では壊滅的に崩壊している。
これを防ぐために、私立大学も知恵を絞る。
指定校推薦の定員を増やす
公募推薦や自己推薦の定員を増やす
総合型選抜(AO入試)の定員を増やす
つまり、一般入試の定員を可能な限り減らす。
指定校推薦は実質100%、公募推薦や自己推薦もほぼ100%、第一志望を条件として、入学確約を条件として、合格させる。
指定校推薦や公募推薦や自己推薦が崩壊していなければ、より確実に入学者を確保できる。
しかし、難関私立大学未満の私立大学は、指定校推薦や公募推薦や自己推薦すら崩壊している。
指定校推薦ですらほとんど埋まらない。公募推薦や自己推薦はもちろん、総合型でも追加募集をする始末である。ここでは辞退者が出るのではなく、そもそも、まともな応募者というか、まともな受験者が少なくて、起きる。
挙句の果てに、AOなどで追加募集を行わざるを得なくなる。大学に全落ちした受験生を取込むのである。当然に大学が望んでいるような学生は入学してこない。しかし経営破綻をするよりは、まだましだと、腹をくくるしかない。
こうした私立大学は、一般入試を行うと、学力が崩壊している受験生しか出願してこない。どこかに強みを見出してあげないと、とてもじゃないが入学させることが難しい。
一般だけでなく、推薦もAOも崩壊しているのである。
今後少子化が進行すれば、この事実は隠しがたくなるであろう。
しばらく前に、最難関私立大学でも定員割れが起きた。その大学は今、死に物狂いで入試改革を進めている。入試改革の内容を示せば、どの大学かわかってしまうので書かないが、国民のほぼすべてが知る、あの超有名な私立大学である。
最難関私立大学ですら、厳しい状況にあるのだ。
ほとんど全ての私立大学が、実質定員割れに追い込まれる日は、そう遠くはないだろう。
大手予備校などの旧態依然とした大学入試対策は、すでに意味をなしていないのである。
かなり前に、大手の実質私立大学専門予備校が自主廃業に追い込まれたが、その時期にはすでに、私立大学入試の崩壊は始まっていたのである。私立大学に強い大手の予備校に通う意味がなくなってしまったのだ。
公立中高一貫校や難関公立高校だけでなく、名門私立中高一貫校ですら、在校生の進路指導で、頑ななほどに、国公立大学をほぼ一辺倒で、強く勧めてくる理由を、改めて納得し直した次第でもある。