[2022年7月12日]
都立中の適性検査?(適性作文)の罠について書いておこう。
「うちの子、作文(適性作文、適性小論文)を、いつになっても書けない」というお悩みを多く聞く。
都立中の適性検査1は、まず課題文が正確に読めなければ、得点できない。
適性作文の前に、多くの場合、要約問題が出題されるが、ここでまず、課題文が正確に読めているかが検査される。
続いて、適性作文で、課題文が正確に読めた上で、課題文の内容について受検者がどのような考えを形成できたたかを、表現力とともに検査される。
平たく言えば、
何が書かれていたかを正確に読み取れるか。
何が書かれていたかを正確に理解できるか。
何が書かれていたかを正確に表現できるか。
その上で、
設問に対して正しく向き合うことができるか。
設問に対応した客観的な意見を展開できるか。
受検者の意見は課題文に正面から向き合っているか。
受検者の意見は客観的で論理的で飛躍などはないか。
受検者の意見は採点者を納得させることができるか。
受検者の意見は実経験や実体験に裏打されているか。
受検者の意見は課題解決につながる建設的なものか。
受検者の意見は適切な将来の展望につながるものか。
例えば「生物との共生」について問われたとしよう。
殺処分を止めるべきだという動物愛護的な意見を展開したらどうなるか。
どのような意見を持とうと個人の自由だから、実生活においては許容されるかもしれない。しかし適性作文では、これはマズい。殺処分を止めたら「生物との共生」が実現できるであろうか。突っ込みどころが満載というか、減点対象となる箇所が満載の答案になるだろうし、得点そのものが厳しくなる。全体の仕上がりにもよるが、0点や超低得点を覚悟しなければならないだろう。
反論や反証に耐えられる意見でなければならない。
客観的で論理的な意見でなければならない。
課題解決につながり将来展望につながる意見でなければならない。
例えば「友との心のつながり」について問われたとしよう。
引っ越しなどで遠く離れても、LINEやSNSなどでつながっているから、友と心がつながっている、と主張したらどうなるか。
これでは、ただ電子的な通信手段で連絡可能な状態が続いているだけでしかないから、「友との心のつながり」に対する答案としては適切でない。これも合格作文には程遠い。
作問者や採点者は、受検者が問題の趣旨を読み違えたと、判断するであろう。
つまり、課題文が正確に読めておらず、かつ、問題文も正確に読めていないとジャッジされるのだ。
「心のつながり」とは何か?
「心のつながり」とはどういうことを言うのか?
について、受検者が、適切に考えて、意見を形成できなければならない。
その上で、
意見は独自性がなければならない。
意見は客観的でなければならない。
意見は論理的でなければならない。
意見に飛躍があってはならない。
理由と根拠が明示されなければならない。
意見と理由は整合的でなければならない。
意見と根拠は整合的でなければならない。
理由と根拠も整合的でなければならない。
意見と理由と根拠は一貫生がなければならない。
意見は実経験をふまえていなければならない。あるいは、
意見は実体験をふまえていなければならない。あるいは、
意見は正しさを論理的に証明できなければならない。あるいは、
意見の正しさを確認できる具体例を示せなければならない。
意見は課題解決につながるものでなければならない。
意見は将来展望につながるものでなければならない。
適性作文には「採点基準」がある。
採点基準がなければ、誰が採点しても同じ点数にならない。
誰が採点しても同じ点数にならないようでは公平ではない。
適性作文は、芥川賞などの「文学賞」を競うものではない。
入試問題である。
ここで問われているのは、
国語の基礎基本
国語の応用発展
言語を使った論理的思考力
言語を用いた高度な表現力
つまり、
高い国語の運用能力
教科を超えた思考力
である。
適性作文を書けるようになるためには、どうしたらよいか。
もうお分かりになったであろうか。
模範解答や解答例を書き写す??
そんな適性検査対策指導をするような指導者のもとで、都立中受検の準備をしない方がよい。
過去問や適性作文問題集の模範解答は、墨で塗りつぶすか、切り取って隠してしまうのがよかろう。
保護者も模範解答は参考にしない方がよい。
そもそも、過去問題集の解答例や、適性作文問題集の解答例が、正しいとは限らないし、模範的である保証はない。その通りに書ければ満点になるとは限らないし、合格点を超えるという保証もない。そもそも誰が書いた解答例かもわからない。学生や塾のアルバイト講師などが、小遣い稼ぎに書いたモノかもしれない。
教材の校正や解答の校正をしたことがあるが、いつもかなりの数の間違いが発見される。すでに出版されている問題集であっても、しばしば誤りを発見することがある。数学や数理科学の書籍ですらその程度だから、適性作文の模範解答例などもっとあてにならないと考えた方がよい。それらは工業製品のような信頼性は担保されていない。適性作文の解答例は、そのことを踏まえて利用すべきである。というよりも、利用しない方が安全である。
なぜなら、模範解答や解答例を模したような適性作文の答案は、都立中の採点官に、すぐに見抜かれるからだ。彼らは適性検査本試験の採点経験を積んできたプロである。独自性がないと判断されれば大幅な失点となる。
適性作文における意見の独自性は、書き写しでは、まったく育むことができない。それだけでなく、論理性も客観性も、思考力も表現力も、まったく育むことはできない。つまり、書き写しでは、合格作文を書けるようにはならない。
ちなみに、都立中は適性作文の模範解答を公表していない。
不必要な誤解を招くのを防ぐためもあるだろうが、そもそも適性作文に公式な模範解答や正解は存在しないからだ。
あるのは、採点基準だけである。
よって、適性作文の模範解答は、模範にしなくてよい。
むしろ、適性作文の模範解答を、模範にしてはいけない。