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三田学院

[2022年9月13日]

【都立中】来春は史上最悪の激戦に

2023年度の首都圏私立中学入試は史上最悪の激戦となりそうだ。

私立中学入試のことは都立中受検生には関係ないと思っているとしたら、考えが甘い。

予想される影響を列挙する。

1.適性検査型入試を行う私立中の合格難易度が上がる。

これは、本来の学力試験型入試で十分な受験生を集められる私立中が増えるため、適性検査型入試の合格者を絞ることができるためである。

2.適性検査型入試を行う私立中の特待が取りにくくなる。

これも要因は1.と同じだが、適性検査型で特待合格を出すよりも、学力試験型で特待合格を出した方が、歩留まりが高い学校がほとんどなため、より優秀な入学者を確保しやすい学力試験型の成績優秀者に特待枠をより多く割り振るためである。

3.難関私立中受験生が、中堅以下の都立中を併願する傾向が強まる。

激戦化することは受験生親子は十分に承知している。このため、全体として安全志向が強まっている。これは併願校にも言える。2月3日に都立中を併願するなら、より確実に合格が狙える都立中を選ぶ傾向が強まる。

都立中は出願時期が早く、2月1日や2日の結果を確認してから出願校を決めるということができない。このため、より慎重に出願校を決めなければならない。ここで冒険はできないからだ。これにより、小石川だけでなく、その他の都立中も、適性検査型受検生どうしだけでなく学力試験型受験生との闘いが激化する。

一言つけ加えておくが、2月3日の闘いは、同じ学力であれば、適性検査対策にその力を注いできた受検生の方にアドバンテージがあるから、過度に弱気になる必要はない。むしろ正々堂々と闘えばよい。ただし、併願する私立での闘いでは、今まで以上の劣勢を覚悟しておいた方がよいだろう。

さて、中学受験は受験者数が増えて激戦になることだけが史上最悪の要因ではない。

新型感染症の影響で、学校見学や学校説明会に十分に参加できていない受験生親子が多いことも、史上最悪に拍車をかける。

どういうことかと言うと、小6にもかかわらず、第一志望校を絞り切れていない受検生が、例年になく多いということだ。

つまり、個々の学校の難易度と倍率が、今年は秋になっても読み切れないのだ。

そのことが、さらに第一志望校の絞り込みを難しくしている。

四大模試のデータを見ると、模試により激戦化が予想される私立校に違いが見られる。これは学力ゾーンによって、志向に違いが見られるということだ。

ある模試では、芝や本郷などがふたたび激戦になりそうな気配であるのに対し、

別の模試では、品川女子、普連土、高輪などが、激戦になりそうな様子で、

さらに別の模試では、実践女子、跡見、獨協、日大豊山の激戦が示唆されている。

要注意校は、品川女子である。どの模試でも概ね受験者数が増えそうな気配であるからだ。

これは2024年度に完成する新校舎への期待が大きいと思われる。そうであれば、来春だけでなく、しばらく人気は続く可能性がある。

台風の目となるのが芝国際(旧・東京女子学園)である。共学化による完全リニューアルで、校舎が新築されるだけでなく、幹部教員がほぼ総入れ替えとなる。このため、過去のデータはまったく使えない。

すでに、ある模試では、昨年よりも10ポイント程度、予想偏差値が上昇している。

三田国際(旧戸板女子短大付属)や広尾学園小石川(旧村田女子)のように急騰するかはわからないが、かなりの人気を集めそうだ。説明会の定員は瞬間蒸発している。昨年までとは隔世の感がある。

しかも、人気が人気を呼び、数年にわたって上昇を続ける可能性も否定できない。

話しは戻るが、私立中学入試の激戦化は、対岸の火事ではない。

・適性検査型私立の、合格と特待合格が取りにくくなること。
・私立受験生が、中堅都立中を併願する可能性が高まること。

あなたにとっての人気校は、みんなにとっても人気校であることが、ほとんどである。

塾生の志望校調査をしていても、毎年そう感じる。

自分だけが選んでいるつもりでも、みんなも選んでいるということだ。

みんなと同じ動きをすれば、激戦の中の激戦地に、身を投じることになる。

穴場校探しとまでは言わないが、本当の意味で自分に合った学校を探す出す努力をしたなら、過度に人気な学校ばかりを受験校リストに入れることにはならないだろう。

自分に合っていると思う学校を書き出してみたら、近年極端に人気化している学校ばかりだったということは、ないだろうか。

そうした人は、自分で選んでいるつもりが、誰か他の人に選ばされているのかもしれない。

自分で選んだつもりが、実は、自分では選んでいない。

なんと怖ろしいことだろうか。