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三田学院

[2022年9月17日]

【都立中】狂気と経済力

父親の経済力
母親の狂気

中学受験をテーマにした人気アニメの冒頭の言葉だ。

しかし、都立中に合格するために、父親の経済力も、母親の狂気も、必要はない。むしろ、合格の足かせになりかねない。

日々の生活に窮するような家庭の経済状態でない限り、家庭の経済力の差が有意に合格率に反映されることはない。

むしろ、経済的に余裕があり過ぎると、難関私立中に目移りして目標校が曖昧になり、都立中への合格意欲に揺らぎが生じかねない。

受検生本人にとっても、保護者にとっても、何が最優先なのかが、わからなくなる危険性がある。

学力が高ければ、それだけで合格できるほど、都立中は甘くない。大手私立中学受験専門塾で対策する場合でも、適性検査対策の手を抜けない。

大手私立中受験専門塾に通った場合に、どこまで都立中受検対策になるのかは、かなり怪しい。低い合格率で知られる大手都立中受検指専門塾に通うよりも、さらに合格可能性が低くなるリスクを覚悟しなければならないかもしれない。

子どもは正直で周りの影響を受けやすいから、大手私立中受験専門指導塾に通うと、周りには私立中受験に絞った受験生がほとんどになり、ついつい意識が私立中に向かってしまう。

大手私立中受験専用塾では、カリキュラムは当然に私立中受験用だし、テキストも私立中受験専用だし、宿題も私立中受験専用だから、自宅学習もほぼ私立受験専用の内容になってしまう。

親がどんなに「あなたは都立中が第一志望なのですよ」と伝えても、実際に行っていることと違えば、子は当然に混乱する。ほとんどの子は、大人が期待するほど器用に対応できない。

私立中学受験専用塾で仲良くなった友達が、あこがれの私立中学に合格することを夢見て励めば励むほど、意識は私立中学に向いてしまう。

私立中学受験生の多くは、都立中学のことをよく知らないことが多い。

・九段て、和洋九段のことでしょ。

九段Bに合格した歴代の塾生が、私立中学受験生によく言われたフレーズだ。

九段にも、和洋九段にも、極めて失礼であるし、なによりも九段合格者に、とても失礼である。

・授業料が安いんだってぇ。私も受けておけばよかったなぁ。(お小遣い増額してもらえたかも・・。)

都立中を、地元公立中学の一種くらいにしか思っていない私立中学受験生もいる。

公立中高一貫校にも、地元公立中学校にも、大変失礼な発言である。

都立中受検で求められる保護者の特性は、

高い経済力ではなく、受検対策に支障がない程度の家計のわずかな余裕でよい。

また、

狂気ではなく、安定した精神状態と、安定した判断力である。長い受験対策期間を通して、子が安心して受検対策に専念できるような、安定した家庭環境が必要であるからだ。

そして、都立中受検に限らず、私立中受験にも言えることだが、受験対策や受検対策を本格的に開始する前から、子が落ち着いて勉強に専念できるような習慣づくりをしておいてあげることが大切である。

塾にぶち込めば、それだけで、子の学力が向上するほど、現実は甘くない。

むしろ、受検対策を始めた段階で、子の学力や適性に大きな格差が開いてしまっているというのが、実態である。

都立中受検では、幼いころからの経験の積み重ねが、とても大切になる。

しかし、ここで求められる経験とは、レジャーランドに行くこととか、ビデオゲームで遊び惚けたこととか、スマホやタブレットで暇をつぶしたような経験ではない。

大自然はどうなっているのか、
世の中はどうなっているのか、

人間はどう生きるべきなのか、

自然にはどんな課題があるのか、
社会にはどんな課題があるのか、

何を克服できれば課題が解決するのか、
何を克服しないと事態は悪化するのか、

そのために、自分は何をすべきなのか、
そのために、自分には何ができるのか、

そして今、自分は何に取り組むべきなのか、
そして今、自分はどう取り組むべきなのか、

将来に、自分は何に取組みたいのか、
将来に、どんな自分になりたいのか、

そして、社会に、どう貢献するのか、
そして、世界に、どう貢献するのか、
そして、人類に、どう貢献するのか、
そして、地球に、どう貢献するのか、
そして、宇宙に、どう貢献するのか、

そして、生きた証しをどう残すのか、

まだ幼いながらも、そうしたことが考えられるような子に、育てなければならない。

ただ入試問題が解ける子に育てようとしても、なかなかそうはならない。

誰からも信頼され、
誰からも尊敬され、
誰からも求められ、
誰からも愛される。

そして、

期待を裏切らない。

保護者には、そうした子に育てることが、求められる。

中学受検に、父親の経済力も、母親の狂気も、いらない。

むしろ、ない方がよい。