[2022年9月20日]
収まる気配のない首都圏中学受験の過熱だが、過去の教訓が参考になるかもしれない。
2008年9月:リーマン・ショック
2011年3月:東日本大震災
過去20年間で、中学受験者数が大きく減少したのは、この2つの災害が起きた時であった。
多くの人が、生活基盤を大きく損なうなどで、未曾有の危機に瀕した。
いずれも、このままでは、日本経済が崩壊してしまうのではないかという恐怖が、広く世間に漂ったことが共通している。
それは、新型感染症による恐怖とは桁が違っていた。
こうした危機が、日本国内をも襲うことは、今直ちには予想されていないようだが、新たなリスクが高まっているかもしれないことを、知っておいた方がよいだろう。
ロシアによるウクライナ侵攻に伴う、エネルギー危機と食糧危機である。
このうち、先進国である日本により大きな影響を与えそうなのが、エネルギー危機である。
そんなものは、すでに始まっているではないかと、思うかもしれない。
しかし、今後、さらに厳しい事態へとつながっていく危険性が、徐々に高まっているのである。
商品市場と金融市場における大波乱である。
実体経済と金融経済は密接にリンクしていることは、誰もが知ることであろうから、改めて説明したりはしない。
エネルギー価格の上昇で、エネルギー企業が儲けているとは限らない。
過去にも、エネルギー価格の大幅な変化などで、経営破たんしたエネルギー企業は数多い。
エンロン、昭和シェル石油などが、記憶に新しい。
今回の原油価格や小麦価格の急上昇で、どの企業が巨額な損失を抱えているのかは、まだ明るみにはなっていない。
実体経済と金融経済は、密接にリンクしている。
原油や小麦などのコモディティーは、現物市場だけでなく、先物市場やデリバティブ市場などでも取引され、大手金融機関や大手商社などが、取引に参入している。
どこかで巨額の破たんや危機が起きれば、その影響は世界規模で伝播していくことになる。その影響はエネルギー分野や食料分野にとどまるとは限らない。
皮肉なことに、そうした危機で大きな利益を上げようと暗躍する勢力が、その危機を大きく増幅させることがある。ヘッジファンドなどの国際金融資本の一部である。
危機は危機を呼び、損失が損失を生み、危機は増幅され、損失は広がっていく。
原油価格の推移、食糧価格の推移、外国為替市場の推移、株式指標や金利の推移などには、注意を払うべきである。
杞憂に終わればよい。
しかし、米国の金融引締だけで、世界は大きく動揺するというのが、現実である。
つい最近になって、ある有名週刊誌も、この危機に言及し始めた。ただの煽り記事だとスルーするのは個人の自由だが、火のない所に煙は立たないということも、思い出してみるべきだろう。
米国金利上昇、原油価格の高騰、食糧価格の高騰だけで、発展途上国の経済は容易に破たんする。
そこで生活する人々は食糧危機に巻き込まれ、食糧危機は新たな国際紛争の火種となる。
今回は、それだけに、とどまらないかもしれない。
先進国こそ、膨大な量のエネルギー消費と、大量廃棄を伴う食糧消費なしに、日々の暮らしが成り立っていない。
それに関連して活動する企業の規模も大きい。
そこに関係する金融機関の取引金額も大きい。
自由で開かれた金融市場こそ、巨大国際金融資本の動きに影響を受けやすい。
リーマン・ショック
これは過去の歴史上の危機にとどまらない。
危機は姿を変えて人々に何度も襲いかかる。
新たなリーマン・ショックが起るリスクが潜んでいることを、過小評価してはいけない。
もし起これば、中学受験や中学受検にも、おおきな影響が及ぶ可能性を、排除できない。
備えておいて損はない。
経済全般だけでなく、受験においても、
リスク調整後のリターンを意識しておくべきである。
大手塾や大手予備校は、もともと、かかる費用に対するリターンが芳しくない傾向にある。
リスクを意識しなければ、リターンばかりに目が向いてしまう。
しかし、リスクを適切に評価すれば、大手塾や大手予備校のリスク調整後のリターンは高くはないことが分かるであろう。
しかも、高いリターンを享受できるのは、大手塾や大手予備校では、常にごく少数の上位層だけだということも、忘れてはならない。
善良な多くの人たちは、いつも、ただコストとリスクだけを負担させられることになる。
そろそろ、冷静さを取り返す時であろう。