[2022年9月22日]
学校の成績さえ良ければ合格できるかのような、怪しいプロパガンダを、未だに信じている受検生親子がいるようだ。
しかし、客観的なデータから難易度を可視化すると、違う世界が見えてくるはずだ。
偏差値が70の都立中があったとしよう。
しゅともし偏差値では、小石川女子は74、小石川男子は72である。
平均を50として、得点のちらばりを示す標準偏差(1標準偏差、1σ)の幅で上振れしている場合が偏差値60で、2標準偏差分上振れしている場合が偏差値70となる。
平均点が60点で、標準偏差が15点の場合、得点が75点の人が偏差値60になり、得点が90点の人が偏差値70となる。
標準正規分布に従うとき、つまりN(μ、σ)のとき、偏差値60の人の比率は成績上位約16%で、偏差値70の人の比率は成績上位約2%となる。
都内の中学受験者比率を上位20%とすると、偏差値70の人というのは、同一学年の総人数の、0.4%(20%×2%=0.2×0.02)となる。
0.4%とというのは、1,000人のうち4人になるから、約250人に1人という計算になる。
それくらいに、偏差値70を実現するのは難しい。集団内で偏差値70以上のポジションを確保するには熾烈な競争を制さなければならない。
では、偏差値65はどうか。
しゅともしでは、九段Bが、男女ともに偏差値66である。
標準正規分布に従うとき、つまりN(μ、σ)のとき、偏差値65の人の比率は成績上位約7%である。
都内の中学受験者比率を上位20%とすると、偏差値65の人というのは、同一学年の総人数の、1.4%(20%×7%=0.2×0.07)となる。
1.4%とというのは、1,000人のうち14人になるから、約71人に1人という計算になる。
成績最上位の人や、第2位の人が、都立中を受検するとは限らない。成績第3位の人というのは、平均すると偏差値65には達しないから、仮に偏差値65の都立中を受検したとなると、ほぼ確実な合格は狙えないことになる。
偏差値60の都立中はないので、偏差値60の受検生が、いずれかの都立中を受検したとなると、より厳しい合格率となる。
当然に、偏差値65を大きく下回れば下回るほど、合格の可能性は絶望的に低くなっていく。
都立中を受検することに、合格とは別の意味を見出しているなら、よい。
例えば、勉強する動機づけにしたい。
例えば、試練を経験させてあげたい。
例えば、目標なく生活させたくない。
ただ、期待せぬ残酷な結果は、期待せぬ禍根を残しかねない。
保護者には、仮に都立中に合格して入学しても、高額な入学金や高額な授業料を払わなくて済むという、安心感があるかもしれない。
高額な通学定期代や、高額な教育実費がかかったとしても、都立中に通ってくれるのであれば、他を切り詰めてでも、なんとか用立てたいと思えるかもしれない。
しかし、合格するのは容易ではない。凡人ではまず合格しない。優等生でもほとんどが残念になる。
安易に都立中を目指せば、待ち構えているのは、想像を超える悲劇的な結末となる。
現実を踏まえた上で、それでも尚、都立中への合格を目指すなら、それなりの覚悟と、それないりの対策が必要となる。
怪しいプロパガンダを、生徒募集や受検指導のための宣伝文句にしているような組織の下で、都立中を目指すべきではないだろう。