[2022年9月26日]
今さら説明するまでもないことだが、高校受験では中学生は何らかの形式で高校受験をせざるを得ないが、中学受験では小学生は必ずしも中学受験をしなければならない訳ではない。
このことが、高校受験と中学受験の根本的な違いとなる。
都心部や郊外の教育熱心な住宅街を除けば、これまで中学受験をして地元公立中学以外へ進学する小学生は過半数を超えることはなかった。
東京都では、中学受験をして私立中学や国立大学附属中や公立中高一貫校へ進学する小学生は、中学受験が過熱している状況でも、全体では約25%である。
中学受験をして地元中学以外に進学する小学生の比率が高いのは、千代田区、文京区、中央区、港区、江東区などであり、概ね40%を超え、50%に迫る。
しかし、受験人口で言えば小学生の少ないエリアであり、東京都全体や、首都圏全体で言えば、それほど高い訳ではない。
また、千代田区、文京区、中央区、港区、江東区などが、突出して学力が高い訳ではないので、半数近い小学生が中学受験をするとなると、多くは、それなりの私立中学へ進学することになる。
中学受験熱が高まり、中学受験生数が増えても、そのまま学力優秀層が増える訳ではないので、加熱傾向の受け皿となるのは、中堅校や中位校が中心になるということを知っておくべきだろう。
それなら、難関校や上位校が合格しやすくなるかと言うと、そうではないことは説明するまでもないであろう。
もともと、学力優秀層の多くは中学受験熱の変動にかかわらず、中学受験をしてきたから、難関校や上位校の難易度が下がることはなく、むしろ競争激化から上昇する。
難関校や上位校の募集定員が増える訳ではないから、増えた中学受験生は、玉突きにより、元々より難易度が低かった私立中学へ向かわざるを得ない。
これにより、中堅校や中位校の難易度に大きな上昇圧力がかかる。
学力は概ね正規分布するから、受験生の増加により、受験生が向かうことになる難易度帯は、全中学受験生の分布により近い「しゅともし」で言えば、偏差値で概ね55以下のゾーンとなる。偏差値が低くなるほど受験生増の影響を受けやすくなり、中学受験が低迷した場合にはほぼ全入に近くなる偏差値40〜45以下でも激戦となる。
一方で、中学受験生が増加する局面では、学力平均層以下の増加が顕著になるから、最頻値に近くなる平均値付近の偏差値50の位置が下がり、難関校や上位校の合格偏差値が相対的に上昇する。
難関校や上位校の難易度は、合格偏差値の上昇程は難易度が上昇しないのだが、受験生の増加は倍率の上昇圧力となるから、競争そのものは激しくなる。
中学受験の過熱は、ブームに乗って参戦してきた層にとって、過酷を極めることになる。数年前なら合格をいただけたであろう学校からも入学を断られることになるからだ。
一方で、中学受験が過熱すれば過熱するほど、高校受験には優秀な受験生が残らなくなる。
高校受験は、中学受験のように自由選択制ではないから、高校に進学できる中高一貫校に通っていない限り、高校受験をしなければならない。
ところが、中学受験が過熱すると、学力上位層や中間層がより多く抜けた状態での闘いとなる。
つまり、理論上は、難関校や上位校だけでなく中堅校まで、相対的に合格を取りやすくなる。
ただ、中学受験で生徒を多く集められた私立学校は高校募集定員を絞るであろうし、公立高校の定員は、高校受験予定の中学生の人数の変化に対応して入学者定員を変動させるから、見かけ上は合格しやすくはならない。
しかし、学力優秀層や上位層が抜けた状態での闘いになるから、中学受験が低迷している状態よりは、より難易度序列が高い高校を狙えることになる。
中学受験や高校受験に何を求めるかにもよるが、名目上の難易度が高い学校へ進学することが満足度を高めるのであるならば、中学受験が過度に加熱した年度に中学受験を迎える学年の場合、高校受験を選択した方が満足度が高くなる可能性がある。
もちろん、数理統計学的な推論に基づく見解なので、全体の満足度にはあてはまる可能性は高いが、個々の満足度までが保障されるものではないことは承知しておいていただく必要がある。
さらに、難易度の高い学校に入学することよりも、6年一貫教育を志向する場合や、大学進学までの10年一貫教育を志向する場合は、つまり高校受験を選択する意思がそもそもない場合は、この推論の対象者にはならないことを申し添えておく。
ただ、大学附属を目指す場合でも、中学受験より高校受験で実現を目指した方が有利なケースもある。ただし、中学受験でも高校受験でも合格可能性が相応にある層に限られる。
箸にも棒にも掛からぬ層には、どちらを選ぶかの有利不利はない。
ブームに乗りたがる層は、ブームに乗ろうとしている自覚がないことが多いようだが、周りに影響されずに、常に、己のそもそもの目標や目的をしっかり見つめ、把握しておくべきである。
ブームの時はみんなと一緒にタピオカを賞味するのは楽しかったかもしれない。しかし、ブームが去れば、本当に求めていたものではなかったことに気がつく。
あなたが求めているモノは何か。
周りに影響されずに、しっかりと見極めるべきである。
中学受験することそのものが、幸せや満足を保証するのではない。
これは私立中学受験でこそ顕著となるが、公立中高一貫校や国立大学附属校でも大差はない。
私立中高一貫校に進学することが、幸せや満足につながるとは限らない。
公立中高一貫校に進学することが、幸せや満足につながるとは限らない。
幸せや満足は、中学受験そのもや、中学受検そのものでは、買えない。
中学受検するなら、中学受験するなら、それにより、どのように幸せや満足を手に入れるのか、しっかりと検証すべきであろう。
みんなと同じは、必ずしも、幸せや満足を、保証しない。
あなたは、あなたに合った道を進むのが、よい。
あなたは、あなたなりの幸せを目指せば、よい。
これでも納得しない人のために別の説明を用意しておく。
ドルが高ければ、ドルを売りなさい。
円が高ければ、円を売りなさい。
ドルが安ければ、ドルを買うのもよい。
円が安ければ、円を買うのもよい。
しかし、
ドルが高い時にドルを買うのはリスクが高い。
ドルが高い時にドルを買っても満足しづらい。
今どうしてもドルが必要なのか、自問自答すべきだろう。
ドルは、株や金銀に置き換えてもよい。
ドルは、中学受験に置き換えてもよい。
ドルは、中学受検に置き換えてもよい。
この方が、分かりやすい説明になるだろうか。
ただ一つだけつけ加えておく。
中学受験でまったく成功できなかった受験生は、高校受験でも成功できない可能性が高いことだ。
過去にも説明してきたことなので詳説はしない。
高校受験に回るからと言って、小学生のうちは遊び惚けてもよいなどとは言っていないので、誤解のないようにお願いしたい。
むしろ、高校受験こそ、小学校高学年での取り組みが、明暗を分けることを知っておいてほしい。
なぜなら、全く取り組まない人と、しっかり取り組む人との差が、この時期に最も大きくなるからである。