[2022年10月3日]
適性検査を突破するだけの目的ではなく、社会を生き抜くためにも、時事問題から学ぶ意義は大きい。
ここで大切なことは、
「時事問題を学ぶ」のではなく、「時事問題から学ぶ」ことである。
「を」ではなく「から」である。
どこで何が起きたかを知るだけでは、ただ情報を消費しているだけにすぎない。
どこで何が起きたかを知るだけなら、文字が読めて、会話が聞き取れれば、誰にでもできる。
しかし、どこかで起きたことから何かを学び取ることは簡単ではなく、幅広い知識や教養を「総動員」できなければ、陰に隠れた背景や原因や理由をあぶり出すことや、将来に起こる可能性があることを予見することや、それに適切に対処することができない。
入試問題では、時事問題であっても、政治的な信条や、政治的な意見を問われることは、ほぼない。
ほぼないとしたのは、どこから政治的な信条や意見で、どこまでが政治的に中立な信条や意見かを判断するのが難しいからだ。
SDGs(持続可能な開発目標)が掲げる目標も、見方によっては政治的な意向が強く反映されている目標がふくまれると解釈できなくはない。
今、世界が注目している国際問題に「ロシアによるウクライナ侵攻」があるが、ここから学ぶべきことは何であろうか。
新聞やテレビやネット記事などでは、政治家や政治思想家の意見を紹介しながら「中国(中華人民共和国)による台湾(中華民国)進攻」に関連づけて語られることが多いが、こうした風潮も、「時事問題から学ぶ」上では大いに気をつけるべきだろう。
そこに、政治的な意図や、政治的なプロパガンダが、巧妙に含まれている可能性があるからだ。
「時事問題から学ぶ」際に大切なことは、科学的に客観的な態度であろう。そうでなければ、真実は見抜けないし、将来を見通せないからである。
「ロシアによるウクライナ侵攻」は多くの人を驚かせたと思うが、私自身も驚いた人の一人であった。
当初は、この時事を正確かつ客観的に理解することに苦心した。
そこで、多くの情報があふれる中で注目した点がいくつかある。
・ポーランドはなぜ開戦当初からウクライナ支援を声高に叫んだか
・ポーランドはなぜ多くのウクライナ避難民を積極的に受入れたか
・なぜアメリカは同盟国ではないウクライナを全面支援するのか
・なぜロシアはウクライナの反ロシア勢力をネオナチと呼ぶのか
・なぜロシアは米欧などがロシアの破壊を企んでいると感じるのか
・なぜロシアでオルガルヒ(財閥)オーナーの不審死が続くのか
・プーチン氏は過去20年間オルガルヒとどう向き合ってきたか
・米国国務長官のブリンケン氏のルーツはどこにあるのか
・ウクライナ大統領のゼレンスキー氏は実は何者なのか
・なぜアメリカは軍事支援はしても軍隊派遣はしないのか
・なぜ英は国境を接しないウクライナ支援に積極的なのか
・なぜ独仏伊はウクライナの軍事支援に煮え切らないのか
・今まさに起きていることで最も利益を得られたのは誰か
・これから起きることで最も利益を得られそうなのは誰か
これらを整理すると、今ウクライナで起きていることが、すっきり理解できる。
加えて、今後起こり得ることも、パターンに分けて概ね予想できる。
さて、
「時事問題を学ぶ」ことに大きな意義はない。
「時事問題から学ぶ」ことにこそ、大きな意義がある。
情報を入手し整理するだけなら、少しの根気さえ持ち合わせていれば、誰にでもできる。
入手し整理した情報から、何を学び取れるかが、重要なのである。
それ以前に、意図的に統制された情報だけを入手したり整理したのでは、情報を統制した勢力の思う壺であることを、忘れてはいけない。
学ぶことの目的の一つは、学ぶことによる効用の一つは、「騙されない」人になることである。
中学受験においても、高校受験においても、大学受験においても、「騙されない人」になることである。
一人社会人として、一人の大人として、一人の人間として、一人の生き物として、「騙されず」に生き抜くことである。
もちろん、騙されながら生きて、騙されながら死んでいくのも、個人の自由かもしれない。
ただ、塾生親子には、そうあってほしくはないと、願っている。