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三田学院

[2022年10月5日]

【都立中】隠された真意を見抜く

本日、衆議院の本会議で、北朝鮮のミサイル発射に対する抗議決議が全会一致で採択された。

その決議を受けて、首相が「我が国の平和と安全の確保、国民の安全安心の確保に一層万全を期すべく、防衛力の抜本的強化にも取り組んでいく」と述べたが、この発言を額面通りに受け取っていいのだろうか。

北朝鮮が発射したミサイルは、青森県付近の上空を越えて太平洋側に落下している。

日本を威嚇挑発するのであれば、ほぼ海上を通過する津軽海峡を経由するようなルートで発射する必要はない。日本の国土上空を経由するルートで堂々と打てばよいはずだ。

今回の4,500kmほど飛んだ長距離ミサイルよりも短い距離を飛んだミサイルを発射した際も、日本海側の日本の排他的経済水域外に落ちるように打っている。

ここから読み取れる北朝鮮の意図は、日本を過度に刺激しないような配慮をしながら、発射実験をしているといういう意図が読み取れなくはない。あるいは、日本は外交交渉の相手ではないと見下されている可能性もある。

今回のミサイルの到達距離は、米軍のグアムにあるアンダーソン空軍基地までの距離を想定した実験であろうことは、ほとんどの報道機関が報じている。

つまり、米国を威嚇することを目的とした発射実験であった可能性が高いということだ。

日本海側の日本の領海どころか、日本の排他的経済水域外に着弾する距離の発射実験は、沖縄になる米軍の嘉手納基地までの距離を念頭に置いた発射実験であることも報じられている。

ここでも、日本海における日本の排他的経済水域外の落ちるように配慮がされている。

北朝鮮の真意は明白ではないだろうか。

それに対し「国民の安全安心の確保に一層万全を期すべく、防衛力の抜本的強化にも取り組んでいく」と発言したのは、この真意を見抜いた上で、日本の安全保障が置かれている複雑な状況まで考慮したものならよい。

しかし、その言葉を額面通りにしか受け取れない人には、北朝鮮が日本を直接に挑発したり威嚇したりしているように伝わってしまうリスクがある。

ある民放などが街頭取材で、「怖いですね」とか「不安になります」とか「部品が落下したらどうしよう」などという、街行く人の感想を伝えていたが、それではますますこのミサイル発射の意味するところが正確に伝わらないのでないかと危惧してしまう。

この民放の取材班や編集スタッフは、事件の真相を理解できていないのではないかとも、心配になってしまう。

北朝鮮が米国を挑発すればするほどに、日本が過剰に不必要な反応をしているようでは、他の国際情勢にも適切に対応できないのではないだろうか。

北朝鮮が行った発射実験は国際社会の安全に対する挑戦であることには違いない。しかし、日本の安全を直接的に脅かすことに真意があったかどうかは、適切に見抜く必要があるだろう。

「国民の安全安心の確保に一層万全を期すべく、防衛力の抜本的強化にも取り組んでいく」

その言葉そのものには違和感はないが、北朝鮮のミサイル発射実験に対する政府の公式意見としては、むしろ国民に誤ったメッセージを伝えることになってはいないかと、危惧せざるをえない。

この北朝鮮の軍事行動は北朝鮮とだけ向き合っても解決しないことは多くの人が理解していることだろう。それは北朝鮮の後ろには、中国とロシアが控えているからだ。

では、どうすれば解決するのか、どうなれば解決するのか、すでに処方箋は書かれているはずだが、それを政府が国民に明確に示さないままでいることにも、懸念を感じずにはいられない。

北朝鮮や中国やロシアに日本政府の手の内を見られたくないからそのように発言したのならまだ良いが、国民の民意や意識まで意のままに操ろうとしているかもしれないとしたら、危うさを感じずにはいられない。

真意はしばしば隠される。

隠された真意を見抜けなければ、適切な判断はできない。

受検生は、長い文章や複雑な資料から、出題者の真意を適切に読み取れなければならない。

本質を見抜く力は、ただ勉強しただけでは、ただこどもらしく生活しただけでは、身につかない。

情報を整理して、
多角的に考察し、
深く考え抜ける。

受検生には、その訓練が必要である。


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