[2022年10月18日]
これから本当の意味で、都立中の時代が、始まる。
そう予感するのは、大学入試が大きな変革期を迎えているからだ。
もちろん、その先に、社会の大変革期が、控えている。
私立大学では、一般入試による入学者が50%を切ってきていることを、何度もお伝えしてきた。
国公立大学でも、一般入試以外による入学者が30%に迫ってきていることを、すでにお伝えしてきた。
もう、狭義の学力だけでは、大学入試を乗り切れなくなってきているのである。
学力試験だけで入学者を選抜している私立中高一貫校が、劣勢に廻る時代が、すぐ近くに迫ってきている。
私立大学では、推薦型選抜の一環として、附属校からの入学者を増やしてきたが、私立大学の競争力維持の観点からは、そろそろ限界を迎えるであろう。
将来に大学進学が保証されていたら、多くは、己の限界まで挑戦しようとしなくなる。
一般選抜以外で入学者を確保する方法の代表格が、指定校推薦選抜と総合型選抜である。国公立大学ではこれに共通テストを組合わせることが多いが、私立大学では共通テストなどの学力試験を組合わせないことがほとんどである。
この他に、公募推薦選抜も存在感を高めてきている。
代表格が上智大学である。
附属校を持たない上智大学では、概ね入学者の70%が推薦選抜による入学者となっていて、その主力が公募推薦である。
早稲田は附属校を持つが、指定校推薦選抜は古くから積極的に行っていて、今も盛んに指定校推薦で入学者を多く集めている。代わりに、総合型選抜は国際教養学部を除き、あまり大きな枠を持っていない。おもに附属校推薦と指定校推薦で入学者の約半数を集めている。
慶應大学は総合型選抜による入学者が多い私立大学の代表格であろう。特に湘南藤沢キャンパスの入学者は総合型による入学者が非常に多い。三田キャンパスも法学部や経済学部などで多くなってきている。
国公立大学でも総合型選抜や推薦型選抜の比率が高くなってきている。難関国立大学で最も高い比率になっているのが東北大学である。文科省の推奨する30%を超える勢いである。
新しい大学入試で栄冠を勝ち取れるのは、旧態依然とした解法暗記や丸暗記の受検対策ではない。
つまり、狭義の学力を誇る「狭義の偏差値猛者」は、今後劣勢になっていく可能性が高い。
代わりに台頭するであろう筆頭格が、公立中高一貫校である。ただし進学校型に限られる。
ほとんどの公立中高一貫校の入学者選抜で課される適性検査が、新しい時代の大学入学者選抜に最も有利な選抜者方法になっているからだ。
しかも、私立中学入試では問われない「報告書」が合否を大きく握っているし、適性検査作文では課題発見能力や課題解決能力が検査されるので、大学入試における指定校推薦選抜や公募推薦選抜や総合型選抜に、そのままつながっていく。
早い段階からの、適性検査対策を意識した、保護者による子育てや、受検生による自己研鑽が、将来の大学入試でも大いにアドバンテージとなる。
私立中高一貫校や私立高校は、公立中高一貫校よりも格段に宣伝広告が上手だから、多くの保護者や受験生は惑わされてしまいがちだが、公立中高一貫校の多くので行われているような、先進的な教育活動の取り組みには本質的には届いていない学校が多い。
多くは、国際教育や理数教育を前面に出してアピールしているに過ぎない。これからも「国際」や「理数」をアピールする私立学校が増えるだろうが、これらの多くは、世の中の流行りに乗っているだけで、新しい教育感や新しい大学入試とは直接には関係ない。多くは客集めでしかない。
公立中高一貫校の強みは、なんだかんだ言っても、優秀な教員の存在である。教員を目指す優秀な人材は、まずは公立学校教員になることを目指すからである。特に高校教員は公立学校の教員のレベルが高い。その中でも、公立高校教員の中から公募制により集められる都立中高の教員のレベルは高い。教員のレベルが高くなければ、高い教育水準は維持できないし、新しい教育の導入も進まない。
さて、公立学校の費用で名門私立なみの教育内容、などというキャッチコピーは、本質を見抜いていない。
公立中高一貫校の本当の魅力はそのレベルに留まらない。
新しい大学入学者選抜に、最も早くからフィットしているのが、都立中であり進学校型の公立中高一貫校なのである。
気がついている保護者は、もう気がついている。
都立中の大学進学実績がウナギのぼりを続けているのは、都立中の教育内容や進路指導が、新しい大学入学者選抜に合致しているからである。
今春、九段が、東京大学に推薦合格者を2名輩出したが、それ以前には、小石川が毎年のように推薦合格者を出していたが、これは私立の中高一貫校では、喉から手が出るほど欲っしても、手に入れられなかった進路実績である。
都立中は、京都大学の特色入試にも強い。
都立中や進学校型公立中高一貫校に余裕で合格できるような育て方をしておけば、たとえ残念になっても、大学入試で挽回できる可能性が高い。
ただし、単なる適性検査対策の「マネ」では意味はない。
私立中学受験のある有名プロ講師が、都立中は対策しても対策しなくても、合格率に差はないなどと言っているが、それは私立中型の受験指導をしても差がないということであって、都立中の対策の仕方を知らないからであろう。
適性検査は純粋な学力試験ではないから、教科スキルを伝授したり、問題ごとに解法を暗記させたり、出題パターンに慣れるような指導しただけでは、合格力はまったく上がらない。
そのことを理解できたことは立派だが、その先へ進めなかったことはお粗末としか言いようがない。
都立中は、私立中のような受験指導では、合格力は上がらないのである。適性検査の神髄は、「真の学び」を実践する力があり、「社会で役に立つ学力」を身につける力があるかどうかを、検査することにある。
ただ学力試験で高得点が取れるだけでしかない「狭義の学力」だけを検査しない。
地頭が良ければ何の対策をしなくても合格できると、地頭が良くなければどんな努力をしても合格できないと、そう思っている私立中受験指導者もいるようだが、そうした人は、地頭が良いだけではバタバタと不合格になるのが都立中入試であるという反証を、ただ知らないだけであろう。
ただ、自分の指導が役に立たなかったという「敗北宣言」にしか聞こえない。
話しを戻すが、ここは覚悟を決めて、将来の大学入試での成功を視野に、正真正銘の「真の学力」を獲得することを目指すべきだ。
もし都立中や公立中高一貫校にスレスレで残念になっても、その取り組みはムダにはならないし、むしろ、将来に新しい時代の勝者になれる可能性を高められる。
新しい時代の「二月の勝者」とは、都立中の合格者や、進学校型公立中高一貫校の合格者を、指すようになる日は、近い。