[2022年10月20日]
『学生時代に何に力を入れて頑張りましたか?』
就活生の間では、この質問は「ガクチカ」(がくちか)と呼ばれている。
新型感染症の世界的な蔓延で、国内でも大学などでオンライン授業が実施され、サークル活動やアルバイトなどが満足にできないまま就職活動に突入し、就職試験の面接などで、多くの大学生が自己アピールする材料がなく、困り果てているらしい。
かつての塾生の一人が今年大学4年生になり、就職活動のエントリー・シート(ES)の作成や、面接対策の準備で相談を受けたが、このかつての塾生も、そうしたことに大いに悩んだ一人であった。
テレビCMを頻繁に見かける、業界最大手の大企業に、無事に総合職として内定をもらえている。
『学生時代に何を頑張りましたか?』
九段の志望理由書や、楠隼の志望理由書には、「小学校6年間に取り組んだこと」とか、「これまでに頑張ってきたこと」をきっちり書いて、提出しなければならない。
だから、「ガクチカ」は、就活する大学生にのみが問われることでは、ない。
ボーッと大学生活を送ることしかできなかった大学生は、サークル活動ができなかったし、居酒屋などでアルバイトができなかったし、何も書くことがないと悩むようだが、ここで問われていることは、サークル活動やアルバイトの経験ではない。
企業の人事担当者や採用担当者は、その道ではプロだから、サークル活動の経験の有無や、アルバイトの経験の有無だけで、採用するかしないかなどを、決めたりはしない。
入社後に活躍する人材や、社会に貢献できる人材を求めているのだから、大学生生活を通して、どれだけ成長し、その成長がどれだけ企業や社会に貢献できるものであるかを、見極めたいのである。
九段や楠隼が「ガクチカ」を問う理由は、入学後にどれだけ真摯に教育活動や学校行事などに取り組み、6年間の学校生活でどれだけ成長でき、そしてその結果として、どれだけ社会に貢献できる人になれそうかを、見極めているのである。
塾の勉強を頑張りました。
受検対策を頑張りました。
習い事を数多くしました。
英会話教室に通いました。
中学受験を乗り切るために、多くが良かれと思って取り組むような内容は、さして評価に値しない。
数学オリンピックを目指して、算数や数学に没頭しました。
素晴らしいが、誰もが努力すればできることではない。そこまでできなくても合格は可能だ。
「ガクチカ」では何が問われているのであろうか。
それは「主体的かつ協働的に取り組むことができる力」である。
親が行けと言ったから塾に行った。
親がしろと言うから受検勉強した。
みんなが行くから習い事に通った。
親に言われて英会話教室に通った。
そんな主体性のない子が、自ら課題を発見し、自ら解決策を見つけ出し、自ら困難を克服し、自ら進んで社会貢献できるはずはない。
自ら進んで昆虫採集をし始め、
自ら進んで歴史の真相に迫り、
自ら進んで外国に興味を持ち、
そこで何かを発見し、そこから何かを学び取り、それを生きる力にできるかどうかが、問われているのである。
この差は、長い年月の中で、決定的に大きな差になっていく。
そのことを、企業の採用担当者や、学校の入試担当者は、知っているのである。
だから「ガクチカ」が問われるのだ。
大手予備校が総合型選抜の対策として、「経験プログラム」や「体験プログラム」を、年間100万円とか150万円とかで大学受験生に売っていることを知り、愕然とした。
それが、都立中を目指す小学生が取り組むような内容で、あったからだ。
ボーッと生き続けて、一般選抜では全く歯が立たず、推薦選抜では推薦がもらえず、総合型選抜では何もアピールできない、という高校生には、ならないようにすべきだろう。
それがそのまま、大人になった時の姿となる、蓋然性が高いから。