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三田学院

[2022年11月4日]

【都立中】国公立大学現役合格への道

国公立大学現役合格への道を説明しておこう。

毎年、多くの国公立大学受験生で繰り返されることが、共通テスト(一次)の得点が予定通りに取れずに、当初より平易な国公立大学へ、出願校を急遽変更する、という行為というか判断である。

多くの国公立大学受験生が、共通テスト(一次)で予定通りに得点できないことがあるのは、もはや常識だから、そうしたことが起こりうることは事前に承知しているはずなのだが、まさに本番を迎えた受験生や保護者の中には、受け入れられない人もいるようだ。

塾や予備校が十分に説明していなかったのか、あるいは、学校が十分に説明していなかったのか、あるいは、説明は受けていたのに聞き流していたか、説明は受けていたのに自分には関係ないと思っていたのか、説明を受けたのに理解できていなかったのか、受験生それぞれに、いろいろな原因がありそうだ。

大学受験に限らず、試験というものは希望通りに得点できるとは限らないものだ。多くは事前の見込みが甘いことで起きる。もっと言えば事前の自己評価が甘いことで起きる。

受験校選択において重要なのは、共通テストの得点結果ごとの対応を、複数のシナリオ別に事前に用意しておくことである。

想定+10%
想定+05%
想定±00%
想定−05%
想定−10%
想定−15%

緻密に予想しても、そこから−10%くらいなら、誰にでも十分に起こり得るから、事前に覚悟をしておくのがよいだろう。

想定を超えた場合は、受験校を変更する必要はなく、むしろ心に余裕をもって臨めばよい。ただし油断は禁物であることを忘れてはならない。

想定を下回った場合の選択肢は、二次試験の配点比率によって、変ってくる。

東京大学や京都大学や一橋大学は、二次試験の配点比率が概ね80%を占めるから、一次試験の得点が想定を10%程度下回っても、二次試験で十分に逆転可能であり、受験校を変更する必要はない。

あるとすれば、もともと二次試験での得点力に不安がある場合だ。それは、そもそも目標校の選択を誤っていたと言わざるを得ない。

大阪大学、東北大学、名古屋大学、九州大学、北海道大学は、二次試験の配点比率が概ね65%から55%なので、これも二次で逆転可能だ。

筑波大学、広島大学、お茶の水女子大学、神戸大学などは、二次試験の配点比率が概ね55%〜50%なので、これも二次で十分に逆転可能だ。

一次の得点が想定をかなり下回った時に、受験校を変更した方が安全なのは、二次試験の配点比率が概ね30%程度以下の、多くは中堅以下となる国公立大学である。逆に、一次試験でほぼ合否が決まるので、二次での逆転は難しい。

二次試験の配点比率が30%以下の国公立大学は、地方の国公立大学や、教育学部だけの国公立大学にほぼ限られ、首都圏にはほぼない。もちろん、学部や学科や入試方式によっては、一次でほぼ合否が決まる国公立大学が他にもない訳ではないが、難関国公立大学では希少である。

このため、一次で失敗して受験校の難易度を下げざるをえない場合は、実態として逆に一試験の配点比率が高い国公立大学から受験候補を選ばなければならなくなり、急斜面を転げ落ちるように、受験校のレベルを下げなければならなくなる。

そうならないためには、どうしたらよいか。

二次試験で優位に立てるように受験対策をしっかりしておくことである。

二次試験は得意科目での闘いになるから、得意科目をとことん伸ばしておくことが有利ということになる。

国公立大学を目指す受験生や受験生保護者が陥りやすい失敗は、一次試験、つまり共通テスト科目の得点力の向上を、優先してしまうことにある。

繰り返すが、難関国立大学になればなるほど、二次試験で合格か不合格かが決まる仕組みになっている。

また、二次試験で得点でできるなら、二次試験科目はもちろんだが、その他の科目も一次試験はそれなりに得点できるはずではある。

個人的な話しをして恐縮だが、国立大学の受験生であった当時、一次の社会で満点を取った。全問正解である。

一次の社会など、教科書と資料集と用語集を周回して完全理解し、一次対策の適切な問題集を1冊完璧に仕上げれば、満点が取れる。

あれこれ手を出す必要はない。ただし自分で計画的に進められないなら、塾や予備校の手を借りる方が安全かもしれない。ただ、大手予備校で、このような指導をしているかは、かなり怪しい。儲からないからだ。大手予備校に相談すると、大手予備校は儲かるが、受験生には極めて非効率な、別の対策を売りつけられるだろう。

この、ご紹介した一次で高得点を取る方法であれば、本格的な大学受験対策に入る前に、隙間時間を使って仕上げておける。国公立大学でも行われるようになった推薦選抜の「評定平均」(3年間のすべての教科の評価が対象になる)対策にもなるので、非常にお勧めである。

理科も、生物と化学なら、この手法が使える。物理は数学に攻略法が近いので、一次だけなら有効だが、二次の対策も必要になるのなら違う攻略法をおすすめする。

英語と漢文も一次で高得点を狙いやすいので、攻略しにくいのは、現代文と古文と数学になる。この3つは当日の問題との相性で得点が振れやすいので、満点や90%以上の高得点は狙わず、確実に取れる最低得点率を見込んでおくのが良い。事前にそのように戦略を立てておけば、一次の得点率の下振れリスクを最小化できる。むしろ、上振れが狙える。

何が言いたいかというと、一次と二次では闘い方が、全く違うということだ。

国公立大学の受験校は、どのような二次試験が課され、どれくらい得点できるかで選ぶのが適切である。

一次試験の成績しだいで受験校を変更しなければならなくならないように、二次試験の対策をしっかりしておけば、一次試験の得点で一喜一憂する必要はない。

二次試験科目の得点力を磨いておけば、滑り止めの私立大学も安全に合格を確保しやすい。入試科目が重複することが多いからだ。

くれぐれも、国公立大学の受験の仕方を間違ってはいけない。

一次で失敗して受験校を変更しなければならなくなったのは、国公立大学の入試制度が悪いからではなく、共通テストの平均点が低かったことが悪いのでもなく、国公立大学の合格の仕方を熟知していなかった受験生が悪いのである。

もう一つ、敗因となりそうなことを書いておこう。

多くの国公立大学受験生は、高校2年の夏期講習突入から本気モードに入るが、この本気モードとは、ここから受験勉強を開始するのではなく、ここから総仕上げに入るという意味である。

巷には、高2の夏から大学受験対策を開始しようなどというキャッチコピーが溢れているが、これの本当の意味を理解し間違えてはいけない。

高2の夏から総仕上げに入るためには、それまでの学習内容の基礎基本はもちろん、ある程度まで完成させておかなければならない。

高2の夏となれば、進学校であれば、高校入学者であっても、数学ならほぼ数学2Bがほぼ終わるくらいまで学校授業は進んでいるはずだし、高校英文法や高校英語構文などは、ほぼ終わっているはずだ。理科も基礎は高1で終わっているはずだし、高2の夏なら上級も終わりかけているはずだ。国語に学年はほぼ関係ないし、社会は学校のカリキュラムによっては、選択2科目とも授業が終わっている。

つまり、学校授業の進度に合わせて一次レベルの対策はほぼ一通り完成させておけば、高2の夏からの総仕上げは順調に進めることができるし、二次科目対策のレベルをもう一段上げる余地を確保できる。

これができていれば、一次で崩れる心配はなくなるし、高得点を狙えるので難関国立大学が視野に入ってくる。そして、二次対策に十分な対策時間を割けるので、安心して二次試験会場に向かうことができる。

国立大学は、難易度ゾーンごとに二次試験科目の出題傾向が大きく違ってくるので、直前に受験校を変更するのは得策ではない。

例えば、旧帝国大学では、文系であっても、二次でほぼ洩れなく数学が課される。しかし、中堅以下の国立大学の文系では数学と社会の選択になったり、もともと数学は課されない場合が多い。

つまり、一次の後になって急に受験校を変更すること自体に、大きなリスクがあるのだ。

中学や高校では青春を謳歌してほしいと願う保護者も少なくないようだが、それによって本来の学業が疎かになるようでは、本末転倒としか言いようがない。

国公立大学への合格から逆算すれば、青春を謳歌してばかりいられる余地は少ない。

青春を謳歌しても、必要な大学受験対策をぬかりなくできるなら、何も言うことはない。

ただそれは、産まれもった資質が相当高くなければ実現は難しいのではないだろうか。

そうでないなら、どちらを優先すべきかは、それぞれの受験生の責任において、判断すべきことであろう。

大学受験に関しての次回は、外部英語試験のIELTSとTOEFLなどについて説明しようと思う。海外留学で必須なELTISを含めてもよいし、大学により採用に偏りがあるが、TEAPやGTECを含めてもよい。一緒に攻略できる。

特に、IELTSは小石川などの都立中の英語指導でも採用されているし、難関国立大学受験生の併願校となる難関私立大学の多くで出願資格にもなっているので、ここを攻めておくことは有益である。おままごと英会話などでお茶を濁していないで、むしろ初めからスキップした方がよいが、この本格的な英語外部試験の攻略を目指して、幼いうちから対策を進めておくのがよい。

純粋な難関国立大学の受験対策の王道からは若干外れるが、実は、近年、それが大学受験の全般では大いに役立つようになってきているし、中高一貫生なら入学後の6年間で十分に攻略できるからだ。

特に難関私立大学の攻略において大いに役に立つことが多い。難関国公立大学の攻略を優先すると、併願私立大学の合格対策に時間を割けなくなりがちだが、この難点の穴埋めに有益なのである。

大学受験では、英語は文系も理系も必須になる。多くの私立大学では、英語外部試験の成績が一定以上の高得点なら、本番の英語試験を満点換算などにして、英語の入学試験を受けることさえ免除してもらえる。大学側も、英語独自問題の試験問題作成の労力を削減できるし、英語独自試験の採点をしなくて済むので、大学にとっても大学受験生にとっても、WIN−WINなのである。

逆に、英語外部試験で高得点が取れない大学受験生は、劣勢を覚悟しなければならない。

当面は、英検の準1級以上でも代用できなくはないが、いつまで代用できるかは定かでない。英検は日本のローカル資格なので、海外ではまったく通用しないからだ。

次回にと言っておきながら、踏み込み過ぎた。この辺りで止めておこう。

国公立大学への合格を目指すなら、くれぐれも、間違った対策をしてはいけないし、間違った受験校選択をしてもいけない。

国公立大学への合格は、中学受験や中学受検での成功よりも、はるかに、ハードルが高い。

そのことを忘れてはならないし、甘く見てもいけない。