[2022年11月17日]
私立大学附属校人気の過熱が未だに収まらない。
そもそも、都内私立大学の定員厳格が引き金になったが、その定員厳格化は緩和されることになったから、もはや中学入試や高校入試で私立大学附属を目指す、最大の理由はなくなったのだが、情報弱者が多いためか、遅れてブームに乗る人が多いためか、沈静化の動きはまだはっきりとは見えない。
ただ、いつか、ブームは去ることだろう。
定員厳格化の緩和を受けて、MARCHの偏差値は、軒並み緩和の兆しを見せており、この傾向はしばらく続くとみられる。最終的には、定員厳格化前の水準まで戻し、その後は少子化の影響で、名目偏差値は下がらなくても、実質偏差値は徐々に低下するだろうと予想する。
よって、附属校人気に乗った受験生親子は、割高な不動産を買ってしまった人や、割高な株式に投資してしまった人のように、残念な思いをする人が続出するかもしれない。
附属校人気と公立中高一貫人気が合わさって、都立小石川と慶應中等部を併願し、ともに残念になるような、何が目標で何が目的なのかがハッキリしない受験生親子まで登場して、事態の混乱を危惧せずにはいられないような状態が続いていた。
私立大学が、総合型入試や推薦型入試でほとんどの入学者を集めるようになってきていることは、何度も書いてきた。
早稲田も慶應も、入学者の約半数以上が、総合型か推薦型である。
上智に至っては、総合型と推薦型による入学者が、約70%を超える。
MARCHのほとんども、総合型や推薦型による入学者が約半数を超える。
一般型による入学者の割合が高い大学は、MARCHでは唯一、明治大学だけだ。ただ、明治大学の動きを追っていると、迷いがあるようで、今後は総合型や推薦型の比率を上げるかもしれない。
総合型や推薦型は、必ず単願や専願になるという誤解があるようだが、実際には必ずしもそうではない。
難関大学では上智大学は専願がほとんどで、慶應大学の総合型は第一志望を条件としているが専願とは明記されていない学部が多い。早稲田に至っては、何も制限がない総合型が多い。つまり併願ができるということだ。
この併願ができるということに大きなメリットがある。
早稲田や慶應の合格を持たまま、他大学を受験できるからだ。早稲田や慶應よりも魅力的な大学と言うのは限られるが、早稲田や慶應で手打ちをする必要がなく、さらに上に、例えば難関国公立大学や医学部医学科などに、挑戦できるというメリットがある。
MARCHではれば、上を目指せるメリットは、なおさら大きいかもしれない。さらに上がたくさんあるからだ。
附属校からMARCHに進学する権利を留保すれば、他大学への挑戦は原則できない。できるとすれば、医学部医学科などMARCHにはない学部や学科などに限られる。しかも類似の学部があれば権利を留保できないことが多い。
例えば、MARACHの附属校から、上智外国語学部を目指す場合、系列大学に文学部や国際学部があると、許可されないことがほとんどである。
つまり、MARCH附属校に進んでしまうと、それ以上の大学への進路を、自ら断つことになるのである。
一方で、附属校でない学校からMARCHを目指す場合、総合型と推薦型と一般型のいずれにも挑戦ができる。
一般型はもちろんだが、総合型や推薦型の多くでも、合格をキープしたままで、さらに魅力的な大学や学部に挑戦できるから、将来の可能性が、より高まることになる。
しかも、原則ほとんどが系列大学に進学する私立大学附属校に入学してしまうと、周りは系列大学への進学を希望する人がほとんどであるから、附属校ではない進学校のように勉学に気合が入らないから、自ら進んで伸びしろを放棄することになりかねない。
さらに、MARCH附属校の多くは、近年の人気過熱により、大学入試で合格するよりも難しくなっている。
つまり、かなり割高なのである。
もちろん、最終的にMARCHに進みたいが、大学入試で合格をもらえる自信がないという受験生もいよう。
そうし人には、中学入試、高校入試、大学入試と3回のチャンスがあることは、魅力的かもしれない。
しかし、大学受験で合格をもらえそうにない人が、附属中学や附属高校の合格をもらえる可能性は高くない。
中学入試か高校入試か大学入試のどれかで合格をもらえそうな人にとっては、大学入試で合格を目指すことがお得であるし、将来の可能性を広げることができるという点も考慮すれば、格段に合理的である。
今や、大学入試も大きく様変わりし、保護者の時代とは大きく違うものになっている。
かつて、難関大学や有名大学を目指す受験生は、年が明けてからの私立大学入試や国公立大学入試の一般入試で、挑戦校や最適校や安全校を組んで受験したものだ。
今や多くが、年内に最適校や安全校から、総合型や推薦型で合格をもらっておき、年明けからは、挑戦校や最適校の大本命校をに絞って一般入試に挑むという形式が主流になりつつある。
MARCHやMARCH未満の大学では、年内に総合型や推薦型で合格をもらい、そこで大学受験は終了というのが多くなってきている。つまりMARCH以下では一般受験組は少数派になりつつある。
年明けにすべてを懸ける受験生というのは、東大や京大などの最難関国立大学を目指すトップエンドの大学受験生か、総合型や推薦型でどこからも合格をもらえなかったローエンドの大学受験生ということになりつつある。
Fランク大学はもちろんだが、多くの私立大学では一般型選抜が機能しなくなってきているので、総合型などで合格を大盤振る舞いをして入学者を搔き集めている。
総合型や推薦型で年内に合格をもらおうとして、どの大学からも合格をもらえない受験生は、一般型でもどこからももらえない蓋然性が高い。もらえるとしたら、定員割れか、定員割れ気味の大学となる。そうした大学は、私立大学の約50%もあるから、大学生になること自体は、さほど難しくはない。
ほぼ全員が国公立大学を受験する正真正銘の進学校でない限り、多くの高校では、高校3年の11月か12月には、ほとんどの大学受験生が、進学できる大学を確保しているというのが、今の大学受験の実態である。
年明けまで進学できる大学が決まっていない大学受験生は、繰り返しになるが、トップエンドの一部と、ローエンドの中のさらにローエンドに属する受験生に、ほぼ限られるようになってきている。
つまり、言い換えれば、かつてのように一般型のみが主流であった時のように、高校を卒業する間際まで、進学する大学が決まっていないというような、極度の不安やストレスに満ちた大学受験ではなくなったのである。
よって、中学受験や高校受験で私立大学附属校へ進まなくても、多様化する大学入試で適切にふるまえれば、実力相応か、それ以上の大学から、入学を許可される時代になった。
大学全入とは、このことである。
MARCHは、AOか推薦で進学を決めるのが、附属校から進学を決めるより、難易度的にも経済的にも精神的にもお得だ。
公立小学校と公立中学校と公立高校を経由してMARCHを目指せば、保護者は老後の生活資金を失わずに済むし、受験生はさらに将来の可能性を広げることができる。
MARACHは、附属校から合格を狙うよりも、大学入試のAOか推薦で合格を狙うのが、断然お得である。
そのための準備を、ぬかりなく勧めるのが、よい。
もうすでに、総合型や推薦型で大学合格を目指す戦略については、過去の日記で説明しているが、書ききれなかったことを、いつか追加で書こうと思う。
それは、大学受験をどう闘うかは、中学受験や高校受験をどう闘うかにも関わるからだ。
もっと本質的な観点で、もっと長期的な観点で、中学受験や高校受験に臨むべきだからだ。