パソコン版を見る

三田学院

[2022年11月18日]

【大学受験】評定平均という悪魔

高校受験では、「内申」が、多くの受験生を苦しめる。

東京都の都立高校では、合否判定に占める「内申比率」は、受検する高校や入試方法にもよるが、30%〜50%である。一方で、東京都の私立高校入試では、ほとんどの受験生が選ぶ単願推薦や併願優遇の「内申比率」は100%または実質100%である。

高校受験における「内申」は、大学受験では「評定平均」と呼ばれる。高校3年間の全教科の評価の平均が「評定平均」となる。高校3年生の評価ではない。

私立大学においては、平均すると入学者の50%以上が、難関私立大学でも上智大学などは70%以上が、推薦型か総合型による入学者なので、「内申」あらため「評定平均」が、大学合格のカギを握っていると言えそうだ。

推薦型選抜においては、「評定平均」が一定水準以上あることが「推薦」を受けるための最低条件となる。この基準は、大学や学部や学科などにより違う。

難関私立大学や有名私立大学などでは、出願条件となる「評定平均」は「4.2以上」であることが多い。最難関大学では「4.9」や「5.0」の学部や学科もある。

国公立大学も「4.2以上」が多く、合格者の「評定平均の平均」は「4.5〜4.8」という大学が多い。国公立大学の推薦型は、推薦であっても多くが不合格になるので、出願条件を満たしただけでは合格できない。

出願条件の「評定平均」は合格条件ではなく、出願条件を満たした受験生の中での競争になるから、満点である「5.0」でも不合格はありうる。

私立大学の「指定校推薦」においては、通学する高校内で推薦獲得競争があるため、「指定校推薦」を受けられる基準の「評定平均」よりも「より高い評定平均」がなければ、最終的には推薦を受けられない。

私立大学の「公募推薦」や「指定校推薦」においては、特定の「評定平均」を満たしていることが出願条件となり、その上で書類審査や小論文審査や面接審査を加味して合否判断される。このため、ここでも「出願条件である評定平均」よりも、さらに高い「評定平均」が、「実質に合格可能な評定平均」となる。

ここでやっかいのなことは、「評定」の甘さ辛さが、高校ごとに、あまりにも大きいことである。

特に都道府県トップ校や、大都市の学区トップ校は、非常に厳しい評定がつく傾向にある。

逆に、、

正真正銘の進学校とは呼べず、自称進学校とも呼べないような高校の評定は、信じ難いほど甘いことが多い。

全国には、あまたの高校があるから、高校ごとに違う評定の甘さや辛さを、大学は適切に調整することができない。

そもそも、調整している気配がない。

大学受験を専門に指導している予備校や塾の知り合いに聞いても、「調整していない」とか、「調整していないと思う」とか、「調整していないとしか思えない」という回答しか、かえってこない。

つまり「調整していない」と考えるのが妥当である。

そうなると、高い「評定平均」を獲得しようとすれば、入学難易度の高い高校に進学したら、不利になる。

難易度が、高ければ高いほど、不利になる。

ここに「評定平均」の悪魔が潜んでいるのだ。

多くの受験生や多くの受験生保護者は、より難易度の高い高校への進学を希望することがほとんどであろう。

しかし、大学入試の推薦型選抜を想定すると、それは必ずしも有利だとは言えないのである。

むしろ、入学後に学内成績で上位、できれば最上位をキープできるような高校に進学した方が、より合格が難しい大学に合格できる可能性が高くなるからだ。

都内の進学校の多くでは、指定校視線枠はほぼ使い果たされてしまう。これは地方の進学校とは事情が大きく違う。

違いを生む最大の要素は立地と費用にある。都内の高校生は都内にある有名私立大学へは自宅から通学可能であるが、地方の高校生は自宅から通学できないので、寮やワンルームマンションに一人暮らしをして通わなければならない。費用が高額になる。

都内の難関私立大学に進学するよりも、地元の国公立大学か、都内なら都内の国公立大学に通う方が経済的に各段に負担が小さいから、優秀な大学受験生ほど、私立大学の指定校推薦よりも、国公立大学の推薦入試や一般入試を選好するので、地方の進学校では、私立大学の指定校推薦の枠がかなりの数で余る傾向にある。

一方で、都内の高校は、余らない。

つまり、大都市ほど「評定平均」は高くなければ不利になるということだ。

ただし、大都市は通学圏内で多くの高校が選べるが、地方は選べる高校の数が少ない。

そうなると、大都市圏と地方で、高校の選択の仕方が、変わってくる。

もちろん、すべて一般で勝負するなら、大都市も地方も関係ない。

しかし、今や私立大学の50%以上、国公立大学も30%を目標に、推薦型や総合型で合格者を決める時代になった。

評定平均との付き合い方は、大きく変わってきているのである。

この新しい時代の大学入試に対応するためには、「評定平均の悪魔」対策に、高校入学前から戦略的に取り組む必要がある。

目先のことばかりに、目を奪われていてはいけない。

どの中学に進むかよりも、どの高校に進むかよりも、どの大学に進むかが大切であるならば、中学や高校は、それを考慮して戦略的に選択しなければならない。

その基準は「より高い難易度」ではない。

ここでこそ、わが子に合った学校選びをすべきなのである。