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三田学院

[2022年11月25日]

【都立中】ESAT−Jの闇

都立高校入試が炎上している。

今年度から英語スピーキングの外部テストが導入されることが引き金となっている。

実施直前になって、都知事や都教育委員会や都教育長を相手に、住民訴訟が起こるなど、実に穏やかでない。

大学入試共通テストで頓挫した外部英語テスト導入の二の舞を、なぜ東京都は、都立高校入試で押し切ろうとしているのだろうか。

背景にあるのは、公立中学生の英語スピーキング能力が遅々として向上しないことにあると考えている。

小学校英語の教科化、中学英語内容の実用化、ネイティブ・ティーチャーの導入など、英語教育についてはさまざまな改革がされてきたが、結果が出ていないのである。

業を煮やした東京都は、高校入試で英語スピーキングテストを導入することにした。しかし、入試を変えれば問題解決になると考えたこと自体に甘さがある。本末転倒でもある。

日常生活で英語を話す機会がほとんどない人の多くにとって、教科として学び、入試範囲になるからというだけでは、外国語の運用能力は向上させることは難しい。

ちょとやそっと外国語会話教室に通っただけでは、ほとんど何も変化は起きないし、後にはほとんど何も残らない。

相当な努力をしなければ、外国語の運用能力は向上しないから、すべての高校受験生に課すのは、かなりのムリがある。

随分前から一部の私立高校では、英語外部資格の級や得点などで加点をしてきたが、これも一般的になることはなかった。多くは内申点不足の救済措置としてしか機能していない。内申点が十分なら英語外部試験の加点など必要はない。

そもそも、社会人になって、本格的に外国語の運用能力が必要になる人の割合が少なすぎる。だから、すべての人が外国語の運用能力を向上させようとは思わない。

しかも、社会で通用する外国語の運用能力というのは、高校入試で実施するような低いレベルではない。

そもそも、この点も十分に考慮されていない。

これは大学入にも言える。

外国語学部や国際学部などを目指す受験生でない限り、外国語の運用能力の取得にばかり、時間と労力と費用をかけてはいられない。

それ以外に克服しなければならないことは、山ほどあるからだ。

そこに、中途半端な英語外部試験が導入されれば、受験生でなくても、受験生の保護者でなくても、中止を求める大きな動きが起きて、不思議ではなかった。

本気で外国語運用能力の向上を目指すことを行政として行うならば、スイスの学生の外国語取得の仕方を参考にするのがよい。

スイスは、ドイツ語圏、フランス語圏、イタリア語圏の、大きく3つの言語を話す地域に分かれている。また、空港や鉄道駅やホテルやレストランや銀行窓口や病院などでは英語も日常的に話されている。

*ただし、郵便局の窓口では英語は通じないことが、ほとんどである。ドイツ語かフランス語かイタリア語を要求される。

学生たちは夏休みなどに、違う言語圏で、アルバイトやボランティア活動をして過ごす。それを繰り返すことで、母語以外の言語、つまり外国語の運用能力を身につけていく。

日本と同じように島国のイギリスでは、母語である英語以外の言語を話せる人は非常に少ない。そもそも英語が世界で通用するから、イギリスに来る外国人がほとんどが英語を話すから、その必要がないこともあるが、実は事情は日本と大差がない。

イギリスの初等中等教育現場で、フランス語やスペイン語や中国語の運用能力向上を本格的に身につけさせようとしても、一部の人には可能でも、ほとんどの人にはムリであろう。

日本とおなじく、教育行政予算をムダにする結果になると思う。

どうしても外国語運用能力を向上させたいのであれば、教育現場や入試制度に押しつけるのではなく、スイスの現場で行われているような環境を実現することの方が、最終的に安上がりで実効性があると考える。

朝から晩まで外国語漬けになるような環境の実現である。

外国語特区のようなものを作って、子どもから大人まで、外国語の使用のみが許されるような環境を整備するのはどうだろうか。

スイスの他、シンガポールなども参考になるかもしれない。

こでれこそ、生きた、使える、外国語が習得できる。

外国語の習得を、教育現場や入試制度に押しつけていても、遅々として実態の改善は進まないどころか、不必要な課題や問題を引き起こすだけである。

国民や都民に、ムダな時間と、ムダな費用と、ムダな苦労と、ムダな心労と、ムダな財政支出を強いるのではなく、教育行政の枠を超えた実効性のある取り組みを推進することを、強く期待する。

福島のイングリッシュ・ビレッジや、東京のイングリッシュ・ゲイトウェイのような施設や場所を、もっと多くつくってみるのもよいかもしれない。

ただし、英語漬けにならなければ意味はないので、半日とか1日とかの体験ではなく、数週間とか数ヶ月とかを、そこで過ごしたり、通ったりすることが、必要にはなるだろう。

兎にも角にも、日常生活で使わなければ、外国語会話の運用能力はつかないし、向上しない。

それが、この問題の解決策に、なるはずだ。

本末転倒は、そろそろ、やめにした方がよい。

このままでは、被害者が多くなりすぎる。


=お知らせ=

事前予告いたしました通り、12月から新年3月中旬頃まで、募集停止期間に入ります。

募集停止期間に入る前の11月中で、体験授業の実施が可能な残りの日程をお知らせします。

11月29日(火)
11月30日(水)

日数が限られますので、12月初から受講を希望されます方に、限定させていただきます。

また、1日1組とさせていただきますので、このお知らせと行き違いに、別の方のご予約が先に入りましたら、ご容赦ください。

体験授業をご希望されるご連絡をされた方には、こちらより確認メールをお送りしますので、ご確認の上で必ず返信をお願いします。

こちらからの確認メールに、返信がございません場合は、体験授業のご予約をキャンセルされたとみなし、次にお待ちの方にご案内をいたします。

こちらからのメールが、迷惑メールに振り分けられていることがございますので、ご確認をお願いします。

尚、ご予約をされます際は、「ご希望コース名」と「ご希望コースの募集基準等の充足状況」を、必ずご明記していただきますようお願いします。ご明記がございません場合には、ご予約はなかったものとさせていただきます。

12月1日以降の募集停止期間中も、体験授業の事前予約は承ります。ご予約の確認(確認メールによるコンファーム)が取れました順に、募集停止期間が終了したのち、体験授業の日程をご案内してまいります。

また、冬期講習や春期講習や夏期講習の外部募集は行っていません。塾生だけで実施いたします。

詳しくは「体験授業のお申込方法」と「募集停止期間のご案内」ページをご覧ください。