[2022年11月28日]
慶應義塾大学の総合政策学部と環境情報学部で出題される小論文のお題が秀逸である。
過去に出題されたお題を例示する。
・教育の主体はどこにあるのか。
・相関関係と因果関係の違いは何か。
相関関係と因果関係の違いについては、このスタッフ日記で何度も書いてきたので、読者の皆さんにはなじみがあるお題であろう。世の中には相関関係と因果関係を混同している人が多いので、ここを突いた出題には敬服する。
教育の主体はどこにあるのかを問うお題も、学びの本質はどこにあるのかを問うていて、小論文のお題としては核心を突いたものであり、実に興味深い。
この他にも慶應義塾大学の小論文には良問がそろっているので、公立中高一貫校の適性作文の作問者にとって、大いに参考にあるであろう。
鹿児島県立楠隼中学も、過去の適性検査作文で、核心に迫る出題をしている。
・人はなぜ学ばなければならないのか。
このお題に、小学生が適切に答えるのは容易ではない。
学ぶのは(勉強するのは)、入学試験に合格するため、希望する学校に入学するため、良い学歴を手に入れるため、大企業に就職するため、高い収入を得るため、幸せな人生を送るため、親にそう言われて育ってきた受検生は、このお題に正対できるであろうか。
そして、都立桜修館中等教育学校の適性作文が、さらに揺さぶりをかける。
・水を飲んで楽しむものあり、錦を衣て憂うものあり。
・出る月を待つべし、散る花を追うこと勿れ。
(江戸時代の学者「井上哲次郎」の著作より引用されている)
生活にこと欠かず、美味しい料理や飲み物が容易に手に入る、恵まれた環境で育った小学生には、意味不明のお題であろう。
欲しいモノはいつでも手に入り、待つことも惜しむことも知らない小学生には、合点の行かない理屈にしか聞こえないだろう。
適性作文や入試小論文では、何が問われ、どんな能力が試されているのであろうか。
その答えは、過去問にある。
小学生には大人のような社会経験はないから、自ら考える力が弱ければ弱いほど、大人の都合や、他人の意見に影響を受けやすくなる。
ところが、適性作文では、独自性のない意見や、誰もが書けそうな陳腐な一般論は、高く評価されない。論理性に欠ける意見や、論旨が飛躍した意見は、得点にならない。
そもそも、小学生には大人の都合は本来的には関係ないから、自ら考え抜ける力さえあれば、純粋にものごとの本質に迫ることができるはずだ。
自力で本当に本質を見抜いたのかどうかは、その考えに至った経験や体験を一緒に書かせれば、判別できる。
適性作文や入試小論文では、自力で本質に迫れる力がどれだけあるのかが、試されるのである。
慶應義塾大学SFCでは、英語と小論文だけの、入試方式が選択できる。
つまり、英語と小論文だけで、入学するにふさわしい受験生を、選抜できると考えているのだ。
入試英語は入試科目の中では最も努力が報われる科目でもある。慶應大学の安藤教授の論文を参照していただければ分かる。
入試小論文は、自力で考える力がどれだけあるか、そして、その力をどれだけ発揮しながら学んできたかを試すのに、最も適している。
継続して努力することができ、自力で考え抜ける力があれば、大学での学びに耐えられるだけでなく、本質を見抜き、課題を発見し、問題解決にも、つなげられるのだ。
今日の日記で書いておきたかったことは、適性作文や入試小論文が課される理由を正しく理解していただきたかったことと、どうしたら攻略できるかの方向性を伝えたかったからだ。
小学生の多くの保護者が思うほど、適性作文の攻略は容易ではない。
努力を間違えば、対策の方向性を間違えば、最初の45分が終了した時点で、不合格を呼びよせてしまうことになる。
適性作文を甘く見てはいけない。
適性検査を甘く見てもいけない。
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