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三田学院

[2023年10月10日]

【都立中】物価高と教育費高騰

目先の受験校選択で考慮すべきことは、物価高と教育費の高騰であろう。

教育投資こそリターンが高いと言われるが、ただ高い教育費を負担すしさえすれば、子の輝かしい未来が保証されるというものでもない。

今や都立中高一貫校(都立中)は、かつての難関国立大学附属中に並ぶか超える入学難易度になっていて、受験料や入学金や授業料が安いからといって、学力庶民が入学できるような学校ではなくなった。

中学受験率の上昇で、都心や都心に近い地域では学力上位層がこぞって私立中高一貫校に抜けてしまうようになると、地元の誰でも入学できる公立中学(地元公立中学)に子を入学させても大丈夫だろうかという心配は増幅されるようになる。

確かに、模範となる生徒や目標となる生徒は少なくなり、色々な課題を抱える生徒の比率が高くなるという懸念はある。それ以上に、易しい内容を時間をかけて学ぶ、地元公立中学の学校カリキュラムに対する不安も大きいであろう。

物価高や教育費の高騰で、地元公立中学への不安があったとしても、誰もが私立中高一貫校の、高額な入学金や授業料や設備費や行事費などを負担できる訳ではない。

もちろん、家計に余裕があったとしても、誰もが難関私立中高一貫校や都立中高一貫校に進める訳でもない。

家計に余裕がある場合は選択肢の幅が広がるから、保護者に冷静な判断力さえあれば、子に合った進学先は見つけやすいはずだ。しかし実態は子の実力に見合わない難関校受験向けの塾に通わせて、子の将来を潰してしまう保護者は後を絶たない。

子に実力がありながら、家計の都合で都立中高一貫校を目指させさせるしかなく、子の実力が都立中高一貫校合格には届かない場合の選択肢に、悩ましさを感じている保護者も少なくないことだろう。

都立中高一貫校の難関校や上位校の場合、合格の目安は、平均的な公立小学校の場合、クラスで上位1位か2位くらいまでの子である。中学受験が一般的でない地域の公立中学入学後に、オール「5」やオール「5」に近い通知表成績が取れそうな子といった方が分かりやすいかもしれない。

一般的な公立中学でオール「5」か「ほぼオール5」になる子というのは、小学校では「よくできる」が96%〜100%であった子が多い。もちろん、小学校で「オールよくできる」でも中学校で「オール4」や「平均4」は大いにありうる。

小学校で「よくできる」が91%〜95%の子の場合は「5」が半分くらい、「よくできる」が80%〜90%」の子の場合は「オール4」か「オール4+α」くらいが期待値(平均値)になる。「よくできる」が80%に満たない子の場合は、中学入学後に「オール4」以上を達成するには並みならぬ努力が必要であろう。

期待値(平均値)では、「よくできる」と「できる」が半分だと中学では「3」と「4」が半々に、「オールできる」は「オール3」になるケースが多い。「3」と「4」が半々だと都立高校では進学校は受験校としてまず選べない。「オール3」では都立高校普通科で選べる高校がほぼない。評判が著しく芳しくない都立高校普通科ならなくはない。校名を言えば「ああ」となるだろうが、ここでは校名は書かない。

日比谷高校などの都立高校の重点進学校に合格できる目安は、「オール5」か「ほぼオール5」である。難関大学への合格率では、都立高校重点進学校と都立中高一貫校の上位校以上とほぼ互角であるから、都立中高一貫校に入学し入学後も成果を出したいなら、小学校のうちから相応の通知表成績が必要ということになる。

公立中学で「オール4」か「オール4+α」で合格の可能性が残る都立高校進学校は、進学指導特別推進校のごくごく一部か、進学指導推進校の入学難易度下位校となる。

つまり、都立中高一貫校を目指すには、将来に都立高校進学校を目指すには、公立小学校の高学年で、少なくとも「よくできる」が80%以上を余裕を持ってキープできる実力が必要となる。現実的に高い確率で合格を目指すなら「よくできる」が95%〜100%であることが望まれる。

これを下回る子は、都立中高一貫校を目指しても残念になる可能性が高く、将来に都立高校進学校を目指しても実質的に出願できない可能性が高い。

もちろん、成長の時期には個人差があるから、都立中高一貫校に残念になっても、その後に大きく成長し、都立高校進学校に合格する子がいない訳ではない。しかし、それはごく一部である。最近になってやっとその認識が保護者の間にも広がってきたように感じる。

これも私立中学受験熱が高まっている要因の一つかもしれない。一般論として、子は中学生になると、親の思い通りには動かなくなるからだ。その点で保護者にとって子の高校受験は難しく悩ましい。

家計の都合で私立中高一貫校や私立高校は難しく、都立中高一貫校には届きそうにない子の場合、都立高校進学校を目指す以外に、どんな選択肢が残っているのだろうか。

一つ目は、人気が過熱していない「中堅私立中学へ特待合格」を目指すことだ。

入学金免除と中学3年間の授業料免除(1年更新をふくむ)で特待合格できれば、家計の負担は大幅に減少する。高校3年間は私立高校授業料実質無償化の制度を利用すればよい。高校受験を目指して大手塾に通わせるよりも安く収まる可能性がある。

ただ、フル特待での合格を目指す場合、思い切って実力よりも大幅に平易な私立中学を選ぶ必要がある。実力相応や実力よりやや下くらいの私立中からには合格はできてもフル特待合格をもらうのはほぼ難しいからだ。早い段階から十分な情報収集期間を用意して、特待でなら通ってみたい中堅や中位の私立中を探しておくとよいだろう。

中堅や中位の私立中高一貫校の中には、生き残りを懸けて、特待生に手厚い指導を注ぐ学校が少なくない。学校全体としてではなく、特定の生徒に特別に面倒見がよいのである。賛否両論がありそうだが、利用できるなら利用しない手はない。

ただ、国立大学押しが強かったり、総合型選抜や推薦選抜は使わせてもらえなかったりと、縛りがある可能性があるので、事前に十分な情報収集をしておく方がよいが、希望や方針が合えば、最強の選択肢になる可能性がある。

二つ目は、合格ボーダーがやや緩い「都外の公立中高一貫校」への合格を目指すことだ。

学内上位層や学内中位層は、都立中高一貫校や都立高校進学校に引けを取らない生徒が多く、進学校としての学習指導や進路指導が行われているが、都立中高一貫校などと比べて、合格ボーダーがやや緩い公立中高一貫校のことである。

この筆頭格が、全国募集の中高一貫校「鹿児島県立楠隼中学高校」である。現高1年生が卒業した後に「共学化」する計画があるので、現在は男子のみが出願可能だが、将来は女子にもチャンスが広がる見込みだ。

これに次ぐのが、茨城県立公立中高一貫校の一部だ。水戸第一や土浦第一や並木中等などは都立中高一貫校並みの難易度の進学校だが、卒業生の約半分が国公立大学に進むなど大学進学実績が良好な古河中等や、茨城県内では進学校の竜ヶ崎第一などは、楠隼に近いボーダー難易度である。

楠隼と違い全国募集ではないので、茨城県立中高一貫校を受検するには、茨城県に転居予定があるなど「出願要件」を満たす必要はあるが、取手や守谷などは都心への通勤圏であり、環境が良く住宅コストも安いので、転居を検討する価値はありそうだ。また、古河は遠距離通勤になるかもしれないが、取引先の出版社に勤務する担当者は古河市から東京都心へ毎日通勤しているそうなので、選択肢に入るのではないだろうか。

親子ともども、絶対に東京都内から一歩も外へ出たくないか出したくないなら、中堅私立中高一貫校のフル特待を目指すことになるだろう。適性検査型よりも4教科などの学力試験型の方がフル特待は大幅に取りやすくなることが多いので、適性検査型を主軸としながらも、学力試験型でも勝負できるような態勢で受検準備をしておくと、選択肢が広がるはずだ。

誤解のないようにめ申し添えるが、それは私立中学受験指導専門塾に通って準備せよということではない。むしろ、それでは目標は達成はしづらくなるだろう。

中堅や中位の私立中学にフル特待で合格するためには、難関私立中高一貫校の難問や超難問が解ける必要はない。そもそも出題されない。それよりも、標準問題や難しくはない応用問題を、高い正答率で解けるようにすることの方が圧倒的に有利だ。難関校向けの大手塾のテキストやカリキュラムは余計だしムダである。そもそも適性検査対策にも手が回らなくなり、本末転倒になるリスクが高い。


<お知らせ1>
募集停止期間が、例年は10月から3月までと長くなりご不便をおかけしていますが、今年度は可能な限り短くする方向で努力する方針です。今年度の募集停止期間は12月上旬から新年2月下旬までの3ヶ月間を予定しています。ただし受験生の合否状況によっては3月まで延長になる可能性はあります。

<お知らせ2>
試験導入します「同一通学校・同一学年・入塾一人まで」は、志望校や受験校が同一になることを妨げるものではありません。ご理解のほどよろしくお願いします。

<お知らせ3>
新年度が近づいてきましたので、徐々に募集基準を改定してまいります。都公立中高一貫校の募集基準は、小学校中学年までは模擬試験を受験する機会がまだ少ないことを鑑み、偏差値基準を廃止して、あゆみ基準のみに戻します。


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