[2023年10月19日]
都立中入試では「合格者の模擬試験における偏差値分布が広い」とよく言われるが、具体的にはどういうことだろうか。
都合よく解釈する人には「成績が良くなくても合格のチャンスがある」と聞こえそうだが、実はそうではない。
実際の追跡データを分析すると、合格者と不合格者が混在する偏差値帯が、非常に広い。
これだけ見ると「成績が優れなくても合格のチャンスがある」と受け止める人がいても不思議ではないが、そこに落とし穴がある。
・模擬試験の偏差値は「報告書点」を加味していない。
・限界まで対策してもう余力がない受検生と、能力にまだ余力というか余裕がある受検生が、混在している。
・運よく得意分野が出題された受検生と、そうでない受検生が、混在している。
・運よくほぼノーミスで解き終えた受検生と、そうでない受検生が、混在している。
・毎回おなじ模擬試験を受検し慣れている受検生と、そうでない受検生が、混在している。
都立中の受検は一発勝負である。
どういう受検生が合格しやすいかと言えば、この幅広い「ほぼ五分五分のゾーン」のさらに上のゾーンで、成績が推移している受検生となる。
ほぼ五分五分ゾーンというのは、合否どちらに転んでもおかしくないゾーンである。
本番で、不得意分野が出題されたかされなかったか、理解が曖昧な分野が出題されたかされなかったか、ミスをしがちな分野が出題されたかされなかったか、などでも合否が大きく左右される。
都立中の受検は一発勝負である。
本番で、実力を100%出し切れる受検生は、少ない。
より高い確率で合格を取りたいのであれば、このほぼ五分五分ゾーンの上に出なければならない。
追跡調査の合否確率が50%となる下限では、頑張ったのに、惜しくも残念となる受検生が多くなる。
追跡調査の合否確率が50%となる上限でも、頑張ったのに、惜しくも残念となる受検生は少なくない。
追跡調査の合否確率が50%となる下限から上限の幅は、偏差値で10ポイントくらいになる。
模擬試験が50%合否偏差値を表示している場合、ゾーンの下限を表示しているのか、上限を表示しているのか、平均を表示しているのか、確認しておく必要がある。
模擬試験の個人成績表の成績分布のデータを分析すれば推定できるはずだ。
確実に合格したい受検生は、この上限よりもさらに上で成績推移できることを、目標にすべきである。
これとは全く別に、塾主催(塾が問題を作っている)模擬試験は、偏差値も順位もあてにならないので、塾主催ではない模擬試験を利用した方がよい。
そうでなければ、今日の助言も、ほとんどが意味をなさないであろう。
塾が出題問題を作成する場合は、塾にとって都合が良いように、いくらでも操作できるからだ。
もう一つ、学力試験型の模擬試験も受けておくべきである。難関私立中向けでない公開模擬試験がよい。もちろん、ここでも塾が問題を作成している模擬試験は避けるべきだ。学力試験型の模擬試験でも相応の偏差値を安定的に取れる受検生は、合格精度が高くなる。
適性検査型の模擬試験だけは高偏差値で、学力試験型の模擬試験では高偏差値が取れない受検生は、適性検査型入試での合格精度が良くない。
学力試験型の模擬試験では高偏差値が取れるのに、適性検査型の模擬試験では高偏差値が取れない受検生は、そもそも適性検査型の入試には向いていない。
その場合は、学力試験型入試を行っている、私立中学や国立大学附属中学を目指した方が、成功するだろう。
学力試験型の模擬試験も、適性検査型の模擬試験も、とことん努力したのにもかかわらず、いつまでもさえない偏差値しか取れない受検生は、受検や受験とは別の、才能を発揮できる他の領域を探した方が、成功する可能性がある。手遅れになる前に決断する勇気も必要である。
模擬試験や偏差値は、適切に賢く、利用すべきである。
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