[2023年10月22日]
都立中受検生の親子にとって、倍率以上に気になるのは、難易度であろう。
まず、来春の難易度を予想する上で需要なキーワードを確認しておこう。
『強気の出願』
大学受験で最も顕著な傾向となりそうだが、中学受験や高校受験でも、強気の出願傾向が顕著となりそうな気配である。
最大の要因は、世界的に猛威をふるっていた新型感染症への警戒感が、低下したことである。
入試前に感染したらどうしよう、入試直前に感染したらどうしよう、入試当日に発症したらどうしよう、という懸念が後退したことが大きい。実際の感染者数の推移よりも、心理的に懸念が後退したことが大きく影響する。
大学受験や中学受験などには、それぞれに個別要因があり、大学受験においては2年連続で共通テストのボーダーが下がったこと、私立中学受験においては、感染症懸念から大手塾志向が強まっていたことなども要因となる。
共通テストのボーダーが下がったのは難易度が下がったのではなく、共通テストの難易度が上がり得点率が下がったためだが、高校生であってもそこまで分析できていない受験生が多いようである。
中学受験で大手志向が強まった背景には、感染症への強い不安感がある。漠然とした不安が強まると、人は安心材料を強く求める心理が強まる。そこで大手志向が強まる。一方で、大手塾や大手予備校は難関校の合格者数が増えることが収益につながるから、強気の出願は大歓迎であるし、自己の都合で強気の出願を煽るので、多くの受験生親子は、気がつかないままに、それに載せられてしまうのである。
前置きが長くなってしまったが、都立中受検においては、さらに複雑な要因が働いて、個々の受検生親子には非常に予想しずらい動きが起る可能性が高い。
キーワード「強気の出願」は、都立中受検にも影響を与える。
しかし、それだけではない要因が状況を複雑化させる。
まず、来春に要警戒が必要な都立中は、都立中10校+九段Bの中に、少なくとも4校ある。
模擬試験の志望校登録状況や、大手や中堅や中小の塾の動向や、地域別の動向などを調査した結果、現時点においては、この4校はが昨年よりも激戦になる可能性が高いと見込んでいる。
まず、全体として強気の出願が起るが、これは個々の受検生親子には自覚がないことがほとんどだ。対象校が11校と限定される中で強気の出願が起きれば、最も影響を受けやすいのは難易度中間帯の都立中となる。
この傾向は、私立中学受験において、顕著な結果として、すでに発生している。
強気の出願は上位校にも影響があるが、もともと最難関なので、強気の出願によって難易度が高くなったという感覚にはなりづらく、中堅校の難化の方が、肌感覚としては強く感じやすい。
難関都立中は、都立中受検生以外からの影響の方が、大きくなりそうだ。
私立中学受験生の強気の出願傾向の影響である。強気の出願をしても合格可能性が上がるわけではない。むしろ下がる。難関私立中を2月1日や2日に受験して、不合格になったか合否不明の状態の私立中受験生が、ダブル出願しておいた難関都立中の試験会場に雪崩れ込むリスクがある。もちろん、おなじ3日に入試を行う私立中学や国立大学附属中にも流れるが、昨今の物価上昇などをふまえると、今春は難関都立中に流れ込む難関私立中受験生が多くなる可能性があることを考慮しておく必要がある。
私立中学の授業料は、年度ごとに改定されることがほとんどなので、今提示されているの金額は、実際の入学時には改定になる可能性がある。加えて、2年次以降の授業料等も物価変動に合わせて改定になる可能性がある。
これに加えて、家族の生活費も高騰し続けるリスクもある。
経済情勢に感度が高い私立中学受験生の保護者は、そうしたことにも敏感に反応する可能性がある。
世間一般と比べれば高収入な家庭が、物価高に敏感に反応すれば、学費が安いことを歓迎する都立中受検生世帯の夢を、圧迫することになりかねない。
整理しよう。
難関都立中は難関私立中受験生の強気の出願の影響を強く受けて難化するリスクがある。
上位都立中は都立中受験生全体の強気の出願の影響を強く受けて難化するリスクがある。
このうち、都立中受検生にとって、最も警戒すべきは、上位都立中の難易度変化である。
繰り返しお伝えするが、難易度と倍率は直接には、直接的な関係がない。
どの上位都立中の難易度が変化するかは、倍率からだけでは予想できない。
では、どの都立中が激戦になるのか。
すでに、通塾生には口頭で学校名を上げて説明してあるが、まだ出願前であり、実際の都立中受検に影響を与えてはいけないので、この日記では学校名は書かない。
塾生の保護者には、来週以降に、学校名を入れて文書などで案内する予定である。
タイムラグを設けたのは、それぞれの塾生が、自力で考えて、自力で判断できる力を、高めてほしいことと、重要な情報を保護者に伝達できる力を高めてほしいからである。
ちょっと意外な都立中が、来春は激戦になる。
ちょっと意外だと感じたのは、私だけかもしれない。
データは、先入観なしに、客観的に分析すべきである。そうしなければ判断を誤る。ただ、ちょっと意外な結論になることは、データ分析の醍醐味でもある。
もちろん、それが受検生にとって、深刻な分析結果になることがあることは、十分に認識し承知している。
繰り返すが、強気な出願が良好な結果につながるとは限らない。むしろ客観的には不幸な結果につながりやすい。しかし、過度に弱気の出願をする必要もない。己の実力を、冷静かつ客観的に、見極められて、そして適切な出願ができた受検生親子が、幸せな結果になる可能性が高い。
それは、今も昔も変わらない。
受験における普遍の真理である。
にほんブログ村
にほんブログ村