[2023年10月30日]
東京都不動産鑑定士協会がホームページで公開している不動産価格情報が興味深い。
地価を路線価格と実勢価格で地図上に表示していて、クリックすれば詳細な情報が得られる。
特筆すべきは、昭和と平成にまたがる不動産バブル期からの時系列情報も得られることだ。
サンプリングしてみると、想定内なのか想定外なのかは別にして、示唆的な状況が浮かび上がる。
東京都心の住宅地に驚異的な地価上昇が見られる一方で、東京郊外や東京近郊の住宅地は下がり切ったまま横ばいで上昇はしていない。人気の住宅地や新線開通で住宅地化した地域を除き、郊外や近郊の住宅地価は、バブル崩壊後の安値のままに放置されているのである。バブル崩壊後の安値を更新し続けている地域も多い。
日本経済は、長いデフレ経済から抜け出そうとはしているが、インフレヘッジ機能があるとされてきた不動産は、貨幣価値の下落分は価格上昇したとしても、需要減による付加価値の低下から、かつてのような資産価値の上昇は期待しづらい。
東京近郊の中高一貫校や大学などを訪問した際に、周辺地域を散策して廻ることがあるが、駅に近いエリアでさえも、空き地や空き家が目立つことが多い。割高感がなくなっても買い手がつかないようだ。買い手が少ないことが、つまり需要が少ないことが理由であろう。
少し脇道に逸れる。野生動物が人里に出没する事件が頻発していて、多くは地球温暖化や異常気象が原因ではないかと解説されているが、最大の原因は人間の生息地域(里山)の境界線が後退していることも原因だと考えれなくはない。人間が頻繁に往来するエリアには、野生動物は警戒して立ち入らない習性があるからだ。
話しは戻り、人口減少は、農村地帯や地方都市で深刻であるが、その余波はすでに大都市圏にも波及しつつある。
これから本格化する都市部の人口減少をふまえれば、近郊や郊外の住宅地はさらに閑散としていくだろうと思われる。
人口が減少すれば、小中学校だけでなく、高校も統廃合が進むと考えておいたほうがよい。
東京都教育委員会は今月、令和6年度の都立高校の募集人数と学級数を公表したが、4学級増の14学級減で、ネット10学級の減とした。教室近隣では、都立三田高校が1学級(40人)減となる。
公立中学校の中学3年生の地域別人数増減に合わせて、都立高校の募集人数は弾力的に変更されるので、周辺の中3人口が一時的にでも増えれば学級増はありうるが、全国的な人口減少のトレンドを踏まえれば、増減をくりかえしつつも、募集人数は減少傾向が続くだろうと考えられる。
人口が減少すれば、公立高校に入学しやすくなる、とは限らない。
私立中学や私立高校も例外ではない。受験生人口が減少すれば、統廃合を繰り返しながら募集人数を絞っていくしかなくなる。改革や対策が遅れれば、経営が厳しくなり、教育委員会から是正勧告を受けることになる。いずれにしても募集人数を減らしながら対応しなければならなくなる。
都立中高一貫校の定員増を望む声があるが、人口動態をふまえれば、容易には対応できないことは自明である。
しかし、人口減少が深刻化して、公立高校だけでなく公立小中学校を含めて運営が厳しくなれば、すでに始まっている公立小中学校の「小中一貫校化」の流れの中で、地域学校としての「公立小中高一貫校」や「公立中高一貫校」が増設になる可能性はある。
実際に、愛知県は第二次公立中高一貫校設置計画の中で、進学校型ではない公立中高一貫校の設置を予定している。
もちろん、こうした地域公立学校型の公立中高一貫校は、現存する都立中高一貫校とは、まったく別タイプの学校になることは、想像に難くない。
教育行政における、学校設備や学校教員などの効率的な配置や利用の一環として、設置が進むのである。
すでに、島嶼部や、へき地などには、こうした事例は数多くある。
進学校型の公立中高一貫校や私立中高一貫校の存在理由は探すまでもないが、進学校型ではない公立や私立の中高一貫校の存在意義を定義するのは難しい。入学希望者の要望とは違うものになるかもしれないことだけは、覚悟しておく必要があろう。
現状のニーズを鑑みれば、進学校型ではない公立中高一貫校の未来は明るくない。進学校型ではない私立中高一貫校も存続が厳しくなっていく可能性が高い。多くは生徒数の減少で存続できなくなるかもしれない。
このご時世でも高校募集を停止しなかった、私立開成中学高校や私立巣鴨中学高校の判断が、ふたたび脚光を浴びる日が来るのかもしれない。
高校募集を停止した難関や名門の中高一貫校が、中学での生徒募集が厳しくなると、意図せずまた高校募集を再開しなければならなくなるかもしれない。
ただ、そうなる頃には、日本の人口減少は、さらに深刻化していることであろう。
そこには、想定外の風景が、広がっているに違いない。
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