[2023年12月11日]
私立高校授業料無償化の所得制限撤廃や、3人以上こどもがいる場合の大学授業料無償化と、一聞すると私立中高一貫校や私立高校がお得になったように感じられる政策が次々と打ち出された。
メディアでは早くも、都立日比谷高校などの都立高校が凋落するのではないかとか、都立中学の人気に陰りが出るのではとかいった論調が見られるが、よく考えてみれば、そうではないことに気がつくであろう。
まず都立高校であるが、名だたる名門私立高校のほとんどは高校募集を停止しており、高校受験で都立日比谷高校のおもなライバルは、筑波大学附属高校や東京学芸大学附属高校などの国立大学附属高校となっていて、私立高校進学校でライバルとなるのは、男子校の開成高校くらいしか残っていない。しかも定員は100人しかない。
早稲田大学高等学院や慶應義塾高校や慶應義塾女子高校なども難易度的には競合しそうだが、こうした私立大学附属校はそのままエスカレータ式に系列私立大学に進学することが前提となっていて、難関国公立大学や国公立大学医学部などを目標としている人がほとんどとなる都立日比谷高校などの都立高校進学校とは完全には直接的に競合しない。
もし競合するとしたら、渋谷学園幕張高校などになろうが、都立高校進学校にも合格したら、都民の多くは都立を選ぶのではないだろうか。
次に都立中学であるが、教育費的には中学3年間の授業料が完全無償となることのアドバンテージは依然として大きい。加えて合格のための受験対策費用も私立中学進学校に合格するための費用に比べれば安いことの魅力は私立高校授業料無償化後も継続する。
さらに、都立中を目指す受検生親子は、都立中の教育内容に強く惹かれているということもあり、費用差が小さくなったくらいでは志望校を変更しない受検生が相当数残る可能性がある。中高一貫化前から名門都立高校であった都立小石川や都立両国への強いあこがれば、公立中高一貫化でも衰えなかったし、私立高校授業料無償化程度では大きく揺るがない可能性が高い。
ただ、まったく影響がないとまでは考えにくいので、もし巷で懸念されているようなことが少しでも起これば、都立中や都立校を目指す受検生にとって、それはむしろチャンスになると考えられる。
都立日比谷高校も、都立小石川中等も、他の都立高校進学校も、他の都立中高一貫校も、すでに入学難易度がかなり高くなっているので、私立授業料無償化などで多少難易度に緩みが生じるなら、都立高や都立中を目指す受験生には、むしろ朗報となろう。
少し視点を変えるが、注目すべき点は、私立高校授業料無償化の所得制限撤廃や、こども3人以上世帯の大学授業料無償化で、もっとも恩恵を最も受けるのは、実は高所得世帯であるということだ。
そもそも、年収910万円以下の世帯では私立高校授業料はすでに無償化されていた。また、こどもが3人以上いる世帯は高所得世帯など家計に余裕がある世帯が多かった。
都や国の政策を批判するつもりはないが、コロナ禍や物価高への対策としての低中所得者向けの支援はこれまで行ってきたので、高所得者向けにも支援を拡充するというのが、今回の一連の政策の神髄と解釈すべきであろう。
なぜそうするのかにも理由がある。現在物価高で先送りになっているが、大規模な増税が控えているからだ。
増税が行われるのは、まずは巨額の財政赤字を削減していかなければならないからだ。財政赤字はいつまでも放置はできない。そして、人口減少に伴う税収不足を長期的に補う政策が必要だからだ。さらに、国際情勢の大幅な悪化に伴う防衛予算の増額分を賄わなければならないからである。
所得増税すると実額では高所得者層の打撃が最も大きくなる。高所得者の打撃が大きくなれば高額商品などを中心に消費支出への影響が大きくなる。そもそも所得が高い人ほど消費額は大きく消費税負担額も大きい。消費支出が伸び悩めば経済全体への影響が大きくなる。経済がダメージを受ければ税収も減少するし、困窮世帯への支援も十分にできなくなる。
だから、高所得者の支出を支援する必要があった。
それが、都の私立高校授業料無償化の「所得制限撤廃」であり、国の3人以上こどもがいる世帯の大学授業料無償化の、真の狙いなのだと考えるべきであろう。
都立日比谷高校や、都立小石川中等は、多くの世帯のご子弟にとって、これからも魅力的であり続けることになるだろう。
都立高校や都立中学の魅力には影響はないのだから、余計な心配はせずに、都立高校や都立中学を目指し続けてよい。
<お知らせ1>
「資料請求」をいただいた方へご案内します。かねてよりご案内の通り、資料の送付は行っておりません。資料をご希望されます場合は、教室入口扉の外側に、お持ち帰り用の資料をご用意していますので、ご自由にお持ち帰りください。ノックやインターホン呼出の必要はございません。むしろご遠慮をお願いいたします。
<お知らせ2>
「お問い合わせ」をいただいた方へご案内します。お電話による案内や回答は行っておりません。お知りになりたいことがございましたら、具体的にご記入された上でお問い合わせください。
「お問い合わせ」される際も、ご希望コース名の他に、募集基準と募集期限の充足状況をご明記くださいますようお願いします。ご記入がない場合は対応をいたしません。
<お知らせ3>
ご入塾をご検討されていらっしゃる方は「体験授業のお申込方法」をご覧になられてご連絡をお願いします。通塾受講をご希望される方はもちろんですが、在宅受講をご希望される方も教室における体験授業をお受けいただいております。
にほんブログ村
にほんブログ村