[2023年12月12日]
首都圏中学受験の過熱がそろそろ終焉を迎えるのではないかとの見方もあるが、令和6年は、想定外の要因から、大激震の年になりそうな気配なのである。
要因は、私立高校授業料無償化の所得制限撤廃や、3人以上こどもがいる場合の大学授業料無償化、ではない。
九段の男女合同定員化や、都立中の男女合同定員化、でもない。
日銀の金融政策の大転換である。
長く続いた異次元金融緩和が、終わりを迎えようとしているのである。
金利上昇が家計を直撃する。
増税より先に家計を直撃する。
授業料無償化などを呑み込んで家計を直撃する。
そうなると、最も影響を受けそうなのが、変動金利で住宅ローンを組んでいた人と、これから住宅ローンを組もうとしている人になるだろう。
首都圏の新築戸建住宅や新築マンションの価格はバブル期を超えるような高値になっていて、これまでのように低金利で住宅ローンを組めなくなると、住宅市況に大きな影響があるだけでなく、金利上昇の影響を受ける世帯が激増する可能性があるので、教育費に回せる資金が大幅に減少する可能性がある。
30年前のバブル崩壊時には、政策金利引上(金融引締)に転じた後、数ヶ月後には株価下落が鮮明になり、数年後には地価下落が鮮明となった。株価と地価の下落開始タイミングの差は流動性の違いからくる。株はすぐに売れるが、不動産はすぐには売れない。取引実績がデータとなるからタイムラグが生じるが、流動性を考慮した本質的な下落のタイミングはおなじと考えた方がよい。
株価下落や地価下落は、富裕層ほど実額ベースでの損失は大きくなるが、もともと生活に余裕がなかった中間層や貧困層の方が生活への悪影響は大きくなる。
これとは別に、受験対策指導塾では静かに地殻変動が起きている。集団指導型の大手塾が生徒募集に苦戦する中で、完全個別指導型の大手個別指導塾が活況を呈していることだ。
集団指導では、ほとんどの受験生は成績が伸びないことが、広く知れ渡ったこともある。
そもそも大手集団指導塾では、成績トップ層しかまともに成績が伸びて行かない。それは今に始まったことではないのだが、中学受験が大衆化したことで、より鮮明になったのである。
では、大手個別指導塾では成績が伸びるのだろうか。
かなり怪しい。
生徒数を伸ばしている大手個別指導塾だけでなく、ほとんどの個別指導塾では、学生アルバイト講師やパートタイムの素人社会人講師の比率が高い。学生アルバイトが約80%で、素人社会人講師が約20%、ということが一般的だ。
集団指導の授業についていけないから、個別指導に転塾したり兼塾したりしても、劇的に成績が改善するとは考えにくい。集団指導塾で低迷しているままの状態を抜け出したいのだろうが、受験指導が素人の学生講師や社会人講師に、劇的に成績を向上させられる指導力があるとは考えにくい。
しかも、授業料は非常に高い。週1回80分の授業料で月謝が3万円〜4万円と高額になる個別指導塾が多い。週2日以上は単純に回数倍になるから、2教科で6万円から8万円が相場となる。
受験教科のすべてとなる、4教科や5教科の指導を受ければ、月謝は15万円から20万円になる。マチ塾というか地元密着中小塾の、5倍以上の授業料相場だ。
しかも、学年が上がるほど高くなるシステムなので、高校受験生や大学受験生は、さらに高額になる。
それでも活況だということは、受験市場が過度に加熱していることを物語っているのではないだろうか。さほど遠くない将来に、いったん崩壊する可能性がありそうだ。
その引き金の可能性の一つが、日銀による金融政策の対転換である。
大手集団指導塾の生徒数が頭打ちし、大手個別指導塾の生徒数増加が一巡した後に、沈静化に向かう可能性がある。
塾選びは、ふたたび、原点に戻る。
有名だから、大手だから、生徒数が多いから、ではなく、わが子に合っているから、わが家に合っているからという、基本と原則に沿った塾選びに、回帰していくことになるだろう。
環境変化と、意思決定の変化には、タイムラグがあることが多いから、賢明な層はすぐに動いたとしても、大多数は遅れて動くから、全体の大きな動きとなるのは、早くても、中学受験なら新小4あたりから、高校受験なら新中1あたりから、ということになるだろうか。
自分では判断できず、周りの様子を見て動く層は、トレンドからさらに遅れるだろうから、激震はさらに後まで続くかもしれない。
しかし、塾選びが再び原点に戻ったとしても、巨大ショッピングセンターや巨大ショッピングモールに駆逐された商店街の零細商店のように、大手塾の台頭で多くのマチ塾が姿を消してしまったので、受験生親子の中には路頭に迷う人がいるかもしれない。
そこへ、大手塾が、新たな業態を展開して、次なる顧客の囲い込みに邁進することであろう。
<お知らせ>
募集基準の在り方を、徐々にではありますが、見直してまいります。
都立中の長く続いた合格難易度の上昇で、都立中の募集基準が厳しくなり過ぎてしまった点を、徐々に見直します。
これまで以上に指導内容を改善して、合格指導を充実させ、見直しによる影響を最小限に抑えてまいります。
都立中だけでなく、今回の見直しに合わせて、私立中学受験や、高校受験や、大学受験の募集基準の見直しも、行うつもりです。
これまでのご愛顧への感謝の気持ちを大切にして、これからも受験指導に励んでまいります。
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