[2024年6月7日]
今春の入学者から男女別定員を廃止した九段だが、適性検査型模試の追跡調査結果や有名中学受験模試(おもに私立中学が対象)の偏差値の変化が明らかになる中で、興味深い状況が浮かび上がってきた。
まず、模擬試験の男女別の偏差値比較であるが、男女別「結果偏差値」が同一になった(男女別定員廃止前は違っていた)。これは一見すると納得できることのように思えるが、男女で報告書点や適性検査得点率が全く同じということはありえないだろうから疑問点が残る。模擬試験の偏差値は報告書点を加味できていないはずだから、男女で報告書点が違えば偏差値が多少は違うことは起こり得るはずである。それとも、合格者の報告書点と適性検査得点率に男女でまったく違いがなかったということだろうか。
次に、年度別の偏差値比較であるが、男子の偏差値が上昇したことは理解しやすいが、女子の偏差値まで上昇していることに疑問が残る。男子の偏差値の上昇に合わせて女子の偏差値を忖度して合わせて上げたのではないかと疑いたくなる。
合格者の男女別の一般的な傾向としては、男子は報告書点低めで適性検査点高め、女子は報告書点高めで適性検査点低めとなるだろうから、男子の偏差値が高めに出る方が自然なように思う。それとも、ハイレベルな闘いなので、男女ともに報告書点が高く適性検査得点率も高くなければ合格できなかったということだろうか。それならそれで納得できる。
事実、九段(九段B)の適性検査の追跡調査による合格者最低点は前年よりも大きく上昇している。
男女別定員廃止を前提に、女子は合格精度が上がると期待して他の都立中ではなく九段を選択し、男子は実力を自認する受験生が九段に高い比率で残ったのであれば、十分に起こり得ることではある。
しかしこれは来春の都立中10校の男女別定員廃止の際には分散されるので、合格を競う受検生の全体としての実力がほぼ変わらないのであれば、九段のような特殊要因は起こらない。
男子の難易度(偏差値)が上昇し、女子は前年並みか若干の難易度(偏差値)緩和と予想するのが妥当であろう。
かく乱要因としては、難関私立中受験生が都立中併願を強めることである。折しも大幅な物価上昇と実施賃金の減少が2年以上続いているので、もともと家計支出額が大きかった富裕層や準富裕層こそ、金額が大きくなる教育支出を切り詰める傾向が強くなる可能性があるからだ。ただ学力試験型の対策をしてきた私立中学受験生が、つけ刃程度の適性検査対策で互角に闘えるとは思えないので、御三家や最難関レベルのハイエンドな受験生がどれだけ適性検査型公立中高一貫校への併願を強めるかにもよるだろう。
学力試験型で対策をしてきたのであれば、2月3日は学力試験型の国公立中学を併願した方が精度が高く賢明であることは冷静に考えれば分かるはずだからである。
いずれにしても、九段をふくむ都立中を狙うのであれば、まず報告書点のハンディはかかえないように低学年のうちから準備すべきである。それでもハンディが残ってしまったら適性検査得点力で他を圧倒できるようになることを目指すしかない。合格レベルの適し絵検査得点力では報告書のハンディにより敗北してしまうからである。
男女定員の廃止により、男子だから勝てた女子だから負けたは通用しなくなる。その逆も通用しなくなる。
男子は女子に負けない報告書点がこれまで以上に必要になるし、女子は男子に負けない適性検査得点力がこれまで以上に必要になる。
ここ2年続けて、適性検査問題は、その前に数年続いた極端な難問化がやや緩和し、御三家や最難関私立中学受験生の比較優位性が大きく後退した。
これらのことを知らずに都立中に挑めば、討ち死にする私立中学受験生が多くなるであろう。
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