パソコン版を見る

三田学院

[2024年6月15日]

【時事問題】見落としがちな危機

今起きている物価高の本当の原因は何だろうか。

円安や、原油高や、穀物高など、個別の要因が取りざたされているが、ではなぜ円安や原油高や穀物高が起きているかといえば、大きな要因はウクライナ戦争の勃発と、それに伴う経済制裁と経済のブロック化であろう。

経済制裁と経済のブロック化がなければ、原油高や穀物高は起こらなかった可能性があるし、起きたとしてもこれほどには激しくならなかった可能性がある。

ウクライナを侵攻したロシアが悪い、いやロシアにウクライナ侵攻を余儀なくさせたアメリカが悪いと、悪か正義かを議論しても本質は見えてこない。

ウクライナ戦争がどのような形で収束しても、アメリカおよびNATO諸国と、ロシアと親ロシア諸国との間では、国際政治的な国際経済的な対立と緊張は続く可能性が高いから、世界的に起こっている物価高は容易には収束しないと考えておくべきだろう。

それなのに、ウクライナ戦争にアメリカや親米欧州諸国が積極的に関与し続ける理由は、ウクライナという軍事的な緩衝地帯を失うことが、特に親米欧州諸国(反ロシア欧州諸国)の安全保障に大きなリスクとなるからである。

ウクライナに直接的な地政学上の利害がない日本が、アメリカやG7諸国と足並みをそろえてウクライナを支援するのは、経済的安全保障が第一の理由ではあろうが、政権や官邸としては加えて軍事的安全保障もおなじくらい重要だと判断しているからであろう。アメリカなどから入れ知恵を受けた可能性もある。

ウクライナ戦争勃発直前に、アメリカはアフガニスタン撤退を電撃発表し迅速に完了している。来るべきロシアによるウクライナ侵攻の準備をしていたと考えられなくもない。今のアメリカには2正面で軍事的な作戦を構えるのは負担が大きすぎる。加えて、直接に軍を派遣するのは国内世論的にもリスクが大きすぎる。

・今のアメリカには2正面で軍事作戦を展開する能力がない
・今のアメリカには米軍の戦闘を国民に支持させる力が弱い

このことは軍事的にアメリカと敵対するロシアや中国(中華人民共和国)も承知しているはずである。一方で、ロシアも中国もアメリカに軍事的に対抗しても勝ち目がないことは理解しているはずだ。軍事的に敗北しなくても政権が倒れる可能性がある。

その証拠に、ロシアはアメリカの参戦につながるような行動は自粛している。中国もアメリカと全面対決にならないように行動している。

日本にとってもっとも危険な状況は、ロシアと中国が連携して、あるいはロシアと中国と北朝鮮が連携して、台湾(中華民国)や韓国や日本に対して軍事的な行動を取ってきた場合であろう。単独でも十分に脅威だが連携されると致命的な脅威となる。

・今のアメリカには2正面で軍事作戦を展開する能力がない
・今のアメリカには米軍の戦闘を国民に支持させる力が弱い

平和をこよなく愛する多くの日本人は、日米安全保障条約があるから、有事の際にはアメリカが日本を守ってくれると思いたがるが、軍事同盟の基本概念は軍事的に互いに敵対しないということであって、互いに自国を犠牲にしてまで同盟国を必ず守ることを確約するものではない。しかも同盟条約など制度上はいつでも一方的に破棄できるのであてにならない。同盟しないよりも同盟した方がいくらか安全だから、互いに同盟しているだけにすぎない。

中国が台湾に侵攻し、同時にロシアが北日本に軍事攻撃し、さらに北朝鮮が韓国に侵攻した場合、アメリカは自軍の戦闘能力を適切に温存して、効果的に反撃するために、いったん安全な場所まで退避させる可能性が高い。同盟国を救うために、極東に配備している自軍の軍備を壊滅させるような野暮な作戦は取らないはずだ。

それがやっと分かったのか、無理矢理に分からされたのか、日本政府は軍事予算を倍増させて、有事の際には数時間で尽きる航空自衛隊の弾薬の備蓄を開始し、おなじく数日で尽きる海上自衛隊の弾薬の備蓄を開始し、おなじく1週間以内に尽きる陸上自衛隊の弾薬の備蓄を始めた。

沖縄の八重山諸島では住民の安全を確保するために防空シェルターの設置が始まっている。東京都は他国からのミサイル攻撃に備えて地下街などの防空避難場所指定を完了した。

有事の際に安全地帯まで退避した米軍が、本格的に参戦してくるには、少なくとも1週間は自力(自衛隊単独で)で持ちこたえなければならないだろう。日本や台湾や韓国にとって形勢が明らかに不利であれば、アメリカ軍は動かないかもしれない。そうでなくても、しっかり準備ができるまで、損失を納得できるほどに少なく見積もれるまで、勝算が十分に見込めるようになるまで、行動を開始しない可能性が高い。

日本政府はウクライナに、防弾チョッキを送り、防弾ヘルメットを送り、そして軍用車両(偵察用や物資輸送用)を送って、ウクライナの支援をしていることをアピールしながら、アメリカとNATO諸国(おもにイギリスとフランスとイタリアであろうか)のご機嫌取りに余念がない。しかし、日本が置かれた地政学上のリスクを考慮すれば、いたしかたないというよりも、もっと上手に立ち回っておいた方が安全なのかもしれない。

スウェーデンとフィンランドのNATO加盟で、ロシアが誇るバルチック艦隊の本拠地カリーニングラードは反ロシア陣営により包囲されて機能していない。アメリカが長距離攻撃できる兵器をウクライナに供与したことで、クリミアのセバストポリにあるロシアの黒海艦隊は壊滅的な状態になりつつある。

フィンランドのNATO加盟で、フィンランド領に近接する北極海圏の不凍港(流氷漂着限界のわずかに外)にあるムルマンスクを母校とするロシア北方艦隊も行動が制限されるようになった。

今やロシアが自由に動かせるのは日本海に面するウラジオストクの極東艦隊だけである。しかしそれはバルチック艦隊よりも北方艦隊よりも黒海艦隊よりも規模が小さい。ロシアは最も自由に軍事行動できる極東地域で軍備を拡充したいはずだ。事実、北方領土における軍備の拡張が急ピッチで進んでいる。

物価高よりも恐ろしいことが東アジアで起きるかもしれない。

その気配をより早くより正確につかむためにも、国際情勢から目を離すべきではないだろう。

国際分野だ、いや情報分野だ、という受験生親子が増えたが、国際情勢や情報分析が疎いままでは、その分野に進んでも成功は難しいかもしれない。

少なくとも、あなたの受験戦略が、国際情勢や国内情勢をふまえたものになっているのかを、しばし立ち止まって検討してみるのが賢明であろう。

新型感染症の蔓延以前に(教室開設当初となる10年以上前に)、在宅受講の体制整備を完了し、通信切断時に備えて補助教材による自学自習体制の整備も整えてきたが、さらに重篤な危機に備えて、さらなる体制の整備を怠らないつもりだ。


*クリックで応援をお願します。スタッフ日記は全くの手弁当で書き続けています。クリックしていただいても1銭も入りませんが、励みになります。

PVアクセスランキング にほんブログ村

にほんブログ村 受験ブログ 公立中高一貫校受験へ
にほんブログ村

にほんブログ村 受験ブログ 中高一貫校受験へ
にほんブログ村

にほんブログ村 受験ブログ 大学受験(指導・勉強法)へ
にほんブログ村

*たまには「キャンペーン」ボックスも覗いてみてください。お得な情報が入っているかもしれません。