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三田学院

[2024年6月27日]

【都立中】小石川の強さの源泉

都立小石川の強さの源泉の最たるものは「小石川教養主義」であろう。

小石川の6年間のカリキュラムにその思想が色濃く反映されている。

まず、文系理系分けがそもそもなく、文系志望であっても実質的に数学3Cまで学ばなければならない。一聞すると文系志望者には非効率なカリキュラムに思えるが、実は数学3を学ぶことで数学2の微分積分がより分かりやすくなるという大きな利点がある。しかも数学3は数学2よりも平易である。

文系理系のコース分けがないことで、早い段階から将来の志望学部を絞り込まなくて済むことにも大きなメリットがある。全ての教科をを学び終える高校2年生の半ばで、全ての教科を学び終えたことを踏まえて志望大学や志望学部を選択することができることは、将来の可能性を最大限に広げることにつながる。

理科は物理や化学や生物だけでなく地学も学ぶ。これは実は理系志望者だけでなく文系志望者にもメリットがある。文型志望者が共通テストを受験する際には、理科は基礎科目4科目の中から2科目を選択することが一般的だが、ここで地学基礎も選べる。この地学基礎だが基礎4科目の中では最も短期間で攻略しやすく、しかも高得点が狙いやすい。

実は東京大学の文科類の受験者に地学基礎は非常に人気が高い。共通テストで90%以上など高得点があたり前の闘いでは、効率よく高得点が取れる地学基礎は戦略的に重要な科目となるからだ。

多くの高校では地学基礎が受講できないが、おなじく難関国立大学を受験する生徒が多い都立日比谷高校も地学基礎を学ぶことができる。

難関国立大学指導を専門にしている業界内の友人によれば、地学を開講していない高校に通っていても地学基礎での受験を勧めているとのことなので、地学基礎を開講している都立小石川や都立日比谷のメリットは大きい。

小石川の最新の教育課程(カリキュラム表)を確認すると、世界史探求と日本史探究も選択ではなくともに必須である。倫理と政治経済もともに必須である。地理探求のみ必須ではないが、地理総合は歴史総合や公共とともにそもそも必須であり、その中で地理総合のみ単位数が多く、6年生(高3年生)の選択科目に要説地理という選択授業があるので、実質的に地理探求の範囲をカバーしているのだと思われる。

文部科学省が必須と定める地理総合と歴史総合と公共の他に、世界史探究と日本史探究と地理探求と倫理と政治経済を、すべて学べることのメリットは大きい。

世界史を理解しようとすると地理を学んでいることは大きなアドバンテージとなる。おなじく倫理や政治経済も世界史と深く関連した内容となる。世界史と日本史をともに学ぶことのメリットについてはわざわざここで説明するまでもない。

高校社会の新課程移行に伴い世界史の総点検をしてきた。通史の参考書を3シリーズ読破し、検定教科書2冊を読破し、図説資料集を2冊読破し、用語集1冊をしらみ潰しにし、用語系問題集を2冊解き終え、共通テスト過去問を解き、難関国立大学の論述型二次試験に挑戦し、難関私立大学の過去問を解いて分かったことは、世界史を完璧に理解するためには大学受験地理の理解が大きく役に立つということだ。途中から地理総合・地理探求と並行して新課程世界史の点検をすることになったのは必然だと感じている。

逆に、世界史を学ぶことで地理が良く理解できることに改めて気がついたことは予期せぬ収穫であった。

例えば、バルト三国のエストニア(ウラル系言語・プロテスタント)とラトビア(バルト系言語・プロテスタント)とリトアニア(バルト系言語・カトリック)だが、宗教と言語の組合せが微妙に違う。このため、似たような地理的環境にある小国どうしでありながら、一つの国にはなれないのである。

リトアニアがカトリックであることは、かつてポーランドと連合王国(ヤゲヴォ朝)の時代があったことを知れば納得できる。エストニアとおなじウラル系言語・プロテスタントの国にはフィンランドがあるが、フィンランドはスウェーデンによる支配が長かったことと、エストニアはロシアの影響下が長かったという違いを知っていれば理解しやすい。

少し南のカフカス(カフカ―ス)3国だが、ジョージア(グルジア)はカフカス系言語・正教会、アルメニアはイラン系言語・正教会、アゼルバイジャンはトルコ系言語・イスラム教シーア派と、これも組合せが違う。政情が不安定な理由もここに起因している。

大学入試地理では、これらに農業生産や鉱業生産や家畜の飼育頭数や人口や人口密度などが組合わされて出題される点が、世界史の出題傾向とは違う点となる。

東京大学の文科類では二次試験で世界史探究と日本史探究と地理探求から2科目を選択しなければならないが、世界史と地理の組合せが最も相性がよいのではないだろうか。

共通テストでは、歴史総合・世界史探究と公共・倫理や、世界史探求と公共・政治経済も相性がよい。倫理を学べば世界史の思想史を深く理解できるし、政治経済を学べば世界史の政治思想史や政治体制史を深く理解できる。逆もしかりである。ギリシアの民主制やローマの共和制と帝政を知れば政治経済の政治がわかりやすい。産業革命や宗教改革など知ることで政治経済の経済も理解しやすい。

ということで、試験に出る範囲だけでなく周辺領域まで学ぶことでより深く試験範囲を仕上がることができるようになることが分かるであろう。試験範囲だけを効率的に勉強すれば合格に近づくという発想は危うく不安定になりやすい。

もちろん、ある程度の知的な素養がなければ「小石川教養主義」の効果は十分に期待できない。しかし、ある程度の知的な素養があるのなら「小石川教養主義」はかけがいのない6年間となる可能性を秘めている。

文系だから数学は苦手ですとか、理系だから国語や社会は得意ではありませんでは、社会に出てから一流の人材とはみなしてもらえない。そもそも世の中のことを理解できない。数学全般が苦手ではAIがわからない。社会全般が苦手では国際政治経済のニュースが分からないし適切な判断もできない。理科全般が分からなければ環境問題の本質も分からない。実は社会全般が分からなければ環境問題の政治的な背景も要因も分からない。

適性検査ではどんな適性が問われるのか、共通テストではなぜ6教科の試験を受けなければならないのか、その答えも「小石川教養主義」の中にある。

将来に難関大学への進学を目指すなら、小石川はすばらしいプラットフォームを提供してくれることだろう。


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