[2024年7月8日]
高校受験が改めて見直されているが、日本国内を広くを見渡せば高校受験が王道であることに今も昔も変わりはない。
大都市圏以外から転入してきた保護者には、都内の私立中学受験熱は異様に映る。東京に隣接する神奈川や埼玉や千葉に転入しても、おなじような強い違和感を感じることだろう。
一方で、都内以外を知らない保護者には、昨今の私立中学受験熱は当然のことのように映る。これは大手の私立中学受験指導塾のプロパガンダが広く浸透しているためと、実際の地元公立中学の相対的に緩い雰囲気が影響しているためだと考えられる。
日比谷高校など都立高校の進学校が復活を果たして久しいが、長く続いた都立高校進学校の低迷の印象がまさに今の保護者の目には鮮明に焼きついていることも影響していそうだ。
高校受験を選択する最大のデメリットは何であろうか。
極論すると中学受験と高校受験による大きな違いは、ほぼ高校数学に余裕を持って取り組めるかどうかの違いが大きいと、個人的には評価している。ただ、これもどのレベルの学校に進むかによって、差が大きかったり、差がほとんどなかったりする。一概に6年一貫が有利とは言い切れない。英語をふくむ他の教科では中学受験と高校受験で有意な差は認められない。
都内で高校受験を選択した際の最大のデメリットは、小学生段階で高校受験指導をしっかりとしてくれる塾がほとんどない(ほとんどなくなった)ことにある。
小学生段階で実は高校受験を希望しているのに、巷の小学生向けの高校受験塾がほぼ壊滅してしまっているからである。これは中学受験熱の負の遺産でもある。ほとんどは採算が取れずに撤退してしまったのである。
高校受験が希望でも、小学生段階でしっかり対策をしたいなら、しぶしぶと中学受験塾に通うしかなくってしまった。緩い個別指導塾なら通わせる効果はほとんどないからである。
ところが、高校入試内容を見てもらえば分かるように、私立中学受験対策の内容の多くが高校受験では役に立たない。最たるものは算数の特殊算である。高校入試はおろか大学入試でも出題されない。高校受験を目指すなら特殊算は必要ではない。別の解法を学んだ方が効率的であり有効である。それで社会に出てからも十分に通用する。
高校受験が本命でありながら、周りに影響されて私立中学受験をする場合には、高校受験で目指すレベルにもよるが、小学生にとっては過剰な受験勉強を強いられることになる。高校受験を回避する強い意図や強い意志がない限り、過剰な受験対策の正当化は難しい。私立中学受験により失うことが多いことも忘れてはならない。
東京大学などの最難関国立大学を目指す場合や、難関国立大学の医学部医学科を目指す場合を除き、私立中高一貫校が明らかに優位とは言い難い。地方の国立大学や大都会を含む公立大学では中学受験組と高校受験組で合格率に大差はない。むしろほとんどの国立大学の合格者は高校受験組という実態もある。
有名私立大学や難関私立大学の文系学部であれば、数学なしでの受験が可能であるから、高校生になってから本格的な大学受験対策を開始しても間に合わなくはない。中学内容が完璧で、高校は名門進学校に在籍しているなら、早稲田や慶應の文系学部は正味2年あればなんとか攻略できる。
つまり、ほとんどの国公立大学と早稲田や慶應などの難関文系学部であっても、高校受験で地域の公立高校トップ校に進んでいれば、あとは受験生本人が高校の3年間をしっかり頑張れば合格できるから、私立中高一貫校に通う必要はかならずしもない。
ここで別解が1つだけある。
進学校型の公立中高一貫校である。ほとんどは適性検査入試を行っている。中には学力試験型に近い適性検査を行っている公立中高一貫校もあるが、都立中高一貫校10校や千代田区立九段中は、正統派の適性検査型入試である。しかも優秀な受検生の中から合格者を選抜しなければならないから、かなりの高難易度な適性検査となる。
都立中や九段中に合格するためには私立中学受験塾に通う必要はない。むしろ私立中に特化した受験対策は非効率になる。都立中や九段中は6年制の公立高校なので、高校受験で公立高校進学校を目指す親子にとってすこぶる相性がよい。
地元公立中学や公立高校と大きく違う点は、海外研修などで教育実費が相応にかかることくらいである。そのことを納得できるなら、都立中や九段を受検することには違和感は感じないであろう。
都立中や九段中にギリギリ残念になっても、中学3年間しっかり取り組めば、3年後には高校受験で公立高校進学校のどこかには合格できる。
文部科学省は中学や高校の学習指導内容を「探究型」に大きく舵を切った。大学入試も次の新課程入試から「探究型」の高校学習内容をふまえた出題に移行して行く。
いよいよ、正に進学校型の公立中高一貫校の時代になる。すでに多くの都道府県の進学校型公立中高一貫校が、大学受験で存在感を高めてきている。
特定の私立中高一貫校に特別な思いがあり、その私立中高一貫校に合格できそうであるなら、公立高校や公立中高一貫校を勧めはしない。しかし逆に私立中学受験に少しでも違和感を感じるなら、公立中高一貫校や公立高校を目指して小学校低学年からしっかり取り組むのが適切であろう。
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