[2024年7月16日]
書かれた文章を理解できない人が多いことの衝撃は計り知れない。
読んで分からない人には参考書などを使った自学自習は難しい。巷には授業をしない塾や予備校があるが、これらを利用して成功できるのは、高度な文章読解力のある、ごく一部の人だけとなる。それが可能なのは学力上位層だけだから、そうでない学力層の人は、ただ騙されて時間と費用を捨てることになる。
学力上位層は予備校に通っても、授業に参加せず自習室にこもって自力で勉強する人が多い。ある映像授業大手予備校の実態がそうである。学力上位層にとっては、すでに分かっていることしか説明しない予備校授業を聞くよりも、自分に合った演習を自力で行う方が圧倒的に効率的に合格力を高められるからである。苦手科目や苦手単元なら授業を聞いてもよいかなくらいの感覚であろう。それに気がついたこと自体が優秀な証しでもある。
聞いて分からないことは読んでもさらに分からない。大手私立中受験塾などの難易度の高い授業を理解できないなら、即刻退会した方がよい。ムダな費用と時間を費やすことになる。
聞いたら分かるが読んだら分からないことの影響は、英語学習でもっとも顕著に現れる。英検やTOEFLやIELTSなどの英語外部試験はリスニング力を重視しながらも、実はリーディング力も試される。高いスコアを上げるためには高いリーディング力が要求される。英検などが分かりやすいが準一級あたりから顕著となる。聞いたら分かるが読んだら分からない人は、ここで越えがたい大きな壁を実感することになる。準1級未満では外部試験入試ではほぼ役に立たないから、結局のところ多くの純粋ドメスティック人にとって幼少期から長々と続けた英会話学習はムダになる。
慶應や早稲田の入試英語が顕著であるが、並大抵ではない英語力に加えて、卓越した教養人でなければ読解できないような高難易度の英語長文の読解力が試される。日本語で書かれていても難解な内容を英語で読解しなければならない。聞けば分かっても読んだら分からない人には手に負えない。
聞く話すをいくら訓練しても、読む書く力は向上しない。
読む書く力は、読む書く力をつける訓練でしか育っていかない。
大学入試共通テストで世界史(世界史探求)を選択受験する受験生は、日本史や地理に比べて圧倒的に少ないが、これは世界史の理解と習得に高度な読解力が必要であるからだと考えられる。
日本史や地理は、中学受験や高校受験で基本的な内容を学習済みなので、高校日本史や高校地理を学ぶ際には予備知識がある程度備わっている。ベースの既存知識であるために、流れや全体像が理解できているので、高度な読解力がなくてもある程度までなら対応できる。
しかし、世界史はほとんど予備知識なしで高度な内容に入って行くから、教科書や参考書や資料集や用語集などを読解できる力がないと完全習得が難しい。
教科を問わず、本格的な思考力型の入試では、網羅系の参考書や網羅家の問題集には載っていないような入試問題が出題されるので、高い読解力と真の学力がなければ解けない。東京大学の二次試験が好例である。難関公立中高一貫校の適性検査も、思考力型の出題を年々強めている大学入試共通テストも、そうである。
共通テストの数学で長いリード文がある問題が出題されて、旧態依然とした解法暗記やパターン暗記に頼った受験対策しかできていなかった受験生の多くが爆死したが、共通テストは手綱を緩める気配はなく、むしろ思考力型の出題傾向を強めている。
真に高い学力がある受験生を選抜する入試にしたいのである。
筑波大学の学長が5年後をめどに二次試験を廃止する方向で検討していると発言したのは、共通テストが実に良く練られた思考力問題になったことを受けてのことだと分析している。
当初は数学3の入試をなくしても大丈夫なのかと思ったが、より重要な入試改革がそこにあったのである。
まあ、数学Cが共通テスト範囲になったので、共通テストで問われないのはほぼ微分積分の高度な内容だけとなった。微分積分の基礎は数学2BCの出題範囲となるから、二次試験であえて数学3を課す必要性が大きく後退したことも要因と考えられる。数学1Aと数学2BCで高得点を取れる人なら、数学3はしっかり取り組めば高得点が取れるから、わざわざ入試出題範囲にしなくてもよいという判断もできる。すでに後期試験では小論文と面接だけという入試が行われている。
重要なことは、話したら分かるが読んだら分からない人を、確実に振るい落とす入試をどう有効に実施するかにかかっている。話したら分かるが読んだら分からない人は、研究色の強い大学や大学院では早晩に落ちこぼれるからである。具体的には留年や退学や除籍になるからである。
話しを変えるが、聞いたら分かるが読んだら分からない大多数の人々には、どうメッセージを伝えたら良いのだろうか。
ホリエモンは、読んだら分からない人には、文字よりも、画像や映像による情報伝達が有効だと語っている。ストレートな解決策である。
画像や映像が主体となったSNSが好まれるのは、情報を入手したいが文字情報では情報収集できない人が非常に多いことを示唆している。
ということで、映像や画像を用いた情報伝達媒体を新たに模索することにしたい。すでに準備に取りかかってはいるが、いつ実現できるかの見通しは立っていない。この機会に、これまでの合格指導モデルに、新しい合格指導モデルを追加できたらと考えている。
<余談>
昨夜、民放のクイズ番組を観ていたら「世界最古の図書館が設立された国はどこか」という問題が出て「エジプト」が正解とされたが、実は誤りで正解は「イラク」である。
世界最古の図書館とされているのは「アッシリア」の「アッシュバニパル王」が紀元前7世紀頃に「ニネヴェ」に建てた図書館である。ニネヴェは現在の「イラク」のティグリス川上流(山川の用語集では中流)のモスル(湾岸戦争の激戦地の一つ)近郊にある。紀元前4世紀頃にマケドニアの「アレクサンドロス大王」が「エジプト」に遠征して「アレクサンドリア」市を建設し図書館を建てたが、これよりも明らかに古い。
回答者(東大卒)が「イラン」と答えたがこれは惜しい。ニネヴェはアッシリア滅亡後の紀元前6世頃に「アケメネス朝ペルシア」の「王の道」の重要都市の一つだったからである。慶應や早稲田の世界史で合否を分けそうな難問ではある。
聞いて分かる情報には不正確で怪しい情報が多い。警戒を要することを思い知らされる。
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