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三田学院

[2024年11月28日]

慶應義塾大の小論文(教養編)

今回は慶應の小論文を攻略する上で必要となる教養について説明します。

慶應大の小論文を攻略する上での基本的な取り組み方につては、過去の記事「慶應義塾大の小論文」で書きましたので参考にしてください。

教養とは何かを難しく考える必要はありません。ここでは慶應の小論文を攻略する上で身につけておいた方がよい知識や情報と定義しておきましょう。

では知識や情報とは何でしょうか。慶応大を受験するのは高校生ですから、高校生が手に入れることができる知識や情報とは何かを考えてみましょう。

しばしば、社会科学や人文科学に関する単行本を読んでおくとよいなどの意見を聞きますが、忙しい高校生が単行本を読み漁ることは容易ではありませんし、少し読んだ程度では幅広いテーマの中から出題される慶応大の小論文の出題範囲をカバーすることはできません。

そこで、現実的な対策として高校の学習内容を上手に活用する方法を提案します。

慶應大小論文の過去問題を解いていると、学部ごとに傾向があることが分かります。これを高校の学習内容にあてはめると概ね次のようになります。

文学部:世界史+倫理+外国文学+日本文学
法学部:世界史+政治経済+倫理+論理と命題
経済学部:世界史+政治経済+倫理+地理+データ解析+論理と命題
総合政策学部:世界史+政治経済+倫理+地理+データ解析+論理と命題
環境情報学部:世界史+政治経済+倫理+地理+データ解析+論理と命題

なお、世界史は歴史総合をふくみ、倫理や政治経済は公共をふくみ、地理とは地理総合と地理探求を指します。

また「論理と命題」や「データ解析」は高校数学で学ぶ内容ですが、「論理と命題」は倫理でも間接的に学びます。

文学部では過去にカミュの異邦人に関する論文が出題されました。不条理という哲学的な概念の理解はもちろん、描かれている異邦人という概念がどんなものかを理解できなければ、合格レベルの答案にすることはできません。

カミュの異邦人は高校生の時に初めて読みましたが、その時に感じたことは、これは文学なのか哲学なのかという疑問でした。勝手に哲学文学と分類して先に進んだ思い出があります。カフカやヘッセよりも難解だと思った記憶があります。

法学部では法学や政治学についてのテーマが頻出です。小論文だから上級レベルの作文だろうなどと考えていると全く歯が立ちません。高校で学ぶ政治経済の理解は前提となりますし、法哲学や政治哲学について問われますので、世界史の政治思想史や法思想史や社会思想史に関する教養は必須になります。その上で解答者の意見を論理的に展開しなければなりませんので、倫理や論理と命題などの教養もまた必須になります。

経済学部では経済に関する幅広いテーマが出題されます。しばしば狭い意味での経済学の範囲を逸脱した出題になります。政治思想と経済学、科学技術と経済学、グローバル化と経済学、貿易と経済学など融合問題となることがほとんどです。経済学と倫理がテーマとなることもあります。経済思想の歴史や背景についても理解しておく必要があります。軸は経済学になりますので論理的な意見展開ができなければ評価に値する解答にはなりません。このため、世界史、政治経済、倫理、地理、データ解析、論理と命題の素養は必須となります。ただ、法学部や文学部ほど哲学的な命題にはならないため、また課題文が短いことが多いため、一見すると与しやすいように見えるかもしれません。しかし、だからこそ合格にはハイレベルな解答が求められますので注意が必要です。

総合政策学部と環境情報学部は大学入試小論文としては私立大学の中で最も難易度が高くなります。まず膨大な資料を解読するだけで相当に高いレベルの教養が必要になります。総合政策学部と環境情報学部の小論文は複数資料解析型の出題形式になります。かなり実践的な出題傾向であり、社会科学や自然科学の学位レベルの論文が書ける素養が求められます。出題範囲も教育学から政策決定理論まで幅広くなります。

求められる対策は早稲田大学政治経済学部の総合問題に近くなると言えるでしょう。早稲田大学政治経済学部との違いは、数学や国語が必須ではないことと、社会や理科や数学が選択必須でないことです。

また、総合政策学部と環境情報学部の小論文は難関公立中高一貫校で出題される「適性検査の化け物バージョン」と考えてもらえば分かりやすいかと思います。凡庸な受験生が制限時間内に解けるような問題ではないからです。

慶応大学は英語と社会と小論文で合格できると安易に考えていたら痛い目にあうことは必至です。慶応の小論文は国語(現代文や古文など)よりも対策がやっかいです。地道に取り組めば誰でも攻略できるものではありません。多くの受験生は薄々気がついてはいるでしょうが、受験対策をスタートさせる時点で相応の教養と高い知能が求められます。解答用紙を指定の字数で埋めさえすれば合格できるというものではないからです。

数学の答案用紙の解答欄を間違った解答で埋めても合格がないように、慶應の小論文も中身のない内容で埋めても合格はありません。

それを適切に理解した上で慶應の小論文対策に入っていく必要があります。


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