[2025年1月23日]
令和7年度入学者の出願倍率が1月21日付で発表された。
都立10校の出願倍率:3.60倍(4.03倍)
*カッコ内は前年数値。
都立10校の出願者数と定員は、5,644人と1,569人。
事前に予想した倍率:3.50〜3.90倍で、中央値は3.70倍だから、今年度も予想がほぼ的中したことになる。
大きく減少したのは小石川と立川国際だった。
巷では、都立中高一貫校の人気が落ちたとか、優秀な受検生が私立中高一貫校難関校に流れたとか、少子化で倍率が下がったなどの分析が多いようだが、適切な分析だとは評価できない。
都立中高一貫校の出願倍率が下がった最大の要因は、都立中高一貫校の合格の難しさが広く周知されたことだと分析している。
合格するためには、新しい学力観にもとずく「高い学力」(思考力や分析力や判断力や表現力、そして適切な意欲)が求められるほか、高い通知表成績(報告書点)が必要であり、私立中高一貫校で求められる学力とは大きく性質や性格が異なることで、並行して対策することが難しいことが大きな要因だと考えている。
これが受検生と保護者に徐々に認知されたことが、倍率低下の最大の要因だとするのが適切であろう。
倍率が下がったといっても、依然として3倍を超えており、実質ほぼ全入の私立中学入試に比べれば、高い倍率であることに違いはない。むしろ、かつて5倍や6倍を超えていたことの方が異常だったと考える方が適切である。
4倍を下回るようになった倍率であるが、原則として定員通りにしか合格者を出さないので、依然として狭き門であることに変わりはない。国公立大学がそうであるが、3倍を超える倍率はかなりの激戦である。
都立10校も昨年度からの九段と同様に男女合同定員となったことから男女別の出願者数が発表されなくなり男女別の内訳がわからなくなったが、男女合同定員化により、相対的に報告書点と適性作文で劣勢な男子のうち、合格可能性に期待できない層が出願を見送る傾向に拍車がかかった可能性もある。
今後の見通しとしては、倍率低下率は今年度よりも低下すると見込む。中期的には3倍程度(2.5倍から3.5倍)に収斂していくと予想する。
これとは別に、男女合定員化ではなく共学化をする楠隼については、定員を据え置きながら女子にも受検資格が付与されるため、来年度は大幅な倍率上昇も起こりうると予想する。入寮条件も緩和され地元通学圏からの出願も純増になるから、もともと定員が少ないこともあり、倍率が大化けする可能性もある。
しかし、もともと都立中高一貫校10校よりは若干合格難易度が平易だったため、女子受検生にも併願が可能になったことは朗報であろう。
既存6棟ある寮の1棟が女子寮化が急ピッチ進められ、2棟目の女子寮化も検討されていることから、女子受検生の受け入れ体制は万全である。
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参考のために今年度の倍率を予想した2024年10月16日付のスタッフ日記の内容を転記しておく。
<以下、転記>
都立中高一貫校の応募倍率を予想する。
ここでは九段を除く10校について予想する。
まず過去5年間の一般選抜の状況を確認しておこう。
2024年度(令和6年度):4.03倍
2023年度(令和5年度):4.45倍
2022年度(令和4年度):4.66倍
2021年度(令和3年度):5.13倍
2020年度(令和2年度):5.74倍
2019年度(令和1年度):6.02倍
5年間の平均で1年あたり0.398倍(約0.4倍)ずつ倍率が低下してきている。
ただ、平成4年度から平成5年度のようにほぼ横ばいだった年があり、平成2年度から平成3年度のように0.61倍下がった年もあるから、下がるとしたら下げ幅は0.5〜0.6倍程度までありうると考えておいてよさそうである。
秋の学校説明会の参加状況を(開催された学校だけにはなるが)観察していると、説明会参加者数は明らかに弱い。
説明会への参加申込数が定員に達した場合は抽選としていた学校でも、定員に達しなかったために抽選を取りやめた学校がある。
学校ごとにばらつきはあるが説明会参加者の表情が明るくない。
意気揚々と参加する親子が多かったコロナ禍以前と比べて明らかに暗い。もちろん個人差は大きいが、全体の印象として盛り上がりに欠ける。
解釈の仕方はいろいろとありえるだろうが、ワンチャンス合格狙いの受検生親子が大幅に減り、いわゆるガチ勢ばかりが残ったので、己の仕上がり状況を謙虚に受け止められるがために、そう映ったのかもしれない。
もちろん学校ごとの差も大きい。
A校は落ち着いた感じ
B校はラフな感じ
C校は深刻な感じ
の親子が多かった。
C校については思い当たるふしがあるが、今回はそのことには言及しない。すればそれだけで1つのテーマになるからだ。
ここでいったん途中予想をしておきたい。
2025年度応募倍率(仮)予想:3.5〜3.9倍
ただ、大きなかく乱要因が1つある。
「男女合同定員化」である。
昨年度に九段で先行して実施された「男女合同定員化」であるが、明らかに女子の合格者数が多くなった。
九段だけ1年先行したので優秀な女子が九段に集中した可能性を排除できないが、千代田区民枠(A区分)でいくらか緩和されたとして、A区分とB区分の合計で、合格者の男女比はおおむね1:2となった。
B区分だけならもう少し女子の比率が高かった可能性もある。
しかも合格難易度が女子も男子も上昇している。男女合同定員で男子の合格難易度が上がるのは容易に予想できるが、女子の合格難易度まで上昇した点に注意を払っておくべきだろう。
つまり、応募倍率は下がる可能性が高いが、合格難易度は上がる可能性が高いということである。
男女合同定員化で、九段に続き都立中10校も、男子には受難の入試になりそうである。
男女合同定員化を嫌気する男子受検生が多くなれば予想レンジの下方に近づき、男女合同定員化でチャンスを見出した女子受検生が多くなれば予想レンジの上方に近くなるであろう。
説明会には参加せず出願してくる受検生もいる。多くは難関私立中高一貫校の併願勢である。私立中向けの対策で日程が埋まっているので都立中の説明会に参加しないのである。
これは女子だけでなく男子も相当数程度の人数がいそうである。これを考慮すると、上限が上振れした予想も成り立つ。
2025年度応募倍率(仮)予想:3.5〜4.4倍(かく乱要素込み)
男女合同定員化で劣勢となる男子が、残り数か月で女子との差を詰める秘策はある。
指導ノウハウにかかわるので、ここではご紹介しない。
お通いの塾に相談されてみるとよいだろう。
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