[2025年3月31日]
私立高校授業料の無償化は子育て世代にはありがたい制度ではあるが、所得制限なしで授業料が無償化がされれば、それは新たな教育格差拡大を助長することになりそうである。
もともと子育てや子どもの教育のための資金に余裕のある家庭が、高校授業料無償化によって新たな資金を確保した場合、その資金を新たな使い道に振り向けることができる。
もともと家計に余裕がある家庭の場合、その使い道は教育資金の積み増しとなる可能性が高い。
高校授業料を払わなくなって浮いたお金は、塾予備校の追加授業料に充当できる。これは家計の余裕が大きい家庭ほど顕著になる。
もともと家計に余裕がなかった家庭は、授業料無償化で浮いたお金は、これまで切り詰めていた生活資金へと真っ先に廻る。
つまり、高校授業料無償化は貧困世帯や低所得世帯では正確資金へ、富裕層では教育資金の積み増しへと廻る。
年間で約50万円、3年間で約150万円の差が新たにつく。
富裕層や準富裕層は高校授業料無償化前の時点ですでに潤沢に塾予備校費用を支払っていたから、貧困層や低所得層との絶対額の差はさらに拡大する。これが新たな教育格差の拡大をまねき、教育の二極化を加速させることになる。
授業料無償化は、低所得層にとっては貧困対策にはなるので、少子化対策にもなりそうに思えるが、教育格差を拡大させ、進学競争を激化させる作用があることを知れば、少子化対策としての効果はほとんどなくなってしまうどころか、少子化を加速させてしまうリスクさえある。
受験競争が激しい韓国や中国の少子化が、日本よりはるかに深刻であることがその根拠となる。
富裕層や準富裕層でない家庭や多子家庭が、新たな受験競争を生き抜く方法はそう多くはない。
富裕層や準富裕層に対抗できるだけの塾予備校費用をねん出するためには、保育所から始まって高校卒業まで、一貫して公立校を選ぶのが最も確実な方法となる。
大学まで国公立を選ぶという選択肢もあるが、今や国公立大学の学費も安くはない。むしろ、保育所(0歳児)から高校卒業までの18年間、一貫して公立校を選ぶことで、まとまった金額をねん出できる。
私立高校授業料無償化で浮く教育費は年間約50万円、3年間で約150万円である。無償化の対象にならない分を考慮すれば、公立高校に通うことで3年間で約250万円節約できる。
私立中学授業料は無償化にはならないので、公立中学を選べば年間約80万円、3年間で約250万円節約できる。
6年間の合計で約500万円を節約できる。
授業料無償化分約150万円を受け取れなくても、6年間で350万円を節約できる。
ここから生活費の不足部分を差し引いて、残った部分を塾予備校費用に充当できれば、教育格差の拡大を最小限に抑えることができる。
地元公立中学に通わせることが心配であれば、公立中高一貫校を選択する手もある。東京都内であれば11校の進学校型公立中高一貫校があるので、ムリなく通学できる公立中高一貫校を見つけやすい。残念になった場合は、都立高校進学校や国立大学附属高校進学校に挑戦することもできる。
進学校であれば、私立中高一貫校に通っても、公立中高一貫校に通っても、大学受験予備校などに支払う教育費には大差がない。むしろ私立中高一貫校の方が早くから予備校に通うケースが多いので、総額が大きくなることが多い。
私立中高一貫校の中には「予備校なしで大学に合格させます」と豪語する学校もあるが、多くは宿題や課題で学校外学習を縛る「自称進学校」に多い。名門私立中高一貫校は気兼ねなく塾予備校に通えるように放任に近い学校が多い。そうした自称進学校の一律の宿題や課題が個々の大学受験対策にどれほど効果的なのかには検証の余地がある。
大学受験が多様化する中では、受験勉強の仕方に学校からの縛りが強くなく、志望校に合わせて対策ができる方が、メリットが大きくなりやすい。
大学進学指導をしてはくれるが縛りがきつくない進学校として、都立中高一貫校や都立高校進学校(重点校や特別推進校や推進校)はちょうどよい。
だれもが合格できる学校ではないので、進学校から難関大学や有名大学を目指す場合に限られる選択肢ではある。
むしろ、より多くのご家庭にあてはまることは、授業料無償化を勧誘トークにしているような私立学校には、注意をした方がよさそうだということだろうか。
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