[2016年1月12日]
2015年5月1日(金)のスタッフ日記『「所得格差が教育格差を生むはホント?』を覚えていますか?
学力格差の原因は経済格差ではないと書きました。では、学力格差の本当の理由はなんでしょうか?
文部科学省委託研究「平成25年度全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)の結果を活用した学力に影響を与える要因分析に関する調査研究」(国立大学法人お茶の水女子大学)の研究結果をご紹介します。
・家庭の社会経済的背景(SES)と子供の学力との間には強い相関があるが、家庭の社会経済的背景(SES)が低いからといって、必ずしも全ての子供の学力が低いわけではない。
・子供の学習時間(注1)は、全ての家庭の社会経済的背景(SES)で学力との関係が見られ、学習時間は不利な環境を克服する手段の一つと考えられる。
注1)「学習時間」とは「学校外での学習時間」のことで、家庭での宿題時間、学習塾での学習時間などが該当する。
つまり、たとえ経済的に恵まれていなくても、十分な学習時間の確保により学力格差は克服できるのです。
これは、経済的に恵まれない子供には、「経済的支援」を行うより、「学習支援」(学校外で学習をすることができる環境づくり)を行うことの方が有効であることを示唆しています。
下位層(lowest)、中層の下(lower middle)、中層の上(upper middle)、上位層(highest)の4つに分類された「家庭の社会経済的背景(SES)」で、小6を例にとると、3時間以上の「学校外での学習時間」の割合は、下位層で5.8%、上位層で23.2%となっています。家庭所得の高い層の子どもほど、よく勉強していることがわかります。
ところで、この調査研究の中で気になったことがあります。子供の学力に大きく影響を与えている要素がもう一つあったことです。それは「母親の学歴」でした。
「大学卒業」とそれ未満(専門学校・各種学校・高校卒業・中学卒業など)との間に大きな学力差が認められたことです。同じ傾向は「父親の学歴」でも見られますが、「母親の学歴」による差の方がはるかに大きいのです(注2)。また、「母親の学歴」が高いほど、子供の学習時間が長いという別の調査結果もあります。
注2)「家庭所得」が「父親の学歴」の代理変数になっている可能性があります(日記筆者の見解)。
高学歴な母親ほど、学ぶことの楽しさ、意義、重要性などといったことを子どもに伝えることができていること、また幼児期から高学年になるまで子どもの成長や学習をサポートする能力が高いことなどが影響しているからでしょう。博物館や音楽鑑賞などによく行く家庭とも重なっています。
逆に、テレビのワイド・ショーやバラエティー番組を良く見る家庭、テレビ・ゲームやスマホ・ゲームをよくする家庭、パチンコやカラオケによくいく家庭の子どもの学力は低くなっています。
いずれにせよ、「学習時間の長短」こそが学力格差の独立した理由なのです。