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三田学院

[2016年1月29日]

公立中高一貫合格の秘訣

東京都教育委員会公表の公立学校卒業者の進路状況調査の平成27年度調査(平成26年度実績)を分析していて浮き彫りになったことがもう一つあります。

それは、公立中高一貫合格の難しさです。

教室の所在する東京都港区の実態を見ていきましょう。都立中高一貫校への進学者数は7名で、卒業者数1,058名に対し、0.66%にすぎません。これに都内の国立と市町村立の中高一貫を加えても、進学者数は14名で、1.32%にしかなりません。

すべての卒業生が公立中高一貫校を受検しているわけではないのですが、私立中学への進学率35.2%と比較すると、2桁近い乖離があります。

自治体別の受験者数と合格者数を公表している、ある都内の公立中高一貫校では、港区からの受験生は45人、進学者は6人で、7.5倍の競争率です。途中で受検を諦めた人もいたでしょうから、かなりの狭き門です。

大学進学実績が良好な割に、受検料が安く、入学後も実質学費は無料(制服代や修学旅行費などはかかります)と、お気軽感があって人気も高いのですが、少々準備をすれば誰でも入れるというものではありません。

話は元に戻りますが、卒業者数1,058名に対し、国都公立全体で14名しか進学者のいない公立中高一貫校を、単願受検するのは懸命な選択とは思えません。「記念受検」なら何も申しませんが、合格することを少しでも期待しているのなら、それなりの覚悟と準備が必要です。

「不合格だったら地元の公立中学へ進学すればよい」というのも再考の余地があると思っています。これは国立中学(国立大学付属中)の単願にも言えることです。

受験に失敗したことは一生消し去ることができません。中には心のシコリになってしまう人も少なくないはずです。

公立中高一貫受検(国立大学付属中も)は、私立中受験との併願戦略の中で検討されることをお勧めします。具体的には、私立の併願校を受験するということです。必ず一つは合格を勝ち取れる学校を混ぜてください。いわゆる「滑り止め」です。全滅して公立中学へ進学するのと、合格した学校はあるのに公立中学へ進学するのは、まったく意味が違います。

私立と公立中高一貫では試検(試験)問題が違うから併願は難しいのではと思われているかもしれません。確かに見かけは違います。しかし適性検査型(思考力型)の問題を解けるようになるためには、まず基本教科の学力を高める必要があります。また、私立難関中学に多く見られる記述式の問題にかなり近くなってきているため、合格者の多くが私立難関中学との併願者になってきています。

少なくとも小4は私立型の準備でまったく問題ありません。少し焦りが出るかもしれませんが、小5も私立型で通して問題ありません。むしろ、適性検査型の本試験並みの問題はまだ挑戦しても合格ラインに達するような得点はまずできませんから、解く必要はないのです。やや易しい適性検査型の問題なら、気休めと慣れのため挑戦しても良いでしょう。

それよりも、4教科の学力アップを優先してください。「4教科型の模擬試験」で合格ラインまで偏差値を上げるようにしてください。小6になったら本試験並みの適性検査型の問題に挑戦しましょう。そして、「適性検査型の模擬試験」でも合格ラインの偏差値になるよう、しっかり学習を進めてください。

適性検査?(読解作文)対策も、私立難関中学の国語の準備で基本的に大丈夫です。国語の知識(漢字、熟語、ことわざ、文法)をまずしっかり身に着けてください。読解力を付けるのも私立中学の国語の勉強と基本的に同じです。

ただ、400字〜600字程度で解答する記述式問題対への策として、小4から文章を書く練習に少し時間を割いたほうが良いでしょう。週に1回のペースで、小学生新聞の切抜きをノートに貼って、記事の要約と自分の意見を書く練習をお勧めします。意見文は最初は200字程度からはじめ、徐々に600字程度まで伸ばしましょう。小6になったら、全国の公立中高一貫で出題された過去問にも挑戦しましょう。どちらも、文章の添削は塾のベテラン先生にお願いするのが良いと思います。計算問題や漢字の書き取りなどと違い、保護者(親)ですと、わが子の作文を客観的に採点することができないからです。

いずれにせよ、公立中高一貫校への合格を目指すなら、私立中学の併願をお勧めします。また、受験勉強も基本的に小4から私立4教科型で始めてください。これが合格の秘訣です。