[2009年8月28日]
大手の中学受験塾に通っている生徒たちの算数の補習指導をしていて、気になることは、とにかく塾で教わったテクニックをひたすら当てはめて解こうとする生徒が多いことだ。
そういう生徒は、例えば、「場合の数」の問題でも、積の法則や、順列P、組み合わせC、道順の数え方などテクニックはよく知っていて、パターン通りの一行問題は解けるのだが、すこしひねりがあったり、条件が複雑化すると解けなくなってしまう。
それでもなんとか、自分の知っているテクニックを無理に当てはめると、本来足し算をしなければいけないところで、見当違いのかけ算をしてしまったりする。
元に立ち返って、樹形図を書いてみるように指示を出しても、上手く書けない。結局、どのような現象が起こっているかを理解しておらず、また基本演習も足りないので樹形図がきちんと書けないのだ。
確かに、様々なテクニックや裏技は中学受験算数の華である。講師がそれらを使ってスマートに問題を解く姿は非常にかっこいいし、印象に残る。また大手塾の難関クラス等の場合、それだけの価値をつけるために、あえてアクロバティックな解法を使用する面もあるようだ。
だが、あくまでそれはツールであって、まずはしっかり「現象」を理解しないと宝の持ち腐れになってしまう。
「場合の数」においても、まず、樹形図をしっかり書いて、数え上げがきっちりできることが大事だ。たとえ、泥臭くても、何問も図を書いて、自分が何をしているか、それがどういう意味なのかを把握してから教えることで、初めてテクニックや裏技が生きてくる。
最近の中学受験算数の傾向を見ても、テクニックを駆使した難問奇問は少なくなり、「現象」を根本的に理解しているかを問う問題が増えてきている。
テクニックをただパターン化して覚えている生徒よりも、基本的な概念を、自分なりにしっかり理解している生徒の方が上位校でも、中堅校でも、最終的に競り勝ちやすい傾向になりつつあるのだ。
塾のカリキュラムのスピードは速いので、なかなか演習の時間をとれないかもしれないが、テキストはどうしても網羅的になりがちなので、実質不要な部分も多い。それらをきちんと取捨選択して、基本問題の演習・概念の理解をきちんとする時間を取っておかないと、生徒の個性にもよるが、いつかしっぺ返しが来る可能性が大きい。
うちに補習で通っている生徒たちにも、基礎練習が足りない生徒には、泥臭くても、まずはしっかり演習をしてもらう。技を身につける前に、まずは最低限の体力を身につける必要があるのだ。極端な話、体力がしっかりしていれば技はいつでも身につけられる。
泥臭さをいとわずに、やるべきことをしっかりやる気持ちが大切なのだ。