[2011年12月15日]
私立高校の上位校を受験する生徒に国語を教えていて、一様に手間取るのが、頻繁に出てくる学問の世界独特の「学問語」である。
「パラダイム」って何? 「ポストモダン」って?「実存主義」??
「正義」は「正義の味方」の正義とは意味が違うの?
このような「学問語」の意味がわからない、また日常的な意味との違いに惑わされるなどで、なかなか文脈理解までたどりつけない場合が多いのだ。
これらの言葉を自学で勉強するには、大学受験用の語彙集(「ことばはチカラだ!」など)があるが、中学生には少々難しい。解説自身にも「学問語」が入っており、また解説文も長いので、かえってわからなくなる。
逆に言うと、このような語彙集がすらすら読めて、理解できるようであれば、無理に語彙集を勉強する必要はない、というパラドックス(これも学問語)が生じるのだ。
そんなときに使えるのが本書である。著者は、会社員や公務員として勤務した後、哲学の世界に入ったやや変わり種の哲学者。その分、既存の学問社会の慣習にとらわれない、非常にわかりやすい解説を行っている。
もちろん、簡略化されている分、これだけで、哲学を修めるのは難しいが、それほど精密な語義の把握を要求されない高校受験レベルであれば、これで十分である。大学受験生で、なかなか難解な文章に慣れることができず、語彙集を読んでもいまいちという生徒の下慣らしにも使える。中学受験生は、よほど早熟な生徒でないと、難しいかな。
内容としては、よく使われる「学問語」を取り上げ、それの「超訳」を一言で表し、その例文と、作者の解説が入る。解説まで、しっかり読めば、かなり哲学の内容が俯瞰できるが、難しければ、「超訳」と例文だけ目を通してもいい。
巻末に索引がついているので、手元に置いて、わからないことばが出てきたら、引くという、辞書的な使い方もできる。文庫なので、持ち運びしやすいしね。
これらの「超訳」でだいたいの意味を頭に入れておくだけで、文章理解がしやすくなるだろう。おすすめ。
すっきりわかる!超訳「哲学用語」事典
著者:小川仁志
出版社:PHP文庫
ISBN:978-4-569-67673-9