[2016年10月16日]
つまるところが,偏差値の意味がわかっていないことに尽きるのだが,学校の教師たちで,模試のデータ活用ができている人って,ほとんどいない点を指摘しておきたい。
学校で受験した模試だと,学校に一括してデータが返ってきます。
生徒個人の情報も何のその,全員分の生データを見ることができるのが学校の教師です。
進路指導という名目で,生徒の個人情報が教師に漏れているわけです。
いや,進路指導してもらえるのだから,漏れてもいいだろうと皆さん思うから全然OKですよね?
ですが,進路指導が全くデタラメで,むしろそんな指導ならやらない方がマシというのなら,個人情報を教師に知らさない方がよいのではないかと・・・
先日も書いたように,マーク模試の点数が悪くとも,普段の授業で演習させていて,ちゃんと解答できているようなら全く問題ないのに,自分の授業の感触よりも模試の判定を信じる教師がほとんどだろう。
ちゃんと普段から指導していたら,この手の問題に,このように答えるレベルだとこの大学は難しく,これができるレベルだとあの大学の合格圏だとか,自分の教えている科目ならわかるはずだ。
実際は,その感覚を持っている教師が少ない。
ということは,ちゃんと普段から指導できていないということ。
いや,若い教師は別ですよ。
まだ経験が浅いので,そこまでは難しいでしょう。
ベテランならある程度,模試よりも正確に合否の感触を伝えてあげられるはずだ。
えっ?
模試の活用の話?
そうそう,で,模試を,そういう個人の合否判定に利用して,あいつは合格できそうだとか,難しそうだとか言う使い方は,本来あり得ないのです。
そう,判定は,各受験生個人に対してのものではないのです。
えっ?
ん?
どういうこと?
とにかく,A君の模試の結果が返ってきて,A君の合否可能性判定がE判定とかD判定とかついてますが,それは,A君の合格可能性ではないということなのです。
わからないでしょうね。
だから,ちゃんと指導できる教師もいないし,指導される方もわかっていないのです。
あの判定は,A君と同じ程度の点数だった昨年の生徒が何%くらい合格したかの数値です。
やっとわかりましたか?
まだわからない?
アホですね。
いや,その,
もう一度書きましょうか。
A君と同じくらいの点数だった過去の受験生の合否結果を参考に,どれくらいの生徒が合格したかの%です。
そのA君が30%の得点率だったとしましょうか。
でも,何かの都合で未習部分があって低い点数だったかもしれないし,逆に得意分野が多く出題されていたかもしれません。
だから,たまたまの要素が各個人の点数には入ってくるのです。
30%の点数でC判定がついたとしても,実質A君の実力は25%くらいの程度かもしれません。
だったら合格可能性はC判定がついていても5割とは言えません。
3割くらいかも。
逆に,本当は40%くらいの力が潜在的にあるかもしれないのに,今回の模試では測れなかっただけかもしれないのです。
そんなこと言ってたらきりがないって?
そうです,きりがないのですよ。
「個人の事情」はきりがないのです。
ですが,そのようなA君と同じような点数を取った生徒を10人とか20人とか集めてみてください。
たまたま良かった人とたまたま悪かった人が相殺されて,ほぼ統計的に意味のある「実力」が想定できるのです。
そのくらいの点数を取った,昨年の生徒の進路先を見たら5割の合格率だったとしましょう。
すると,今年A君と同じくらいの点数を取った人20人集めたら,およそ10人程度が合格する予測が立つわけです。
20人のうち,どいつが合格するかはわかりませんよ。
おそらくは,たまたまできなかったような人が合格しているのかもしれませんね。
今回,A君にC判定がついていても,たまたまできたのかもしれない,いや,たまたまできなかったのかもしれない。
だから,A君がC判定で5割の可能性があるなんて言えないわけです。
ましてや,これからの学習計画と実際の頑張りによって,全く結果は変わってきます。
サイコロを振る確率とは全く違って,A君は自分でその可能性を高くすることが可能なわけです。
したがって,模試の結果が返ってきても,教師はその判定には一切触れずに,どうしたらこれから合格可能性が高くなるかをアドバイスするしかないのです。
D判定だから頑張れとかAやBだから油断するなとか言っても意味ないです。
どこまで行っても可能性100%にはならないわけだし,模試で学力がすべて測れているわけでもないということを,本当にわかって声をかけないとダメなのです。
さて,これから本題。(今までのは前フリ?)
そういう,本来使えない判定を個人懇談で使う教師がほとんどです。
そして,本来使うべき使い方をしていないのがほとんどの教師たちです。
どういうことでしょう?
つまり,模試の判定はあくまで,集団の統計だという点です。
ここから一歩も離れてはいけません。
だから,模試の結果で,最も使えるのは,たとえば学校で,昨年は国公立大学を志望した生徒のうち,何%がA判定だとかB判定だとかの割合とか人数の読みなのです。
その学校で,昨年は国公立大A判定が20人で,実際に合格したのが15人だとしましょう。
ところが,今年は国公立大A判定が10人しかいないとしたら,これはもう一大事です。
教師は,その原因をしっかりと調査して教師集団として共有しなくてはならないのです。
たとえば,入試制度が変わって,その学年は少し低いレベルだとかならわかります。
あるいは,1年生の進路説明会で,この学年は国公立よりも私立大学の魅力を語りすぎてしまい,学年担当も私立出身の先生が多く,国公立志向の生徒が激減してしまったのかもしれません。
そういう分析をちゃんとやって,あとは学校の方向性,保護者の期待などを考えて,国公立大合格者を増やす必要があるのなら,何か学習圧力を高くするなど,テコ入れしないとダメなのです。
大学合格者が高いレベルで安定している学校は,このような分析を模試ごとにきっちりやって,その都度テコ入れ,修正を加えて,結果を出しているわけです。
年ごとにバラツキのある学校は,各学年まかせであって,できそこないの学年主任とか,指導力のない進路指導部のせいで,年度によっては結果がガクんと落ちる場合があるのです。
模試の結果は,あくまで集団の可能性,統計的に見るのが重要。
そして,それができている学校,教師集団というのは,めったにないのだという点を指摘したかったのです。
ブログ読者の多くの高校教員の皆さま。
今回も,たいへん耳の痛いお話でしたね。
学校での指導に生かして欲しいから書いているので,ぜひ努力してください。
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どこかの高校で,俺にコンサル料金払ってくれないかな。
今回書いた内容だけでもン十万円の価値あると思うのだが。