[2010年12月21日]
政府が「科学研究費補助金(科研費)」の一部について、翌年度への繰り越しが自由にできる制度改正を行う方針を決めたというニュース。
科研費は日本の学術研究の基盤を支える重要なお金だ。
およそまともな大学の研究はこのお金なくしては成り立たない。
というより,科研費をもらえないような大学や研究室はまともな研究をしていないと言ってもいいくらいだ。
総額は2000億円に及ぶ科研費。
700以上ある大学の先生が自分の研究の価値を書類に書いて,それが認められたらお金が支給されるというもの。
共同研究などもあるが,主たる研究者の所属で配分を見ると,そのお金の約50%が上位7大学で占められているのだ。
東大と京大で20%,あとは旧帝大の北大,東北大,名大,阪大,九大。なんやかんや言って,旧帝大が学術研究では圧倒的に優れている証拠だ。続くのは東工大,筑波大,広島大,神戸大,岡山大,千葉大などまずまずの国立大ばかり。私立で上位に食い込んでいるのは慶応の11位とか早稲田の20位とかくらいだ。
しかも,である。慶応や早稲田の学生の数はたとえば同じくらい科研費をもらっている神戸大など国公立大の何倍もいる。なので,学生一人あたりに使える研究費の額から考えると,慶応や早稲田の値打ちは地方の国立大(いわゆる駅弁大)と変わらない。
いわんや関関同立をや。
で,冒頭のニュースだが,科研費にはお金を使う期間が決まっている。なので,期間の終了時期になると使い切らないともったいないので,全く無駄とはいえないまでも次年度にまわせばもっと有効に使えるであろうお金を無理に使ってきた経緯があったわけだ。それをなくしてより有効にお金を使えるようにするのだから,これは予算の増額とおなじ効果がある。
事業仕分けのように予算カットありきのような政策ばかりでは,科学研究のように大切な部分をないがしろにしかねない。今回の方針は,同じ予算でも増額の効果のあるアイデアであるからすばらしい。このようにもっと頭を使えばどんどん有効にお金も人もまわせると思う。
ちなみに,大学の研究だけでなく,一般人の研究でも値打があれば科研費は支給される。
私が高校の教員をしながら変成岩の研究をしていたとき,30万円の科研費に応募して当たったことがある。そのお金は年度内にしっかり使い切りました。はい。
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