パソコン版を見る

尾崎塾
富田教室

[2011年2月10日]

質問するのはよいことなのか

昨日の授業で演習をさせるとき,

「○○の公式は知ってるか?」

と生徒に聞くと,

「はい」と頷いた。

で,問題を解かせると全然できない。
全く忘れているのだ。

学校の授業中でも生徒に「わかったか?」と質問すると「はい」と答える確率が99%だ。なのにほとんどの場合,わかってはいないのである。

ではなぜ「わかっていない」のに「わかった」と答えるのか。


白鵬がビミョーな発言をしてTVで放送されていた。

八百長を見聞きしたことがあるかないかを問われて,

「ないとしか言えないじゃないですか」と答えてしまった。

正直に答えてしまったのかもしれない。

でも,日本語でそのように答えたら「実際は見聞きしたことがあるけれども」という意味が付け加わる。横綱が八百長を見聞きしたことがあるとなれば大問題に発展しかねない。

前にも書いたが,大相撲はそういうもの。表向きは八百長はないことになっているので「八百長はない」としか答えられないのだ。


授業中に「わかったか?」と質問された生徒は「わかったとしか答えられないじゃないですか」ということなのだ。もしわからないと答えたら大問題に発展しかねない。先生が説明したことがわからないというと,先生の説明の仕方が悪かったということになる(力量のない教師ほどそのように受け取る)。なので,わからないと答えると急に先生の機嫌が悪くなり,下手すると内申書に響くかもしれないのである。怖くてわからないなんて言えない。

もう1つのパターン。はじめの例のように生徒自身はわかったつもり,知っているつもりの場合がある。だが,本当のところはわかっていない。あるいは覚えているつもりでも忘れてしまっていることは多い。

結局,授業で先生がする質問なんて「お約束」以外何モノでもなく,わかったかどうか,知っているかどうかは試験をしてみないとわからないのである。

なので,私は授業で生徒にほとんど質問しない。やらせてみて判断・分析するようにしている。


さて,ここから本題。(長くなるが読む価値あり!)

生徒が先生に質問するのはよいことなのか。


入塾の時に保護者の方からされて困る質問に,

「宿題は出ますか」があると前に書いた。

もう1つ。

演習中心の授業だと説明すると「で,わからないところは先生に質問できるんですね?」と聞いてくる。

保護者の方としては,わからない点を質問できるというのが安心なようなので,気持ちはわかる。しかし,質問できるから良い塾というのでは決してないということに気づいていただかないとダメだ。

大人数の集団指導の塾だと,確かに質問はしにくい。自分の質問によって授業がストップしてしまうからだ。そうまでして聞いてよい内容かどうか判断できないだろう。学校の授業もそうだ。集団指導で質問できる人間は非常に優秀なのだ。あるいは空気の読めない相当に自己中心的な人間でないと質問できない。

それで個別指導の塾が流行るわけだ。
でも,個別の塾の講師のほとんどは大学生。
質のいい大学生も中にはいるだろうが,めったにいないだろう。
質問できたとしても,それに的確に答えてもらえる可能性はきわめて低いのである。

たいていは質問されたらその質問に答えてしまうのだ。
えっ?質問に答えるのでないの?と思った方。よく考えて欲しい。
たいていはこんな質問だ。
「○○の答がわかりません」
「○○の解き方がわかりません」
なので,答を教えたり解き方を教える。
まあ,それは教えてよいのだが,それでおしまいになるのがアマチュアの講師たちなのだ。

何をしなければならないかがわかっていないのである。
すなわち,その答がわからない原因が「覚えていない」ことであれば覚えるドリルをさせるとか,解き方を教えたら類題を与えるとかしないと次に同様の問題に出合ったときにできるようにならないのだ。何が原因で間違えたかを見抜き,次の手を打つことが必要なのである。

で,ウチの塾で質問してもらった場合はもちろん大丈夫なのだが,質問することが必要かどうかは全く疑わしいのである。

質問しなくても答が間違っていたら覚えていなかったということが明白だったり,解き方がわかっていないとかも明白なのだ。だからわかりません,できませんとわざわざ言ってもらう必要はないのである。ただ,普段の解き方や答案を見ても情報量が足りないときはこちらから質問することはある。

逆に,わかってるつもりの場合に生徒は質問しない。質問しないからといって教師が進めていくとどこかで「あれっ?」ということになる。

できていることでも定着するまでは繰り返しやるとか,さらに理解を深める教材をやるとかして足腰を強くしてから次に行くとかのさじ加減も必要になってくる。

このようなやり方なので,保護者の方が抱いている「個別塾はわからないところを質問して答えてもらえる親切なところ」というイメージではウチの塾は理解していただけない。そんな低次元の指導はしていないから。


にほんブログ村 受験ブログ 受験塾・進学塾へ
にほんブログ村