[2011年3月19日]
まさに理科教育・数学教育の問題点が露呈している。
正しく確率的にリスク・物事を考えられない人が多すぎるのだ。
特に,マスコミ・報道関係の人間は勉強もせずに報道するのでさらに誤った認識を世の中にまき散らす。こういうのは放射性物質をまき散らすのと同罪だと思っていい。
放射線の線量当量(単位シーベルト)の意味を通常は知らなくて当然かもしれないが,取材や報道するときはしっかり勉強しろと言いたい。
要するに,たとえば癌になるリスクは確率論なのだ。
放射線を浴びると発癌率が高くなる。
クジ引きみたいなもの。
普通の人は1年に1回クジをひきます。
1000人に1人が当選して癌になります。(癌になったからといって死ぬとは限らない点もおさえておきたい。)
毎年クジを引くので,50年くらいすると50人くらいは癌になるのだ。
ここで,あなただけ1年に2回クジを引けと言われたらどうですか?
誰だって嫌でしょう。
今回の放射線の説明を政府や学者がする時に,こんな言い方をする。
「この線量は自然界で発生しているのと同じ程度ですから何ら影響はないと考えて下さい。」
いや,ちょっと待て!自然界と同じということは,さっきのクジ引きと同じで2倍のリスクになるのでは?
そういう心配があるので,上記のように一般人をごまかそうという説明は全くダメなのである。それを指摘できないマスコミの能力の低さと理解できない国民によって,正しい認識とは大きくずれた方向へ進んでいく。
では相当に危険なのか?
私が言いたいのは,それほど危険ではないということ。
変にごまかした発表や報道をするからかえって心配する人間を増やしている気がする。
報道でよくすっとばされるのが単位。
今の測定値は線源から1km離れたところで,パーアワー(per hour)つまり1時間あたり。
1時間あたりなので,1日ではその24倍浴びることになる。
さらに1年だとその365倍浴びることになる。
さきほどの自然界の線量と同程度というのは,単位を無視して比較しているので非常に危険。
1時間あたりの値と1年間あたりの値は24×365倍 大雑把に10000倍近く違う。1万倍も危険ということ。
やっぱり危険やん?
いいえ,距離の効果を考えないと正しく論じられない。
線量は距離の2乗に反比例するので20km離れたら400分の1になる。つまり1年分積算する365倍がほぼ相殺される距離が避難指示20kmだと考えればわかりやすい。
結局,20km離れていれば自然界の危険性より約20倍増していることになる。
いやいや,20倍は大きいでしょ?
いやいや,この状態が一生涯続けばそうですが,仮にあと20年で寿命だとすれば,この1年というのはその20分の1の期間でしかない。なので,単純に一生涯(余命)に自然界から受けるリスクが2倍になる程度。
いや,2倍ははじめに嫌だと思った倍率で・・・
そう,しかしこの線量が1年間続くとは思えない。仮に1か月で終息すればリスクは12分の1で収まる。
さらに,その値は爆発直後にそこまで達したという最大値に近いと思われる。いわばピーク時の値であって,いつもその値が出ているわけではない。通常はその何十分の1かで推移している。
なので,20km圏外ならほぼ全く問題なく,10km圏でもほぼ問題なく,1kmだとちょっと注意しながら作業している人が大勢いるということ。
本当にリスクが高ければ,死を覚悟で東電の人に仕事させられない。許容できる程度にしかリスクが増えないから仕事させているのである。ちなみに宇宙飛行士の方がずっと被ばくリスクが高い。
非常に長文になってしまったが,ちゃんと考えるのはこれくらい手間がかかる。
別の観点も指摘しておきたい。
放射線は線源からの距離がモノを言う。
しかし,飛散する放射性物質は風向きによって影響する範囲が変わってくる。なので,一概に半径何kmだと危険とかは言えない。
こちらの方は,水蒸気の放出や爆発があったときに風下の方向に緊急に警告をして屋内退避させるべきだろう。
今は何でもかんでも屋内退避で,生活が不便で仕方ないだろう。
必要なときに必要な防護策をとることが大切である。
特に日本人は放射線に対してあらぬ誤解やアレルギーがある。
今回,自然界から受ける線量の2倍を受けることになったとしても,その発がん率の増加はたばこの喫煙に比べると無視できる程度といえよう。ソースは確かではないが,何かの研究の値で自然放射線による発がんリスクの何千倍だとか。
この研究が本当なら「喫煙者は避難する意味がない」ともいえるくらいなのだ。
今回書いたようなことを理解するには,国民の方に理科で単位について,数学で確率についての基礎勉強が必要。現状の理数嫌いの多さは教育の敗北と言ってもいい。災害は天災とか人災とか言うが,私は教育の欠陥によってもたらされる教育災という範疇もあると考えている。防災教育+理数教育の充実。これが今後の課題である。
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